焼酎の割り水とは?
求められるのは、質はもちろん、量も豊富なこと
酒造りをするのに、水の質はとっても重要。
江戸時代から、主に清酒業界で、「銘酒は良い水から生まれる」といわれ、その代表として灘の宮水などが有名ですよね。
焼酎造りも同様です。
焼酎は製造において蒸留工程があるので、そもそも水の使用量が膨大。
アルコール濃度25%焼酎を造るのに、その蒸留工程において得られる量の約10倍以上が必要といわれています。
水質が良いのはもちろんのこと、量も豊富でなければならないのです。
九州の天然水
焼酎酒造場が多い九州エリアは天然水が豊富。
というより、天然水が豊富だったからこそ、焼酎酒造場が多いとも言えます。
九州エリアでは、 その質が良くて、量も豊富な天然水を原材料にして、焼酎は造られています。
天然水とは、伏流水や地下水、湧き水、温泉水のこと。
有名なところでは、宮崎県都城市の霧島裂罅水(きりしまれっかすい)や、鹿児島種子島の岳之田湧水(たきのたゆうすい)などがあります。
以前、「焼酎の飲み方が多様な理由」で鹿児島県の土壌について70%はシラスに覆われている、と紹介しました。
実はこのシラス、稲作には不向きでしたが、おいしい水を作り出す力があるのです。
ろ過作用があり、雨水を浄化し、わずかですがそのイオン交換能力により、弱アルカリ性を示す水を生み出すのでした。
鹿児島県には、焼酎を生み出す力が、多岐にわたって備わっているのですね。
水は何に使用されるのか
水は、焼酎造りで何に使用されているかと言いますと、以下の工程です。
・原材料の洗浄
・麹作り用の原材料の洗浄、浸漬
・仕込み(醪醪(もろみ)作り)
・ボイラー用水
・蒸留の冷却水
・瓶の洗浄
・タンクの洗浄
・割り水
です。多くの工程に登場。それくらい水は重要なのです。
いくつか抜粋して、説明します。
・麹作り用の原材料の洗浄、浸漬について
麹作り用の原材料を浸漬すると、原材料に含まれる成分は、水分によって溶出すると思われるかもしれません。
しかし、時間が経つと溶出された一部の成分は、原材料へ戻っていき、吸収されます。
その際、水を伴って吸収されるので、麹造りの良し悪しには、水の品質は重要。
・仕込み(醪(もろみ)作り) について
一次仕込みでは、水と麹と酵母を混ぜ合わせて一次醪(もろみ)を造ります。
二次仕込みでは、芋や麦などの主原材料を一次醪と合わせて、二次醪(もろみ)を造る時に水を使用。
この工程では水は、完全に原材料となります。
一方で、酵母の発酵を促進または阻害したり、さらには製品の品質へ影響を及ぼすこともあります。
・ボイラー用水について
蒸溜の時に、醪(もろみ)を加熱する際のボイラー用水です。
ボイラー用水は蒸気となって運ばれ、醪(もろみ)と触れて焼酎とともに気化し、原酒へと移行します。
ボイラー用水は一旦、気化しますが、冷却され、原酒の骨格となるわけです。
・割り水について
そして割り水になります。
ここは重要なので、詳しく説明します。
割り水とは、原酒を 「水で割る」こと
焼酎のアルコール濃度は25%前後であることが多いです。
宮崎県は20%、球磨地方は30%だったりしますが。
ただ、ここで注目は、蒸溜直後の「原酒」のアルコール濃度が25%ではない、ということ。
蒸溜直後は40%くらいなんです。
その濃い40%の「原酒」を、瓶詰前に「水で割る」のです。
アルコール濃度40%から、25%まで薄めるのです。
ご存知でしたか?
私たちが、焼酎を自前で割る前にすでに、「水割り」されていたのです!
いろいろ理由はあります。
米の「とぎ汁」に例えます。
最初は白く濃厚な「白」い「とぎ汁」ですが、とぐ回数をふやせばだんだん薄くなる。
「白」から透明に薄くなっていきますよね。
同様に、蒸溜直後の原酒は濃い。
その後、だんだん薄くなる。
そして、長い時間、蒸留すれば、原酒のアルコール濃度は低く(薄く)なるわけです。
ただ、これには大きな品質上の問題があります。
アルコールが薄くなった後も、長時間にわたって蒸留は続きますから、原材料に含まれている雑味も、水分に溶出して気化してしまうのです。
すると、品質が悪くなる原因になるのです。
ですので、アルコール濃度25%に薄まるのを待たずに、さっさと蒸溜を切り上げてしまう。
その良い按配が、アルコール濃度40%だということです。
ならば、アルコール濃度を高くした場合はどうでしょうか。
アルコール濃度50%くらい。
ここは、すごくビミョーな問題。
以前、「焼酎の味わいの正体とは」で紹介した通り、焼酎は「味わう」のではなく、「香り」を楽しむもの、でした。
成分は99%がエチルアルコールと水分ですが、「香り」は1%以下の割合で存在します。
アルコール濃度50%の場合ももちろん、「香り」成分はあります。
しかし、アルコール濃度が高い分、その割合は少なくなってしまいます。
「香り」成分活躍の幅が狭くなり、「香り」の弱いものになってしまうのです。
「香り」成分が感じられる、良い按配がアルコール濃度40%だということです。
焼酎の素晴らしさを世界に伝えたい!
ここでいつもの(?)他の蒸留酒との比較です。
コニャックやウイスキーは、原酒を70%で仕上げます。
「無味無臭」に近い状態。
理由は、蒸留後の原酒に「香り」を期待せず、その後の長期貯蔵熟成によって樽材の「香り」をつけるので、「香り」成分活躍の幅が狭くてもオッケー、なのでした。
焼酎がアルコール濃度40%前後で仕上げるというのは、原料由来の「香り」を感じられるという、他の蒸留酒との「差別化ポイント」でもあるのでした。
ここ重要です。
他の蒸留酒は、「香り」成分が1%以下しかないないのを自明のこととして受け入れ、樽の「香り」要素で補完します。
翻って多くの焼酎は、その1%以下に拳を固めて、勝負をかけているのです!
また、他の蒸留酒の割り水は、蒸留水を使用します。
それは、いろいろな理由がありますが、結果として、割り水の水は、アルコール濃度を薄める「機能」に過ぎなくなります。
一方、焼酎の割り水は天然水。
つまり、焼酎において、割り水の水は、アルコール濃度を薄める「機能」プラス、原材料の一員としての参加が求めてられているのでした。
焼酎の素晴らしさを世界に伝えたい!
最後に
以前紹介した、「大自然林」も屋久島の天然水を使用しています。
屋久島の水は、硬度10以下のスーパー軟水。
濃厚に、屋久島の天然水を感じることができます。
水の表現は「香り」では難しいですが、この天然水は「触感」を感じます。
それは、口に含んだ際に、頬を膨らませるようなアタックとして。
焼酎は、天然水を原材料にして、それを飲むときに感じることができる、貴重な蒸留酒なのでした。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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