焼酎と日本酒の違いは? 日本酒蔵が焼酎を製造している?!
焼酎と日本酒は、日本発祥のお酒。
それぞれ海外での評価も年々高まっています。
そこで今回は、日本酒と焼酎の違いと原料や製造方法の特徴、そして意外な共通点をご紹介します。
目次
焼酎は「蒸留酒」、日本酒は「醸造酒」
焼酎と日本酒の大きな違いは、焼酎は「蒸留酒」、日本酒は「醸造酒」という点にあります。
醸造酒は、果物や穀物をアルコール発酵させてお酒を造ります。
ブドウを発酵させて造るワインや、麦芽を発酵させて造るビールが、醸造酒の仲間ですね。日本酒は、原料である米を発酵させて造った醪(もろみ)を搾った醸造酒です。
一方、蒸留酒は、醸造酒を蒸留してできるお酒。
焼酎は、原料を発酵させて醪を造るところまでは日本酒と同様ですが、その後、蒸留によってアルコールと香り成分を抽出するところに、日本酒との大きな違いがあります。
焼酎と日本酒の接点
「粕取り焼酎」「醪取り焼酎」の違いとは
「粕(かす)取り焼酎」は、日本酒の副産物である酒粕に残っているアルコールを抽出して造る焼酎です。
今日の焼酎の蒸留方法とは異なり、酒粕に籾殻(もみがら)を混ぜ、丸めてせいろで蒸すという特殊な方法で蒸留。
粕取り焼酎造りは、江戸時代から、日本酒造りが盛んな地域で、日本酒造りの副業として造られていたそうです。
一方、「醪(もろみ)取り焼酎」は、麹・水・酵母を混ぜて発酵させた「一次醪」に、主原料である芋、麦、米などを加えて「二次醪」を造り、これを蒸留してアルコールを抽出した焼酎です。
今日の一般的な焼酎は、ほとんどがこの製法で造られた焼酎です。
日本酒の蔵が焼酎を販売
最近では、独自の新製法で「吟醸粕取り焼酎」を製造・販売する日本酒蔵も増えてきました。
「吟醸粕取り焼酎」は、昔造られていた「粕取り焼酎」よりむしろ「醪取り焼酎」に近い製法で造られているものが多いようです。
獺祭
「獺祭 焼酎」(アルコール度数39%)
日本酒「獺祭」で有名な旭酒造が、「獺祭」の酒粕を蒸留して造った酒粕焼酎です。
アルコール度数は39%と、一般的な焼酎よりもやや高め。この度数にした理由は、「獺祭のきれいな香りが一番良い状態で高く引き出されるから」だそうです。
十四代
「十四代 秘蔵純米焼酎」(アルコール度数25%)
人気の日本酒「十四代」を醸す高木酒造も、焼酎を製造しています。
「十四代 秘蔵純米焼酎」は、米本来の旨味とスッキリとした呑み口、フルーティーな味わいが特徴の米焼酎。
ネット上では6,000円超(720ml)の値が付いており、高級焼酎の類に属すると言ってよいでしょう。
十四代を搾った後の酒粕と米を原料に、単式蒸留で蒸留した米焼酎「十四代 秘蔵 乙焼酎」(同25%)も、希少価値の高い人気銘柄です。
よろしく千萬あるべし
「八海山本格米焼酎 黄麹三段仕込 よろしく千萬あるべし」(アルコール度数25%)
こちらは、日本酒「八海山」で知られる八海醸造が造る米焼酎です。清酒酵母と黄麹を使用し、三段仕込で醪(もろみ)を造るなど、日本酒蔵ならではの技術で丁寧に造られています。また、発酵途中に酒粕を加えることで、吟醸酒のような品格ある香りを放つ焼酎に仕上がっています。
八海醸造は、酒粕を減圧蒸留した粕取り焼酎「宜有千萬」(アルコール度数40%)も造っています。こちらは、3年以上貯蔵した、円熟したまろやかさのある焼酎です。
焼酎と日本酒の違い
焼酎と日本酒の麹の違い
焼酎の麹には日本酒と同じ黄麹が使われていた
今日の焼酎に使われている麹の多くは、黒麹かその変異株として広まった白麹です。
しかし明治末期までは、焼酎も日本酒と同じ黄麹で造られていました。
ところがこの黄麹、温度に弱いという弱点がありました。
焼酎造りが盛んな南九州は、とても温暖な土地です。
黄麹を使って仕込んだ焼酎の醪(もろみ)は、腐敗のリスクと常に隣り合わせでした。
琉球から伝来した黒麹
