焼酎とウイスキーの違いとは?
麦焼酎とウイスキー、どっちも大麦を原料とする蒸留酒で、製造方法も似ています。
実際、麦焼酎がウイスキーに分類される国もあるほど。
今回は、焼酎とウイスキーの違いを探っていきましょう。
目次
焼酎とウイスキーの違いは糖化の原料
麦焼酎とウイスキーは、どっちも主原料である大麦を糖化・発酵させ、蒸留・貯蔵して造る蒸留酒です。
では、これらの違いはどこにあるのでしょう?
ひとつは、大麦に含まれるでんぷんを糖化させる際に、「麦芽」そのものの酵素を使うか、「麹」の酵素を使うかという点にあります。
これは、味にも大いに影響します。
「麦芽」とは、発芽した麦。
ウイスキーの糖化には、この麦芽を乾燥させて使います。
一方、焼酎の仕込みにおける糖化には、「麹」を使います。
まずは焼酎とウイスキーの原料を、詳しく見ていきましょう。
ウイスキーの原料
ウイスキーの原料は、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物。
主な原料としてよく知られているのは大麦麦芽(=モルト)ですが、トウモロコシやライ麦、小麦などを主原料とするウイスキー、複数をブレンドしたウイスキーなど、その原料や組み合わせはさまざまです。
珍しいところでは、キヌアや米、そばを使ったウイスキーも。
焼酎の原料
・連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)
甲類焼酎の原料は、サトウキビの搾りかす「廃糖蜜」や清酒の「酒粕」などです。
砂糖や日本酒の副産物を原料としており、生産コストが抑えられます。
・単式蒸留焼酎(乙類焼酎/本格焼酎)
乙類焼酎の原料は、芋、米、そば、サトウキビなど。
原料によって香味も異なるため、同じ乙類焼酎でもその味わいは多様です。
焼酎とウイスキーの製造方法の違い
発酵
製造方法に関する大きな相違点は、冒頭に説明したとおり、糖化で「麦芽」を使うか「麹」を使うかという点にあります。
ウイスキーや焼酎の原料は、それ自体では発酵できず、まず糖化させなければなりません。
ウイスキーでは、大麦自体の酵素を発芽によって活性化させ、デンプンを糖分に変えます。
焼酎では、原料のデンプンを糖分に変えるために麹を使います。麹は、日本の風土で育まれた菌の一種です。焼酎は、世界ので唯一、麹を使った蒸留酒です。
割り水
焼酎の製造工程で、蒸留後、貯蔵を経て瓶詰め前に加水することを、「割り水」といいます。中には、割り水せずに商品化される「原酒」もありますが、ほとんどの商品で割り水しています。
ウイスキーは、蒸留後に加水して度数調整した後、樽で貯蔵熟成。
そして、調合後さらに後熟させ、再び加水し、度数を約40度に調整しています。
なお、ウイスキーも加水しない場合があります。
焼酎の「割り水」とウイスキーの「加水」、似ていますね。
貯蔵熟成
3つ目の相違点は、貯蔵熟成です。
どちらも一定期間貯蔵熟成しますが、ウイスキーは、一般的に「木製の樽で貯蔵熟成」されています。
木樽の長期熟成によって生まれる深い琥珀色の液体は、ウイスキーの大きな特徴。
一方、焼酎の熟成にも木樽が使われることがあります。
ただ、焼酎の色の濃さには酒税法上の制限があり、木樽熟成による色の変化は色規制に触れやすくなります。
このため、焼酎の貯蔵には、伝統的な甕壺やステンレスタンクがよく使われます。
アルコール度数の違い
焼酎のアルコール度数は、世界の蒸留酒の中では比較的低めに設定されています。
ウイスキーとの比較を見てみましょう。
焼酎のアルコール度数
焼酎のアルコール度数は、20度または25度が一般的ですが、原酒の個性をそのまま楽しめる35度や上限45度に近い度数の焼酎もあります。
逆に、そのまま飲める12度や15度などの商品もあります。
ウイスキーのアルコール度数
ウイスキーのアルコール度数は、40度以上が一般的です。
国や地域によってはウイスキーのアルコール度数の下限が定められているところもあります。
例えばスコットランドやアイルランド、アメリカなどでは40度以上、国際市場向けのスコッチウイスキーは43度以上とされています。
酒税法改正の歴史
色規制
焼酎の色の濃さ(着色度)には、一定の制限があるのをご存知でしょうか。
実は、1950年代に定められた国税庁の通達に、「焼酎の色の濃さはウイスキーの5分の1から10分の1以下の値にしなくてはならない」旨の色規制があるのです。
このため、せっかく熟成した深い琥珀色の焼酎ができても、透明の焼酎を混ぜたり、ろ過によって色素を取り除いたりして淡い色に調整する必要があります。
WTOからの是正勧告?
