
樫樽焼酎とは?広がった背景とおすすめ6選|ウイスキーのように楽しむ本格焼酎
焼酎が、樽貯蔵されるようになったのは、そう昔のことではありません。
かつて焼酎は「蒸留したら終わりの酒」でした。
それを「寝かせる酒」へと変えたのが、樫樽貯蔵という選択です。
琥珀色、甘くふくよかな香り、なめらかな口当たり――
その表情の変化は、焼酎の楽しみ方そのものを広げてきました。
本記事では、樫樽焼酎が生まれ、広がっていった背景とともに、編集部おすすめの6本をご紹介します。
樫樽焼酎とは?
もともと樫樽貯蔵の文化はウイスキーに端を発します。
2000年度(平成12年度)の酒税改正により、ウイスキーと本格焼酎の税率が同水準になったことを背景に、ウイスキー市場の伸びが鈍化。
その一方で、樫樽で熟成させた本格焼酎が注目を集めるようになります。
その流れの先駆けとなったのが、宮崎県・高鍋町に蔵を構える黒木酒造の「百年の孤独」。
麦を原料に、樫樽でじっくりと熟成させたこの焼酎は、1985年の発売以来、その印象的なネーミングや洗練されたパッケージデザインとともに、「ウイスキーのように楽しめる焼酎」として人気を獲得。
とくに東京をはじめとする都市部では入手困難な存在となり、樽貯蔵焼酎というジャンルそのものを世に知らしめる一本となりました。
この成功を追うように、宮崎では雲海酒造の長期貯蔵酒「那由多の刻」など、樫樽熟成を打ち出した本格焼酎が次々と登場。
新たな焼酎ファンを獲得していったのでした。
1990年代以降、本格焼酎の世界では「樫樽貯蔵」というスタイルが、こだわりの焼酎として注目を集めるようになっていくのです。
樫樽焼酎オススメ5選
樫樽焼酎は、いまや“ひとつのジャンル”として定着しました。
一時のブームを越え、各蔵の挑戦もひと段落したいまだからこそ、あらためて「本当に飲んでほしい一本」を選びたい。
今回はその中から、オススメの樫樽焼酎6本をご紹介します。
百年の孤独
「百年の孤独」が初めて世に出たのは、1985年。
当時としては珍しい“樫樽長期熟成”というスタイルで登場し、その味わいは、従来の焼酎の常識を大きく塗り替えるものでした。
お湯割りや水割りが主流だった時代に、ロックやソーダ割りでこそ真価を発揮する香味設計。
この洗練された飲み方が都会のバーやクラブで支持され、やがて「ウイスキーのように楽しむ焼酎」として爆発的な人気を獲得していきます。
厳選した麦を丁寧に仕込み、蒸留した原酒を、ウイスキーと同じホワイトオーク樽で3年以上熟成。
オーク由来の甘い香りと、ほのかに漂うシガーのニュアンス――
「百年の孤独」の個性は、この長期樽熟成によって形づくられています。
グラスから立ち上るのは、ココナッツやバニラを思わせる甘い香りと、香ばしい麦の風味。
凝縮感のあるコクと、驚くほどなめらかな口当たりをあわせ持つ、まさに“プレミアム焼酎”と呼ぶにふさわしい一本です。

神の河(かんのこ)
本格焼酎をはじめ、清涼飲料や芋の発泡酒まで幅広く手がける薩摩酒造は、鹿児島県を代表する総合飲料メーカーのひとつ。
蔵を構えるのは、豊かな自然と清冽な水に恵まれた南薩摩・枕崎の地です。
芋焼酎の名門として知られる一方、実は古くから麦焼酎造りにも取り組んできました。
その薩摩酒造を全国区に押し上げたのが、1989年(平成元年)に発売された、この麦焼酎「神の河」。
蔵の郊外には「神が宿る水」と書いて“神の河”と呼ばれる名水が湧き、その名にちなんで命名されました。
麦100%の原酒をホワイトオーク樽で3年以上じっくり熟成。
淡い琥珀色と、ふくよかで芳醇な香りが印象的な一本です。
味わいはまろやかで深みがありながら、クセは控えめ。
口当たりは非常になめらかで、ロックでも水割りでもコクを感じながら心地よく楽しめます。
“飲みやすさ”と“樽熟成の旨さ”を両立させた、樫樽焼酎の代表格といえる存在です。