その頃、琉球では黒麹を使った泡盛が造られていました。
南九州よりも温暖な琉球で盛んに利用されているこの「黒麹」に注目したのが、鹿児島税務監督局技師だった河内源一郎と、鹿児島県工業試験所技師だった神戸健輔です。
彼らが黒麹菌の研究を重ね、これを使った焼酎造りを普及させたことで、南九州の焼酎造りが格段にレベルアップしました。
焼酎と日本酒の製造方法の違い
仕込み
「仕込み」とは、簡単に言うと原料を発酵させて醪(もろみ)を造る工程。
日本酒の仕込みではまず、麹、蒸米、仕込み水をタンクで混ぜ合わせ、酵母を入れて「酒母」を造ります。酒母にさらに麹、蒸米、仕込み水を加えて発酵を促し、醪を造ります。
日本酒の仕込みは通常、醪をじっくり発酵させる「三段仕込み」で行われます。
一方、焼酎の仕込みは、「一次仕込み」と「二次仕込み」の2段階。
一次仕込みでは、麹、仕込み水、酵母を混ぜ合わせ、5~6日間かけて発酵させると、「一次醪」ができます。
「二次仕込み」では、一次醪に仕込み水と主原料(芋焼酎なら蒸し芋、米焼酎なら蒸し米)を加え、1~2週間かけてさらに発酵を進めます。こうして、「二次醪」が完成。
発酵
焼酎と日本酒のいずれも、麹、仕込み水、酵母で原料を発酵させ、アルコールを発生させる点では共通しています。
日本酒は、醪を搾った後、ろ過、火入れを経て完成しますが、焼酎には蒸留の工程が待っています。
蒸留
蒸留とは、液体に含まれる成分の沸点の違いを利用して、沸点の低い物質を選択的に抽出する方法。
焼酎の仕込みでできた二次醪には、水とアルコールが含まれています。
アルコールの沸点は水より低いため、その差を利用して、醪からアルコール分と香り成分を抽出。
焼酎と日本酒の度数の違い
日本酒は「醸造酒」、焼酎は醸造酒をさらに蒸留してアルコールの純度を高めた「蒸留酒」。このため、焼酎の度数は日本酒の度数よりも高い傾向にあります。
日本酒は15度前後が多いのに対し、焼酎は20度、25度が主流です(蒸留したての焼酎は42~43度程ですが、水を加えて度数を調整しています)。
もっとも、焼酎でも日本酒と同じくらい度数を抑えた商品もあります。
「百年の孤独」で知られる黒木本店はなんと、加水して度数を14度まで下げた本格芋焼酎「球」を発売しています。
割らずにそのまま飲める、新しいスタイルの焼酎ですね。「KUROKIHONTEN“Q”」と記された、白黒のスタイリッシュなラベルにも注目。
焼酎と日本酒の飲み方の違い
焼酎は通常、日本酒と比べて度数が高いので、水やお湯で割って飲みます。
最近では、炭酸で割って焼酎ハイボールとして飲む飲み方も浸透。
また、樽で長期貯蔵した麦焼酎を、ウイスキーのようにストレートやロックで味わうのも良いですね。
日本酒はというと、そのまま飲むのがスタンダード。
とはいえ、「玉川 純米吟醸 Ice Breaker」(木下酒造)のようにロックを推奨する日本酒や、「たまには酔いたい夜もある」(沢の鶴)のように無糖紅茶、乳酸菌飲料、炭酸水等で割るアレンジを提案する日本酒も出てきています。
焼酎と日本酒の共通点
焼酎と日本酒の共通点は、意外にもたくさんあります。
どちらもたっぷりの「仕込み水」を使うということ、紫外線に弱く、茶色や緑の色付き瓶に入れられていることなど、挙げればきりがありません。
瓶のラベルも、漢字やひらがなで銘柄がドーンと書かれたものが多いですね。
食中酒としての魅力も、共通点と言えるでしょう。
まとめ
日本酒と焼酎の歴史や製法を見てみると、交差する部分が多いことに気が付きます。
どちらも、この国の歴史と風土に育まれた、日本ならではの面白いお酒なのですね。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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