色規制の背景には、「焼酎をウイスキーと区別するため」という目的がありました。
ウイスキーには高級酒として高い税率が課せられていた反面、「庶民の酒」として親しまれていた焼酎の税率は低く抑えられていたからです。
ところが1990年代後半、EUなどが、日本の税制度上、同じ蒸留酒なのにウイスキーの酒税が焼酎の酒税より高いことを不当として、世界貿易機関(WTO)に訴えました。
これを受けたWTOは、「日本の酒税制度はWTO協定違反である」との判断を示し、同じ税率にするよう是正勧告を出しました。
その後、段階的に是正され、現在は焼酎もウイスキーもアルコール度数に応じて同税率が課せられています。
もっとも、アルコール度数37度未満の焼酎の税率は、今でもウイスキーより低いです。
このため、「焼酎の色量調整が撤廃されたらウイスキーとの区別がなくなり、税制優遇措置も見直されてしまう」と懸念するメーカーの声が根強く残り、焼酎とウイスキーを区別する色規制もそのままになっています。
焼酎蔵が製造したウイスキー
焼酎とウイスキーの複雑な関係が垣間見えましたが、最近では、焼酎蔵がウイスキーを製造する例や、長期樽熟成の焼酎をスピリッツやリキュールとして発売する動きもあります。
ジンの製造にも取り組む焼酎蔵の小正醸造は、2017年11月、「嘉之助蒸溜所」を設立し、ウイスキー製造に乗り出しました。これまでに、「シングルモルト嘉之助蒸留所限定ボトル」「シングルモルト嘉之助2021 SECOND EDITION」「同 2021 FIRST EDITION」を発売しています。
本坊酒造
代表銘柄「桜島」で知られる本坊酒造は、実は日本有数の歴史をもつ国産ウイスキーメーカーでもあります。
同社の「マルスウイスキー」の蒸溜所は、長野県上伊那郡のマルス信州蒸溜所と、鹿児島県南さつま市のマルス津貫蒸溜所の2拠点。
「シングルモルト津貫」などのモルトウイスキー、「TWIN ALPS」などのブレンデッドウイスキーを製造しています。
30年以上熟成させた高級ジャパニーズウイスキーや希少銘柄も多数生み出しています。
柳田酒造
宮崎県都城市の柳田酒造は、麦焼酎を国産のミズナラ樽で熟成させた「栃栗毛(とちくりげ) MIZUNARA」を発売しています。
この商品では、長期熟成で生まれた魅力とミズナラ木樽の香りをそのまま表現することを最優先に、色調整をしていません。
このため、分類上は「スピリッツ」です。
まとめ
こうして比較してみると、焼酎とウイスキーって似ていますね。他方、興味深い相違点もいくつかありました。歴史や文化的背景にも思いを馳せつつ、それぞれの違いを味わってみてはいかがでしょうか。
-参考 : 日本の当事国案件,世界貿易機関(WTO),外務省
-参考 : 酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達,国税庁
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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