焼酎とスピリッツの違いは? RTDにも注目
焼酎もスピリッツも、どちらも蒸留酒。
今回は、世界で広く親しまれているスピリッツを参考に、焼酎の飲み方のヒントを探っていきましょう。
スピリッツは蒸留酒
日本の酒税法では、焼酎、ウイスキー、ブランデーなど特定の蒸留酒には独立した定義が定められており、「スピリッツ」から除かれています。
しかし、酒税法の定義を離れると、スピリッツとはつまり蒸留酒。
酒類を大きく醸造酒、蒸留酒、混成酒の3種類に分けると、焼酎は蒸留酒にあたります。
焼酎もスピリッツも、同じ蒸留酒なのです。
ブラウンスピリッツとホワイトスピリッツ
ブラウンスピリッツとは、木樽熟成などを経て褐色の色みがついた蒸留酒の総称。
ダーカースピリッツとも呼ばれます。代表的なブラウンスピリッツは、ウイスキー、ブランデー、ゴールドラム、ダークラム、テキーラ(アホネ)など。
他方、ホワイトスピリッツは、無色透明なスピリッツ。
ジン、ウォッカ、ホワイトラム、テキーラ(ブランコ)など、樽熟成の工程がないスピリッツです。
ブラウンスピリッツに比べてクセがなく、カクテルベースに適しています。
焼酎も無色透明なので、ホワイトスピリッツに含まれます。
焼酎には樽熟成の工程を経ているものもありますが、酒税法上の色量規制の関係から、ろ過で色を除去したり、貯蔵期間の短い焼酎を混ぜたりして、透明に近い状態で出荷しています。
ホワイト革命とは
ブラウンスピリッツの褐色や濃い琥珀色は、木樽で長期熟成された証であり、高く評価されてきました。
ところが1970年代のアメリカで、ホワイトスピリッツであるウォッカの消費量が、ブラウンスピリッツであるバーボンの消費量を抜くという現象が起きました。
世界的にもジンやウォッカなどのホワイトスピリッツの人気が急速に高まり、これは「ホワイト革命(ホワイト・レボリューション)」と呼ばれるようになりました。
日本でホワイト革命をけん引したのは、和酒メーカー大手の宝酒造。
同社は、ホワイト革命は日本にもやってくると睨み、1977年に甲類焼酎「純」を発売。
全国的に販促を打ち、爆発的な人気を呼びました。
ホワイトスピリッツとホワイトリカー
宝酒造の仕掛けをきっかけに、日本でも白色革命が巻き起こり、以来、甲類焼酎はホワイト革命の「白色」にちなんで「ホワイトリカー」と呼ばれるようになりました。
ホワイトリカーは現在、果実酒を漬けるためのお酒としてよく販売されていますね。
無味無臭でどんな果実とも相性がよく、果実の色や味わいをふんだんに引き出すことができるためです。
他のホワイトスピリッツでも果実酒をつくることができます。ウォッカ、ホワイトラム、黒糖焼酎など、いろいろ試してみるといいですね。
スピリッツのアルコール度数
スピリッツのアルコール度数は、日本酒やワインなどの醸造酒と比べて高い傾向にあります。
なぜなら、蒸留酒であるスピリッツは、醸造酒をさらに蒸留してアルコール度数を高めたお酒だから。
ポーランドのウォッカ「スピリタス」のようにアルコール度数96%というものもあります。
焼酎のアルコール度数
甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)
酒税法上では、甲類焼酎(連続式蒸留焼酎)のアルコール度数は「36度未満」とされています。
実際の商品では、ポピュラーな20度、25度のものから上限35度のものまで、さまざまな度数のものがあります。
乙類焼酎(単式蒸留焼酎)
乙類焼酎(単式蒸留焼酎)のアルコール度数の酒税法上の制限は、「45度以下」。
甲類焼酎より10度ほど高いですね。乙類焼酎も、20度、25度をはじめ、12度のものか45度近い原酒まで、多様な商品があります。
スピリッツはカクテルに使われている
スピリッツは、比較的度数が高いことから、割ってもしっかりとアルコールを感じられます。
そのため、カクテルのベースによく使われます。
ホワイト革命の背景にも、ホワイトスピリッツがカクテルベースとして人気を博したという要素があります。
世界の4大スピリッツを使った代表的なカクテルをご紹介しましょう。
ウォッカ
ソルティ・ドッグ
ソルティ・ドッグは、飲み口にスノースタイルの塩を付けた、ウォッカベースのカクテル。
ウォッカ、グレープフルーツ、塩というシンプルな材料でできています。
原型は、19世紀末イギリスの「ソルティ・ドッグ・コリンズ」というドライジンをベースにしたカクテル。
その後、1960年代のアメリカで、ウォッカをベースにしたソルティ・ドッグが登場し、現在のソルティ・ドッグとして定着しました。
ラム
モヒート
夏に人気の爽やかなカクテル、モヒート。こちらは、ラムベースのロングカクテル。
基本の材料は、ラム、ライムジュース、砂糖、そしてたっぷりのミント。
作り方は、タンブラーにミントの葉と砂糖を入れ、ライムジュースで砂糖を溶かしながらミントを潰します。
