焼酎とスピリッツの違いは何?
お酒には3つの分類があります。
それは、醸造酒と蒸留酒、混成酒。
中でも、焼酎が分類される蒸留酒全般はスピリッツと呼ばれています。
穀物や野菜、果物をアルコール発酵させ蒸留器で蒸留して製造。
ただ、焼酎とスピリッツには違いがあるのです。
今回は、焼酎とスピリッツの違いの違いをご紹介します。
目次
スピリッツの歴史
起源
スピリッツの起源は、メソポタミアを中心に紀元前には存在していたとされる「アラック」にあると言われています。
アラックは、もともとナツメヤシ(デーツ)やブドウなど、中東原産の果実を原料に造られる蒸留酒でした。
これがトルコやモンゴル、ヨーロッパにも伝えられ、原料も呼称もさまざまな蒸留酒が造られるようになりました。
生命の水
スピリッツは、端的に言うと「蒸留酒」です。
英語表記では「spirit(=精神、魂)」の複数形「spirits」。
蒸留によってアルコール度数が高められた液体は、昔の人々にとって、人の精神や魂にはたらきかける「生命の水」だったのですね。
ちなみに北欧には、ジャガイモを主原料とする「アクアビット」という蒸留酒があります。その名は、ラテン語で「生命の水」を意味する「Aquavitae(アクアヴィタエ)」に由来するそうです。
世界のスピリッツ
世界の4大スピリッツといえば、「ウォッカ」「ラム」「ジン」「テキーラ」ですね。
ウォッカ
ウォッカは、旧ソ連圏、北欧圏、中欧圏を中心に造られているスピリッツ。
原料は、大麦、小麦、ライムギ、じゃがいもなどさまざま。
蒸留後、白樺炭でろ過されるため、無味無臭の澄み切った仕上がりになります。
香草や隠し味を加えたフレーバーウォッカもあります。
ラム
ラムは、サトウキビの廃糖蜜または絞り汁を原料とするスピリッツ。
原産地は、カリブ海の島々のどこかと言われています。原料、製法、貯蔵期間などの違いによって、大きく「ヘビーラム」「ライトラム」「ミディアムラム」の3タイプに分類されます。
ジン
ジンは、ベーススピリッツに、ハーブやスパイスといったボタニカルで香り付けしたスピリッツ。
ベーススピリッツの原料もボタニカルの種類も多岐に渡りますが、「ジュニパーベリーで香りづけをしていること」が必須の要件となっています。
香りづけの方法や蒸留方法、使用する蒸留機なども実にさまざまで、自由度の高いスピリッツといえるでしょう。
「ボンベイ・サファイア」「タンカレー」など有名どころだけでなく、世界各国で多種多様なクラフトジンが造られています。
日本でも、柚子や玉露など和のボタニカルを取り入れた「季の美 京都ドライジン」「サントリー ROKU」などが登場しています。
テキーラ
テキーラは、アガベ(竜舌蘭)を原料とするメキシコのスピリッツ。
アガベは、大型の多肉植物で、テキーラの原料として収穫できるようになるまで5~10年の歳月を要します。
1994年に「テキーラ」の価値を守るべく原産地呼称が導入されてからは、「テキーラ」を名乗るには、「ハリスコ州かその周辺で造られたこと」「ブルーアガベの使用率が51%以上であること」「蒸留を2回行うこと」など厳しい要件が課されるようになりました。
ショットで盛り上がるイメージが強いテキーラですが、100%アガベのプレミアムテキーラなどは、大人なシーンにそっと寄り添うお酒です。
焼酎とスピリッツの違いは?
