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甲類焼酎とは?その歴史からペアリングまでご紹介

昭和居酒屋や町中華で不動の人気を誇る甲類焼酎。
実は、明治期には「新式焼酎」として話題を呼び、昭和後期の焼酎ブームの立役者だった歴史があります。
若者を中心にレトロ人気が高まっている昨今、改めて“古くて新しい”甲類焼酎の魅力に迫ります。

甲類焼酎とは

甲類焼酎は、無味無臭で透明感のある焼酎です。
現行の酒税法では「連続式蒸留焼酎」と名称変更されており、その名のとおり連続式蒸留機で複数回の蒸留を繰り返して作られます。
名称変更後も、商品名には「甲類焼酎」と表示されることが多く、そのままの呼称で親しまれています。
原料の画像

原料

甲類焼酎の原料には、サトウキビの搾りかすである廃糖蜜や、清酒の酒粕などが使われています。
砂糖や清酒を作る過程で発生する副産物を原料としているため、甲類焼酎は乙類焼酎に比べてコストが抑えられ、低価格での販売が可能になっています。
製造方法の画像

製造方法

甲類焼酎は、原料を発酵させ、連続式蒸留機で何度も蒸留を繰り返して作ります。
こうすることで、アルコールの純度を高め、割り水によってアルコール度数を調整した後で出荷されます。
無味無臭で透明感のあるお酒なので、果実酒を漬ける際の「ホワイトリカー」として使われたり、サワーやチューハイのベースにもよく使われています。

歴史

新式焼酎の画像

新式焼酎

日本には古くから、サツマイモや麦を原料に「単式蒸留」で作られる焼酎(乙類焼酎)がありました。
そして、1900年代、1988年にドイツから伝わった「連続式蒸留機」を使って作られる甲類焼酎が登場。
新たな技術を駆使して作られたピュアな味わいの焼酎は、「新式焼酎」と呼ばれて人気を博しました。
バクダンカストリの画像

バクダン・カストリ

新式焼酎の製造方法は、戦中、石油に代わる燃料の生産方法に応用され、燃料用アルコールが作られるようになりました。
戦中~戦後は、物資不足の時代。「カストリ」と呼ばれる、芋や麦などを発酵させて作ったいわゆるどぶろくのほか、「バクダン」と呼ばれる密造酒が横行していました。
バクダンは、燃料用アルコールが横流しされたもの。
毒性の強いメタノールを取り除いてヤミ市や飲み屋などで提供されていましたが、毒性除去が不十分なこともままあり、バクダンによって失明や死に至ることもあったそうです。
とはいえ、戦後の復興期、バクダンやカストリは庶民の間で広く親しまれ、賑わいと復興を後押ししていました。

酒税法上の分類

甲類焼酎の画像

甲類焼酎

酒税法上の定義では、連続式蒸留焼酎(甲類焼酎)は「アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留した酒類」で、「アルコール分が36度未満のもの」をいいます。
もっとも、いくつかの除外事由も定められており、「チャミスル」のように糖類などのエキス分が2%以上添加されているため「リキュール」に分類されるものもあります。
乙類焼酎の画像

乙類焼酎

単式蒸留焼酎(乙類焼酎)の酒税法上の定義も、条文上は細かな要件が定められています。
おおまかには「単式蒸留機で穀類、芋類、米、清酒かすなどを蒸留した酒類」で、「アルコール分が45度以下のもの」です。

混和焼酎

混和焼酎は、その名のとおり甲類焼酎と乙類焼酎を混ぜ合わせたもの。
クセのない甲類焼酎と、香味豊かな乙類焼酎のブレンドによって相乗効果を生んでいます。
なお、商品に表示される際は、甲類の割合50%以上のものは「甲類乙類混和」、50%未満のものは「乙類甲類混和」と表示されます。

