
焼酎ブームとは何だったのか?|数字と背景から読み解く“本格焼酎復権”の時代
かつて焼酎は、日本の酒類の中で本来あるべき評価を受けてきたとは言い難い存在でした。
戦後に広まった「カストリ」という言葉のイメージもあり、焼酎は長く“安酒”“代用品”のように語られてきた歴史があります。
しかし1970年代後半から1980年代にかけて、日本の酒類市場で異変が起こります。
それが、後に「焼酎ブーム」と呼ばれる現象です。
このブームは単なる一過性の流行ではなく、焼酎が本来持っていた文化的価値・酒質的魅力が、ようやく消費者に再発見されていった過程だったともいえます。
目次
焼酎は長く“低迷の酒”だった
戦後間もない1949年、焼酎は一時的に国内酒類生産量1位になります。
しかしその後の約25年間、焼酎の生産量はほぼ横ばいで推移しました。
同じ期間に、
・ビールは約23倍
・清酒は約10倍
・ウイスキーは20倍以上
と爆発的に伸びたのに対し、焼酎はわずか17%増にとどまります。
焼酎は“飲まれてはいたが、選ばれてはいなかった酒”だったのです。
1970年代後半から起こった静かな変化
ところが1975年頃から状況は変わり始めます。
特に伸び始めたのが「乙類焼酎(本格焼酎)」でした。
1976年から1980年の5年間で、乙類焼酎の消費量は33%増加。
これは同時期のウイスキーとほぼ同水準の伸びです。
さらに1980年代に入ると、焼酎全体の消費量は**5年間で2倍以上(約129%増)**という、他の酒類には見られない成長を記録します。
昭和59年、「焼酎ブーム」が社会現象になる
1984年(昭和59年)、焼酎はついに“ブーム”と呼ばれる段階に入ります。
この年、焼酎全体の消費量は前年比44.8%増。
特に乙類焼酎は50%以上増加という異例の伸びを示しました。
同時期、居酒屋では酎ハイが若者を中心に爆発的に普及。
ビールや水割りウイスキーに代わり、「とりあえず酎ハイ」が新しい飲酒文化として定着していきます。
一方で、
・ウイスキーは消費量が大幅減
・清酒も減少
・ビールさえ微減
と、酒類市場全体が伸び悩む中で、焼酎だけが突出して成長しました。
焼酎が選ばれた理由①|若い世代・女性層の流入
焼酎ブームの大きな原動力となったのは、新しい飲酒人口の増加です。
それまでの酒文化を支えてきた中高年層ではなく、
・若年層
・学生
・女性
といった、先入観の少ない層が一気に酒類市場に入ってきました。
彼らにとって焼酎は、
・価格が比較的手頃
・クセが少ない
・割り方の自由度が高い
という点で非常に親しみやすい存在だったのです。
焼酎が選ばれた理由②|「現代型焼酎」の誕生
この時代、焼酎の中身そのものも大きく変化していました。
・減圧蒸留によるクリアな酒質
・イオン交換による雑味の少ない設計
・麦焼酎・そば焼酎などライトな原料
・炭酸割り・フレーバー酎ハイへの展開
これらによって焼酎は、「強くてクセのある酒」から
「軽くて飲みやすい蒸留酒」へと印象を変えていきます。
特に缶入り酎ハイの登場は、焼酎を“酒場の酒”から“日常の飲料”へ押し広げました。
焼酎が選ばれた理由③|支え続けた“本格焼酎ファン”の存在
ブームの裏側には、もう一つ重要な存在がありました。
それが、ブーム以前から焼酎を評価していた酒好き・専門家層です。
本格米焼酎、芋焼酎、泡盛などを愛飲していた人々は、
「うまい」「酔い心地がいい」「翌日に残りにくい」
という実感をもとに、長年焼酎を選び続けてきました。
彼らの存在が、焼酎を単なる流行商品で終わらせず、
“文化的な酒”として受け止める土壌をつくっていたともいえます。
焼酎ブームは「復権」の始まりだった
焼酎ブームは、価格の安さだけで説明できる現象ではありません。
実際、必ずしも焼酎が最安の酒だったわけでもありません。
それ以上に大きかったのは、
・酒質の進化
・飲酒文化の世代交代
・本格焼酎の再評価
が同時に起こったことです。
焼酎はこの時代、はじめて“量”の面で存在を認められました。
しかしそれは、本来の価値が見直されていく「第一段階」にすぎません。
このブーム以降、焼酎は
・産地
・原料
・製法
・熟成
といった多様な切り口で語られる酒へと進化していきます。
焼酎ブームが残したもの
焼酎ブームは、単なる流行ではなく、
「焼酎とは何か」という問いが社会に共有された時代でした。
そして現在につながる、
・本格焼酎ブーム
・クラフト焼酎
の出発点でもあります。
焼酎は、まだ掘り起こされていない香味や酒質の可能性を数多く秘めています。
焼酎ブームとは、その入口が初めて大きく開いた瞬間だったのです。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
人気の記事
-
【焼酎の歴史】バクダン・カストリ時代
2021-11-17注目のニュース -
焼酎とウォッカの違いは何?
2022-03-06焼酎の選び方 -
焼酎のコーヒー割りで贅沢な時間を
2023-04-17最新ニュース


