焼酎に使われるサツマイモの正体
芋焼酎の原料に使われるサツマイモ。食用でも馴染みのある農産物です。
焼酎用と食用のサツマイモの品種は同じなの?何が違うの?
ここでは、そんな疑問にお答えしながら、焼酎に使われるサツマイモの正体を探っていきます。
目次
芋の種類の紹介
焼酎醸造用サツマイモ
一般的に、焼酎醸造用サツマイモには、収量が多くデンプンが豊富な品種が適しています。
もっとも、近年は“香り系焼酎”など新タイプの焼酎づくりに挑戦する焼酎メーカーも増え、安納芋など食用サツマイモを使用した焼酎も登場しています。
コガネセンガン
焼酎用サツマイモの代表格がコガネセンガンです。漢字では「黄金千貫」と書きます。
「黄金色の肌」をもつ芋を「反収で千貫 (3.75t)」(=大量に)収穫できるようにという願いを込めて命名されたそうです。
果皮と果肉は黄白色。適度な糖度と豊富なデンプンを含み、収穫量が多いことが特徴です。
バランスのとれた芋焼酎ができやすく、最もポピュラーな品種といえるでしょう。
ジョイホワイト
ジョイホワイトは、その名のとおり果皮も果肉も白色の、紡錘形の品種です。
頭尾部がわずかに赤色を帯びています。
コガネセンガンと同様、収穫量が高くデンプンが豊富なので、焼酎の原料として重宝されています。
コガネセンガンよりもやや貯蔵性が優れているというメリットもあります。
フルーティな香りで癖のない、淡麗で飲みやすいタイプの焼酎づくりに適しています。
写真はジョイホワイトを使用した「ひとり歩き」(古澤醸造)
シロユタカ
シロユタカは、「豊かな収穫を呼ぶ白いイモ」という名前の由来どおり、収穫量の豊富な品種です。
鹿児島県ではコガネセンガンに比較して標準栽培で20%、早堀栽培で10%の収量を誇ります。
元々はでんぷん原料用に開発された品種です。
すっきりとした爽やかな味わいの芋焼酎を作るのに向いています。
写真はシロユタカを使用した、烏天狗 しゅわしゅわ(さつま無双)
げんち
げんちは、戦前・戦後に鹿児島県でよく栽培されていた品種です。
収穫量が少なく、水分量が多いため加工に適さないため、今ではほとんど見かけない「幻の品種」となっています。
自家栽培のげんちを使い、昔ながらの甕仕込みで丹念に仕込んだオガタマ酒造の「さつまげんち」は、一度飲んでみる価値がありそうです。
写真はげんちを使用した、「げんち」(オガタマ酒造)
ハマコマチ
ハマコマチは、果皮は淡い赤色、果肉は橙色の、短い紡錘形の品種です。
カロテンを多量に含みます。
ハマコマチを使うと、かぼちゃやニンジンのような甘さとトロピカルフルーツや紅茶のような香りが共存した特徴的な芋焼酎を作ることができます。
大口酒造の女性社員チームが開発に携わって商品化された「伊佐小町」にも、ハマコマチが使われています。
写真はハマコマチを使用した、「伊佐小町」(大口酒造)
新品種
病気や気候の変化に強い品種、新たな味わいの焼酎を生む品種を目指して、日々、品種改良と新品種の開発が続いています。
最近では、薩摩酒造がソーダ割りに適した焼酎「MUGEN白波 The Tropical Wave」に、独自開発したサツマイモ「サツマアカネ」を使用しました。
また、霧島酒造が、宮崎県限定で発売した「SUZUKIRISHIMA」に九州沖縄農業研究センターと同社が共同開発したサツマイモ「スズコガネ」を使用した例もあります。
食用サツマイモ
食用サツマイモの品種もいくつかご紹介しましょう。
日頃スーパーや八百屋で見かけるサツマイモは凡そ食用のサツマイモと思いきや、実はコガネセンガンも食用に流通しています。
食用サツマイモの中には、品種改良によって甘みを増したものや食感の良いものがあります。
ベニハヤト
ベニハヤトは、カロテンやビタミンを多量に含んでいます。
ねっとりした食感の、美味しいサツマイモです。
橙色の果肉が美しく、菓子の加工用に使われる品種としても人気が高まっています。
べニアヅマ
べニアヅマは、茨城県や千葉県を中心に栽培されている食用の品種です。関東で人気があります。
「焼き芋」と聞いて多くの人がイメージするサツマイモは、紫がかった濃い赤色の果皮と黄色い果肉のべニアヅマかもしれません。
粉質で繊維質が少なく、ホクホクした食感と程よい甘さが特徴です。
焼酎用サツマイモ「コガネセンガン」が改良されたのは昭和41年
かつては食用とでんぷん用
サツマイモは、中国から沖縄を経由して、江戸時代初期に鹿児島に伝来しました。
台風や干ばつなどの自然災害に強く、栄養バランスも優れているため、食べ物が乏しい時代にも重宝されました。
昭和初期からは、全国規模で品種改良や育種が行われたそうです。
焼酎の原料としてメジャーな品種コガネセンガンは、昭和41年、戦後のでん粉産業の発展を背景に開発された改良品種です。
でん粉含有量が高く、大量に収穫できることを目指したコガネセンガンは、当初はでん粉原料用品種として開発されたものだったのですね。
昭和60年代には、コガネセンガンで作った焼酎の風味や甘味が評価され,芋焼酎のブランド化に最適な品種と目されるようになりました。これを機に、平成以降,芋焼酎の香味に関する研究が進められ,焼酎原料用の品種開発が盛んになりました。
芋焼酎は甘くない?
芋焼酎に使われるサツマイモの多くは、食用としても食べることができます。
改良された食用品種ほどではありませんが、ほどよい甘さも味わえます。
しかし、アルコールと香味成分を抽出する「蒸留」の工程で、甘さのもととなる糖分が除かれてしまうのです。よって、焼酎になると甘い味わいは消えてしまいます。
ただし、ふんわりとした甘い香りは抽出されて残ります。
芋焼酎を飲むと「甘い」と感じられるかもしれませんが、味覚ではなく嗅覚でこれを感じているのです。
芋焼酎を飲むときには、芋焼酎の香りをじっくりと堪能してみてください。
復刻サツマイモ
蔓無源氏
蔓無源氏(ツルナシゲンヂ)は、鹿児島県霧島市の国分酒造と農家の谷山秀時さんが現代に蘇らせた復刻サツマイモです。
この品種は、改良が盛んになる以前、大正時代に食されていたサツマイモのひとつでした。
品種保存用に県の農業試験場に保管されていた苗から、谷山さんらが10株だをけ譲り受け、手間ひまかけて栽培に成功した貴重なサツマイモです。
安田
「安田」は、国分酒造が蔓無源氏で仕込んだ芋焼酎です。
芋焼酎の原材料には「米麹」を使うのが主流ですが、「安田」の麹には蔓無源氏から作った「いも麹」を使っています。まさに蔓無源氏100%の芋焼酎です。
また、芋を2~3週間程度熟成させて仕込むことで、芋焼酎独特の果実香・柑橘香につながる「モノテルペンアルコール」という成分が増すのだそうです。
ライチを思わせるフルーティーな香り、透き通るような口当たりを、ロックや冷やしたストレート、あるいは贅沢にソーダ割りで味わってみてはいかがでしょうか。
まとめ
一口にサツマイモといっても、焼酎用と食用それぞれに、特徴ある品種がありますね。原料のサツマイモに注目して芋焼酎を選ぶと、楽しみ方の幅が広がるかもしれません。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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