【焼酎の歴史】ホワイト革命とは?
かつて、アメリカのお酒の消費動向が、日本にも波及したことがあります。
その影響を受けたのは焼酎。焼酎の消費量を劇的に増加させたのです。
今回は、そんなアメリカから波及した、焼酎の歴史をご紹介します。
白色革命(ホワイト・レボリューション)とは?
焼酎は戦後の混乱期に、「バクダン、カストリ」と呼ばれた粗悪な商品が出まわったために、暗いイメージを感じさせる時期がありました。
しかし、アメリカ発の「白色革命(ホワイト・レボリューション)」というお酒の消費動向の波が、それを払拭させることになります。
アメリカの国民的に人気のあるお酒といえば、バーボン・ウイスキー。
アメリカ合衆国ケンタッキー州を中心に、生産されているウイスキーの一種。
主な原料はトウモロコシ・ライ麦・小麦・大麦などで、「ジャック・ダニエル」「I・W・ハーパー」などは日本でも大変な人気銘柄です。
しかし、お酒の種類別シェアトップだったバーボン・ウイスキーが、そのシェアを奪われることになる事件が起こります。
これを白色革命(ホワイト・レボーリューション)と呼びます。
そのシェアを奪ったのは、ウォッカ。
バーボン・ウイスキーが、その琥珀色の容姿から”ブラウン・スピリッツ”であるのに対し、ウォッカは”ホワイト・スピリッツ”であるため、そのように呼ばれました。
1974年(昭和49年)にウォッカが、バーボン・ウイスキーを抜いてトップに。
バーボン・ウイスキーは、40%のシェアを失ったそうです。
それは、イギリスにも広がり始めます。
スコッチ・ウイスキーのシェアは51%を誇っていましたが、1978年(昭和53年)から7年の間に、ウォッカのシェアが5%から12%まで伸長したのです。
1981年(昭和56年)になると、アメリカのお酒のシェア率トップ上位には、ウォツカのみならず、白色ラムなども躍り出ます。
イギリスのジン、北欧のアクアビット、ドイツのスタインベーカー、メキシコのテキーラ、中国のマオタイなどのホワイト・スピリッツが、アメリカを席巻しました。
ホワイト・スピリッツが支持された理由
ホワイト・スピリッツが支持されたのは、
・味にクセがない
・割ればアルコール度数を自由に調節できる
・コスパが良い
という理由から。
ウオッカが代表するホワイト・スピリッツは、無臭で無色透明なので、飲み方が多様。
ストレートはもちろん、ジュースで割ったり、カクテルにして味わうなど、さまざまな楽しみ方ができます。
これがアメリカの若者や女性にウケにウケたのです。
ホワイト・スピリッツが提案するのは、自分の好みで酒の味を変えることができる、ウイスキーなどにはない新しいお酒の飲み方。
純粋志向、個性化志向が強くなり始めた新しい世代が、「ドライで、変化を楽しめる酒」として偏見なく受け入れ、支持したのです。
ちなみにですが、カクテル作りの派手なパフォーマンスで人気になった、トム・クルーズ主演の映画「カクテル」が封切られたのは、1988年のことでした。
日本への波及
これらのウォツカが代表するホワイト・スピリッツを、日本市場でも応用できないものかと考えるのは、酒類メーカーの担当なら当然の事です。
アメリカでは、ウォッカというロシア発祥といわれるお酒を”輸入”しましたが(実際はアメリカで生産したものでした)、日本には大正時代より連綿と続く、新式焼酎と呼ばれその後、甲類と呼ばれた焼酎があるのです。
そんな中、1977年(昭和52年)に、宝酒造が「純」を発売。
その後、他メーカーも追随します。
当時はすでにマスメディアも発達していたので、全国的な広告宣伝の効果もあり、爆発的な人気を博します。
白色革命の名にあやかって、甲類焼酎は「ホワイトリカー」と呼ばれるようになります。
今では甲類焼酎の呼称は、「ホワイトリカー」に変更されましたが、この時が最初だったのです。
ターゲットが、ライト感覚でファッショナブルに楽しむ若者や女性だったので、甲類焼酎よりもウケそうだと考えたのでしょう。
なんとなくわかる気がします。
マイルドでピュアな新しい甲類焼酎を次々に発表し、従来は焼酎と縁のなかった若者や、女性の幅広い支持を獲得。
甲類焼酎は、ライト感覚でファッショナブルに楽しむための酒として、若者たちのライフスタイルのなかに溶け込んだのです。
日本においても、「ドライで、変化を楽しめる酒」として甲類焼酎が受け入れられたのでした。
甲類焼酎の特徴
どのメーカーも、
・無色で香りがうすい
・ミックスドリンクが作りやすい
・味わいがソフトで若者や女性向き
・飲む人の好みに合わせた度数や味に調節できる
・価格が経済的
・ネーミングか個性的
・ボトルか個性的
が特徴。
特に、最後のネーミングとボトルは注目です。
ネーミングは、英語や、英語と日本語を掛け合わした造語を多用。
ボトルについては、一升瓶に代表される無骨なそれまでの甲類焼酎のボトルを一新。
洋酒と見間違うような、おしゃれなものに取って代わったのでした。
そのほかにも、甲類焼酎の定着には、保存性もすぐれており、口中の清涼感や醉いざめの爽快感が今までのお酒とは違う、とした意見もありました。
今でも人気の甲類焼酎
そんな1970年後半から人気を博した甲類焼酎ですが、今でも販売されていますので、ご紹介します。
純(じゅん)
日本版「白色革命(ホワイト・レボリューション)」焼酎ブームの火つけ役。
1977年発売。焼酎造りにかける同社の情熱が結晶したヒット銘柄。
今でもコンビニでも売られているのは、商品力の賜物。
主な原料には二条大麦を使用。
丹念な蒸留、ホワイトオーク樽による貯蔵、徹底した不純物チェックと高いブレンド技術によって完成。
無色透明、シャープな味わいが身上。
ザ・ワリッカ
「白色革命」のパイオニア的役割をになったニュー感覚焼酎の代表格。
発売当初は「ワリッカS&L」と呼ばれ、ペルシャ湾沿岸のなつめやし(デーツ)の実を主な原料とした甲類焼酎。
今では、北海道大雪山系を望む、旭川の清冽な水で作る地域限定商品です。
フルーティでまろやかな味が特徴。
トライアングル
発売された当時のキャッチフレーズは「焼酎貴族、登場」。
新しい甲類焼酎の登場に期待を膨らませたファンも多いハズ。
ホワイト・リカー・ブームの中でも、このトライアングルのボトルが最も新鮮。
今でもその名残があります。
主な原料は、とうもろこしと大麦。爽快かつ透明感のある味わいが特徴。
まとめ
いかがでしたか。
白色革命(ホワイト・レボリューション)が、「ドライで、変化を楽しめる酒」として、甲類焼酎のイメージを払拭したのでした。
今日は、甲類焼酎のカクテルで乾杯してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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