ここにクラッシュした氷を詰め、ラムを注いでステアするだけ。
ぜひお家でもチャレンジしてみてください。
ジン
マティーニ
マティーニは、ジンとドライベルモットという2つの材料だけで構成されるショートカクテル。
お酒だけで作られるカクテルで、アルコール度数は30度以上と高め。
「カクテルの王様」とも呼ばれる人気のカクテルで、文豪や著名人に愛され、映画にもよく登場しますね。
バーテンダーにとっては、シンプルなだけに技術が問われるカクテルなんだそう。
テキーラ
マルガリータ
マルガリータは、グラスのふちにスノースタイルの塩をつけた、テキーラベースのショートカクテル。
基本レシピは、テキーラ、ホワイトキュラソー、ライムジュースを2:1:1でシェーク。
こちらも、アルコール度数25度以上と比較的高めのカクテルです。
マティーニと比べてフルーティーで飲みやすく、すいすい飲んでしまいますが、強めのカクテルなので飲みすぎに注意です。
スピリッツとリキュールの違い
スピリッツだけでなく、リキュールもよくカクテルの材料に使われます。
では、スピリッツとリキュールの違いは何でしょうか。
酒税法の規制
酒税法では、スピリッツは蒸留酒、リキュールは混成酒に分類されています。
スピリッツはすべて蒸留酒ですが、リキュールは醸造酒、蒸留酒、あるいはその両方を混ぜた酒類がベースになっています。
スピリッツの酒税法上の定義は、「上記のいずれにも該当しない酒類でエキス分が2度未満のもの」とされています。
つまり、「エキス分が2度未満の蒸留酒」はスピリッツですが、「焼酎、ウイスキー、ブランデーなど別途分類されているものは除く」ということです。
リキュールの酒税法上の定義は、「酒類と糖類等を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの」。
蒸留酒・醸造酒・混成酒の分類では混成酒にあたります。
リキュールは、蒸留酒をベースに薬草や香草、甘味料や香料などを混ぜてつくられるものが多く、「蒸留酒ベースのリキュール」と「スピリッツ」の違いが気になるところです。
スピリッツとリキュールの分かれ目は、エキス分が2度未満かどうか。
エキス分とは、主に糖類です。近年勢いのあるお酒の商品群RTDを例に、具体的に見ていきましょう。
缶チューハイ
スーパーで缶チューハイの棚を見ると、各酒類メーカーの多種多様なRTDがずらりと並んでいます。
最近ではコカ・コーラも酒類に参入して「檸檬堂」を大ヒットさせましたね。
RTDとは「Ready To Drink」の略で、簡単にいうと「蓋を開けてそのまますぐ飲める」アルコール飲料を指します。
酒税法上の分類ではなく、市場で使われるマーケット用語の一種。
これらRTDですが、商品の表示を見てみると、「リキュール」と書かれているものもあれば「スピリッツ」と書かれているものもあります。
違いはずばり、「糖類などのエキス分が2度以上含まれているか否か」。
具体的に見ていきましょう。
リキュール
キリン「氷結」、コカ・コーラ「檸檬堂」、宝酒造の「極上抹茶ハイ」、サッポロの「男梅サワー」などは、いずれもリキュールに分類されるRTD。
炭酸で割ってあるものは「リキュール(発泡酒)」と記載されています。
これらはどれも、ベースにウォッカや甲類焼酎などの蒸留酒が使われていますが、糖類などのエキス分が2度以上含まれているため、スピリッツではなくリキュールになるのです。
スピリッツ
スピリッツに分類されるRTDの有名どころでは、サントリーの「-196℃ ストロングゼロ」が挙げられます。
ストロングゼロのベースは、ウォッカ。
ウォッカにレモン果汁などを加えて炭酸で割ってあるという点では「氷結」と同じですが、ストロングゼロには糖類が含まれておらず、エキス分が2%未満であるため、「スピリッツ」に分類されます。
ところで、宝酒造は「極上抹茶ハイ」のほかに「お茶割り」シリーズも発売しています。
この「お茶割り」は、焼酎を緑茶で割っていますがエキス分が2度に満たないため、スピリッツに分類されます。
チャミスルは?
韓国焼酎の「チャミスル」は、麦、米、トウモロコシやタピオカなどを混ぜ合わせて仕込み、連続式蒸留機で蒸留したアルコールを水で薄めた「希釈式焼酎」。
原料と製法を見ると「甲類焼酎」に当たりそうですが、アミノ酸など調味料が2度以上添加されているため、チャミスルも「リキュール」に分類されます。
まとめ
酒税法上では別の分類ですが、スピリッツ、リキュール、焼酎の差は、実は些細なものです。スピリッツやリキュールのように、焼酎をカクテルベースとして楽しむのもいいかもしれませんね
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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