甲類焼酎の楽しみ方

レモンサワーのベースとしての画像

レモンサワーのベースとして

ピュアな味わいが特徴の甲類焼酎は、人気のレモンサワーのベースに最適です。
昭和居酒屋や町中華のメニューでも一押しドリンクとして掲げられていますね。

居酒屋の画像

居酒屋

昭和レトロブームで、昭和居酒屋が人気です。
そんな昭和居酒屋の定番メニューのひとつが、甲類焼酎をベースにしたレモンサワー。
氷入りのジョッキ、ぶつ切りのレモン、そしてレトロな甲類焼酎の瓶をセットにして提供してくれる遊び心のある店もありますね。
缶チューハイの画像

缶チューハイ

「タカラcanチューハイ」のように、甲類焼酎は缶チューハイのベースにも使われています。
「タカラcanチューハイ〈レモン〉」は、レモンサワーブームの先駆けともいえる商品。
現在発売されている多くの缶チューハイは、「氷結」「本搾り」「-196℃ ストロングゼロ」など、ウォッカをベースとするものが多いです。

ペアリング

スッキリ透明感のある甲類焼酎は、昭和居酒屋や町中華のメニューとの相性も抜群です。
昭和居酒屋や町中華には、風味豊かな乙類焼酎よりも、しっかりしたアルコール感がありながらもスッキリ爽快感を味わえる甲類焼酎が、よく合います。
もつ焼きの画像

もつ焼き

もつ焼きは、バクダン・カストリと同様、戦後の復興期に庶民の間で親しまれた食べ物。
現在も、B級グルメの王道のひとつです。
甲類焼酎を炭酸で割ったサワーにもつ焼きを合わせて、昭和の活気あふれる時代に思いをはせるのもいいですね。
餃子の画像

餃子

餃子や唐揚げなど、町中華メニューとの相性も抜群です。
実際、町中華のドリンクメニューには、甲類焼酎をベースにしたお茶割り、烏龍茶割り、サワーなどがずらりと並んでいます。
町中華を楽しむときだけでなく、家飲みでも、餃子と甲類焼酎のペアリングを試してみてください。

果実酒のベースとして

梅酒の画像

梅酒

無味無臭の透明感のある甲類焼酎は、果実酒のベースにもうってつけです。
「ホワイトリカー」として、果実酒専用に売られている甲類焼酎もあります。
家庭でよく作られる果実酒といえば、梅酒ですね。みずみずしい青梅が出回る6月頃、梅の香りを感じつつ、梅酒づくりに挑戦してみましょう。
その他の画像

その他

甲類焼酎自体にクセや風味がないので、どんな果実を漬けても失敗しません。
レモン、びわ、キウイ、イチゴ、りんごなど、季節に応じてさまざまな果実酒を漬けてみましょう。
ただし、酒税法上、ぶどう、山ぶどうは漬けられないので要注意です。

代表的な銘柄

タカラ

甲類焼酎の代表銘柄といえばやはり「タカラ」。
宝酒造は、1910年代には本格的に新式焼酎の製造を開始し、国内のホワイト革命の火付け役ともなったロングセラー商品「純」も生みました。
以来、甲類焼酎のトップメーカーとしての地位を確かなものにしています。

キンミヤ

「キンミヤ」の愛称で親しまれている宮崎本店の「亀甲宮焼酎」も外せません。
昭和居酒屋や町中華でも人気の銘柄で、レトロなラベルが若い世代からも支持を得ています。
無味無臭の甲類焼酎の中でも、超軟水の鈴鹿山系の伏流水を仕込み水に使っている「キンミヤ」には、ほのかな甘みがあり、口当たりもまろやかです。

トライアングル

サッポロビールの「トライアングル」も人気のロングセラー商品です。
1984年にキッコーマンが発売し、2006年にサッポロビールに引き継がれました。
宝酒造の「純」と並んで、1980年代の焼酎ブームをけん引した銘柄です。
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まとめ

乙類焼酎に比べて安価で大量生産されるイメージが根強い甲類焼酎ですが、明治後期から昭和の日本の歴史に紐づいた興味深いお酒だったのですね。
お店ではもちろん、お家でも、自家製サワーや果実酒ベースとして楽しんでみてください。

 

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