【芋焼酎】さつま寿 | 尾込商店(鹿児島県南九州市川辺町)
尾込商店の魅力
尾込商店は南九州市の川辺町にある焼酎蔵です。
かつては地元でしか飲むことができない「知る人ぞ知る」芋焼酎を造っていました。現在では、伝統的な薩摩焼酎の蔵元として全国的に知られています。
規模ではなく品質を第一に考えているために生産量は少ないですが、丁寧な仕事に裏付けされた高品質の焼酎は多くのファンが注目しています。
尾込商店の魅力は何といっても、伝統に根付いた焼酎づくりを心がけているところ。サツマイモの仕入れ、麹作り、製造、瓶詰めに至るまで、奇をてらうことなく、真っ当な作業が身上です。サツマイモの品質と麹作りが伝統的な芋焼酎造りであることを、知り尽くしています。
3代目当主・尾込宜希氏
創業は1939年(昭和14年)。今は3代目・当主の尾込宜希(よしき)氏が杜氏を兼任して、蔵を守っています。
宜希氏は、東京の大学を卒業したのち1993年(平成5年)に蔵に戻ってきました。伝統的な鹿児島県の芋焼酎が全国的に広がった焼酎ブームと重なります。
蔵に戻った最初の7年程度は、黒瀬杜氏に来て焼酎を造ってもらったといいます。その頃の黒瀬杜氏は全盛期よりも人数は少なくなっていましたが、蔵元のような再興を目指す酒蔵からの需要があり、活動は続いていました。
そのころの蔵元の製造石数は600石ほど。その後、杜氏が高齢のため引退すると、宜希氏が中心になって焼酎造りを始めます。当時がこの蔵にとって一番苦しい時期だったといいます。この時期の苦労が、全国的な蔵へと成長する足かがりとなったのでしょう。
清冽な水資源を、仕込み水や割り水に使用
焼酎に限らず日本のお酒造りでは、水は大切な原料のひとつ。日本酒では「灘の宮水」が広く知られていますが、川辺町がある南九州は、火山の噴出物で覆われたシラス台地が良質で豊富な水を生み出しています。ミネラルをふんだんに含んだシラス台地の土壌の地下には、水脈が網の目のように広がっています。
川辺町には、清水の湧水(きよみずのゆうすい)と呼ばれる日本名水百選に選ばれた名水が湧き出ています。南九州の天然水はほとんどが軟水。ミネラルが少ないため、焼酎に適しているといわれています。蔵元では、これらの清冽な水資源を、仕込み水や割り水に使用しています。
尾込商店の麹米は国産
焼酎の酒質を大きく左右するのが、麹作りです。麹の出来の善し悪しが、酒質を決定づけると言っても過言ではありません。麹に使用する原料の米の状態は、毎年違うため、その都度の調整が必要になってきます。具体的には、米の浸漬の加減や蒸しの時間などを調整するのに苦労があるといいます
蔵元では、納得できる麹作りに心血を注いでいます。麹米には国産米を使用。伝統的な薩摩焼酎ではタイ米が使用されることも多いですが、国産米で安定した麹作りをして、芋焼酎の風味を引き出しています。
高品質で量も安定した頴娃産のサツマイモは頴を使用
芋焼酎の味わいに奥行きを与えるのは、なんといっても原料であるサツマイモ。一升瓶1000本分の芋焼酎には、サツマイモが2トンほど必要だといわれています。高品質であることに加えて、量の安定的な仕入れが不可欠なのです。
蔵元が使用するサツマイモは、近隣の頴娃(えい)産。きっかけは宜希氏と頴娃町の農家の方との出会いだといいます。
頴娃・川辺・知覧を擁する南九州市は、全国一のサツマイモ生産地。高品質である上、量も豊富。南九州市は、芋焼酎づくりに適した地域であるのです。尾込商店の味わいの決め手となるサツマイモは、地域がもたらした恵みだったのでした。
代表銘柄「さつま寿」
今回ご紹介するのは尾込商店の代表銘柄である「さつま寿」。頴娃産の黄金千貫を使用しています。種麹は白麹。
飲み方はお湯割りがオススメです。ほとんどの芋焼酎がそうであるように、濃厚なサツマイモの香りがアロマ効果となって鼻腔をくすぐります。
すっきりした甘さを感じたい時には、ロックで飲むのも良いでしょう。
初夏に咲くアカシアのような花の香りが印象的。ふんわりとサツマイモの甘い香りが立ち上がってきます。口に含むと、コメを蒸した香ばしいような独特の味わいが。蒸したサツマイモの甘い香りもしっかりと感じられます。白麹がふんわりとした甘さを補強しています。良質な割り水がお酒としっかり絡み合い、トロッとした粘度が感じられます。後口の渋みがアクセントとなって、しっかりとキレていきます。
日常使いの食中酒としてぜひお楽しみください。
〈銘柄データ〉
【さつま寿(さつま ことぶき)】
尾込商店/鹿児島県南九州市川辺町平山6855-1
主原料/芋(黄金千貫)
麹菌/白麹(米)
度数/25度
蒸留/常圧蒸留
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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