蒸留酒である焼酎は、広い意味で「スピリッツ」の仲間です。ただし、日本の酒税法上の「スピリッツ」の定義からは除外されます。
アルコール度数
スピリッツは、醸造酒をさらに蒸留してアルコール度数を高めたお酒なので、度数は比較的高いです。
世界のスピリッツの中には、ポーランドのウォッカ「スピリタス」のようにアルコール度数96%のスピリッツも。
焼酎は、商品としてお店に並んでいるものは加水して25%や20%に度数を調節したものが多いのですが、蒸留直後の原酒のアルコール度数は大体36%~40%と高めです。
酒税法上の分類
「スピリッツ」とは蒸留酒のことなので、ウイスキー、ブランデー、そして焼酎も「スピリッツ」の仲間。
ただし、日本の酒税法では、「ウイスキー」「ブランデー」「連続式蒸留焼酎」「単式蒸留焼酎」はそれぞれ独立した品目として分類されており、「スピリッツ」の定義は「(これらの)いずれにも該当しない酒類でエキス分が2度未満のもの」とされています。
つまり、酒税法上の分類では、焼酎は「スピリッツ」に含まれません。
原材料
ウォッカやジンがさまざまな原材料で造られているのと同様に、焼酎も、サツマイモ、米、麦、胡麻など、多様な原材料で造られています。
最も多いのは、サツマイモが原材料の芋焼酎ですが、じゃがいもを使った焼酎や南瓜を使った焼酎、日本酒を搾った後の副産物である酒粕を使った焼酎などもあります。
蒸留方法
スピリッツの蒸留方法は、銘柄やメーカーによって異なりますが、ラムの条件に「2回蒸留」が義務付けられているように、蒸留方法が決められている場合もあります。
焼酎の蒸留方法は、酒税法上、「単式蒸留」と「連続式蒸留」の2つ分類されます。
単式蒸留機で1~2回蒸留された焼酎は、「単式蒸留焼酎」あるいは「焼酎乙類」と呼ばれます。
蒸留回数が少ないため、原料の香りがよく溶けだした、風味豊かな焼酎を造るのに適しています。
「本格焼酎」と呼ばれる焼酎は、この単式蒸留で造られます。
「連続式蒸留焼酎」は、「アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したものでアルコール分36度未満のもの」と定義。
「焼酎甲類」とも呼ばれ、一般的にすっきりした透明感のある味わいの焼酎になります。
焼酎とスピリッツの共通点
海外では焼酎はスピリッツに分類
焼酎も蒸留酒である以上、日本の酒税法の枠組みの外では「スピリッツ」に違いありません。飲み方は主に、お湯や水で割って食中酒として楽しまれます。
一方、海外では、スピリッツといえばショットやカクテルベースに使われています。
そこで、海外で焼酎を広めるために、ジャパニーズスピリッツ「SHOCHU」をカクテルベースとして訴求する動きもあります。
黒糖ラム
サトウキビの生産が盛んな奄美大島や沖縄では、国産サトウキビを使った黒糖ラムを造る蔵も登場しています。
奄美大島で造られる黒糖焼酎は、発酵に米麹を使うという点でラムと異なりますが、どちらもサトウキビが原料の蒸留酒。
黒糖焼酎「奄美」で知られる高岡醸造は、オーク樽で熟成させた純日本製のゴールド・ラム「ルリカケス」を製造しています。
他にも、「黒糖酒」(ヘリオス酒造)、「COR COR(コル コル)」(グレイス・ラム)、「IHEYA ISLAND RUM(イヘヤ アイランド ラム)」(瑞穂酒造)など、沖縄県産サトウキビを使った国産ラムが増えています。
焼酎蔵のクラフトジン
焼酎蔵がクラフトジンを製造する動きも盛んになっています。
鹿児島の小正醸造は、焼酎造りで培った知識と技術を生かして、2018年にジンレーベル「KOMASA GIN」を立ち上げました。地元のボタニカルを使い、「桜島小みかん」「ほうじ茶」「苺」の3アイテムを発売しています。
宮崎の京屋酒造は、本格芋焼酎をベーススピリッツとする「油津 吟 YUZU GIN」と、宮崎産の金柑、へべス、日向夏をメインボタニカルに使用した「HINATA」を発売しています。
まとめ
国内では別のカテゴリに分類されている焼酎ですが、ウォッカやラムといったスピリッツの仲間なのです。
食中酒としてだけでなく、ロックやカクテルアレンジを加えて、自由に楽しんでみてくださいね。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
人気の記事
-
焼酎とウォッカの違いは何?
2022-03-06焼酎の選び方 -
焼酎はロックで楽しむ!その特徴からおすすめの焼酎までご紹介します
2022-04-01焼酎の飲み方 -
焼酎のコーヒー割りで贅沢な時間を
2023-04-17最新ニュース