【芋焼酎】月の中(つきんなか)/岩倉酒造場(宮崎県西都市)
宮崎県の焼酎造りは、宮崎県酒造組合において7地区に分けられます。
7地区とは、
・高千穂地区
・延岡・日向地区
・西都・高鍋地区
・えびの・小林地区
・都城地区
・宮崎地区
・日南・串間地区
となっています。
1973年(昭和48年)に北部の高千穂地区が、日本初の蕎麦焼酎を発売したことで、一気に宮崎焼酎の原材料の多様性が開花。
今でも、それぞれの地区で個性的な焼酎を製造しています。
一般的には、南部では主に芋焼酎、北部では麦焼酎の生産が多いとされています。
宮崎県は、芋焼焼酎造りが盛んな鹿児島と、麦焼酎焼酎造りが盛んな大分の間に挟まれています。
宮崎県酒造組合は、宮崎県の焼酎のさらなる飛躍を目指して2007年8月に、宮崎県で生産された単式蒸留焼酎について「宮崎の本格焼酎」という地域団体商標を特許庁に登録しています。
岩倉酒造場がある西都市は、宮崎県のほぼ中央に位置します。
県庁所在地である宮崎市と隣接していて、宮崎市内から車で約45分。
温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、農業がさかんです。
ピーマンが名産で、日本でも有数の産地。
西都市の歴史はとても古く、日本書紀にも登場するほど。
また、我が国の酒造りにおいても、とても所縁のあるエリアなので、ご紹介します。
西都市には、天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫で神話「天孫降臨」の主役である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)と、絶世の美女で、桜の花の名の語源である木花開耶姫(コノハナサクヤヒメ)が結婚式を挙げたといわれている神社があります。
その名を都萬神社(つまじんじゃ)といいます。
都萬神社は創建837年(承和4年)。
瓊瓊杵尊と木花開耶姫が結婚したというのは、つまりは日本で最初に結婚式を執り行われたということで、縁結びのご利益があるとして有名になります。
今でも、幸せを求める女性の参拝者が多い神社。
そして、都萬神社には、「日本清酒発祥の地」と書かれた記念碑が建っているのです。
身籠もった木花開耶姫が三皇子を出産した時、母乳だけでは足りないので、代わりに甘酒で育てたという言い伝えから、です。
お酒に所縁のあるといえば京都の松尾大社が有名ですが、西都市にはなんと、
「日本清酒発祥の地」の記念碑を掲げた神社があったのです。
また、この都萬神社の西方には、児湯の池(こゆのいけ)という池があります。
この池は、今でも豊富な清水を満々とたたえています。
お酒造りには良質な水が必要ですから、ここの清水をつかっていたのかもしれません。
岩倉酒造場の創業は、1890年(明治23年)。
現在の当主は、四代目の岩倉幸雄氏。
杜氏でもある岩倉幸雄氏と奥様、娘、息子さんの4人で焼酎を生産しています。
麹造りや仕込みはもちろんのこと、瓶詰めやラベル貼りも全て手作業。
収穫したばかりの国産芋しか使わず、仕込みの朝に使う分だけを契約農家から購入。
コストは嵩んでも、良質な焼酎を造ろうとの信念が岩倉酒造場の昔からの伝統です。
生産量は年間芋焼酎200石、麦焼酎60石ほど。
首都圏ではプレミアム焼酎として有名です。
岩倉酒造場の焼酎のラベルはとても印象的。
宮崎県外向け25度のラベルのデザインは、かつて宮崎日日新聞のひとこま漫画を描いていた山本俊六郎氏が担当。
竹ベラを使った独特の字体で
「今も、昔も、焼酎は、西部、岩倉月の中」
と書かれています。
また、岩倉酒造場は麦焼酎「三段じこみ」を製造しており、山本氏の書く字体で
「内部・岩倉田舎ン田舎三段じこみは麦ン昧」
とあります。
ポエムのようなコピーのような標語は、岩倉酒造場オリジナルで他の焼酎のラベルにはない発想です。
ところで、一般的な本格焼酎のアルコール度数は25度であることが多いです。
一方、宮崎県内で主に飲まれているのは、20度の焼酎がほとんど。
なので、宮崎県の焼酎酒蔵はそのほとんどの銘柄で、「県内向けの20度」と、「県外向けの25度」の両方を販売しています。
焼酎の密造が横行した戦後に、酒造業者か酒税の低くなる20度で製造し、価格を下げて対抗したのが由来、といわれています。
「月の中」も同じように、「県内向けの20度」と「県外向けの25度」があります。
「月の中」のネーミングは、地名に由来しています。
むかしむかしこの地のお殿様が、小川に映る月のあまりの美しさに心を動かされ、「月中」という名を与えたそうです。
岩倉酒造場には「月の中」以外に、地名をつけた酒がもうひとつあります。
「妻」といいます。
妻は、古代、日向の中心地、今は西都市の中心地。
1984年(昭和59年)までは鉄道も走っていたそうです。
お湯割りがオススメです。
やさしく、伸びのある甘みに上品な香り。蒸したお米の甘い香りが心地よい。
口にすると芋の甘味が舌を包み込みます。
ミネラルの香り。焦がしバターのような濃厚で芳醇な香り。
二杯目を口にすると印象が変わるのも特徴的。
ナッツのような香りがでてきます。
また、お湯割の比率をゴーゴーにすると、グッと味わいが広がります。
芋の旨さ引き立ち、飲み飽きがしないです。
余韻もスッキリしつつ、心地よい長さ。
家族が支え合うあたたかい味がします。
料理は、焼き魚や刺身などあっさりしたが合いそうです。
また、お湯割りのアルコールの比率をゴーゴーにして、コッテリした中華も良いかもです。
名産のピーマンを使った、青椒肉絲(チンジャオロース)が合いそうです。
〈銘柄データ〉
【月の中(つきんなか)】
岩倉酒造場/宮崎県西都市
主原料/芋(黄金千貫)
麹菌/白麹(タイ米)
度数/25度
蒸留/常圧蒸留
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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