メローコヅル エクセレンス
メローコヅルは、日本で最初の樫樽焼酎といわれています。
発売されたのは、1957年(昭和32年)、開発したのは、小正嘉之助氏。
「蒸留酒は、貯蔵することでこそ旨くなる」――。
メローコヅルの開発には、小正嘉之助氏のそんな強い信念がありました。
当時の焼酎は“長期貯蔵には向かない酒”と考えられており、熟成という発想自体が一般的ではなかった時代。
小正氏はその常識を覆すべく、1951年(昭和26年)に米焼酎の長期貯蔵に着手。
試行錯誤を重ねた末、1957年(昭和32年)、ついに「メローコヅル」を完成させました。
小正氏は完成した焼酎を、「酒の神様」と称され、文化勲章も受章した坂口謹一郎・東京大学名誉教授に送ります。
すると後日、思いがけず一枚の色紙が届きました。そこに記されていたのは、
「うまさけは ふるきぞよきと さきかけて かみいてませし ことぞたうとき」
という一首。
“古き酒こそ尊い”という意味を込めたその言葉に深く胸を打たれた小正氏は、喜びと同時に、さらなる品質向上を心に誓ったといいます。
味わいは、シェリー樽特有の、ふくよかでコクのある味わい、バニラのような甘く芳醇な香りが特徴。
ウイスキーのように、ロックや炭酸割りがオススメの飲み方。

田苑ゴールド
「メローコヅル」の誕生から25年後の1982年(昭和57年)、田苑酒造は新たな一歩を踏み出します。
それが、樽で貯蔵熟成させた麦焼酎の発表でした。
実はこの「田苑ゴールド」、あの「百年の孤独」よりも早く世に出た存在。
日本で初めて“樽貯蔵麦焼酎”を送り出した蔵元による、まさに先駆けの一本です。
ホワイトオーク樽で3年以上、じっくりと眠らせた原酒のみを贅沢に瓶詰め。
グラスに注ぐと現れるのは、その名の通り“ゴールド”に輝く液色。
豊かなコクとやわらかな旨み、そして樽由来の芳醇な香りが立ち上がります。
全量を3年以上貯蔵した麦焼酎ならではの、甘くふくよかなアロマが最大の魅力。
まずは常温で、香りと味わいの広がりをじっくり。
ボトルごと軽く冷やして飲めば、また違った表情を見せてくれます。

閻魔
この蔵のはじまりは、大分・日田にある老松神社。
境内に湧く清らかな泉の水が酒造りに適していたことから蔵が興され、その名は社名の由来にもなっています。
この樽貯蔵タイプは、自社製麹を使い、減圧蒸留で仕上げた麦焼酎を、ホワイトオーク樽で3〜5年じっくり熟成。
グラスに注ぐと、木樽由来の淡い山吹色がやさしく輝きます。
香りは、バニラやビスケットを思わせるトースト香に、炒ったアーモンドのニュアンス。
そこにカモミールの花や白いスパイスのような繊細な香りが重なり、奥には麦由来のほのかなパン香も感じられます。
口に含むと、第一印象はとてもまろやかでふくよか。
なめらかに広がり、余韻には樽の香りが心地よく長く続きます。
おすすめは食後にストレートでゆっくり。
あるいはオン・ザ・ロックで、香りの立ち上がりを楽しむのも一興です。

銀座のすずめ
清酒「八鹿(やつしか)」の蔵元が手がける本格焼酎。
仕込み水には、大分・九重連山の伏流水を使用しています。
「銀座のすずめ」という名は、かつて銀座の街で、時を忘れて酒を酌み交わし、語り明かした大人たちの姿を“すずめ”になぞらえて名付けられました。
なかでも樫樽熟成の「琥珀」は、まさにバーカウンターがよく似合う一本。
“雰囲気で飲ませる焼酎”として評判の「銀座のすずめ」を、アメリカ・ケンタッキー州から取り寄せたバーボンウイスキー樽で約3年間じっくり熟成しています。
口当たりはまろやかで、とろみを感じるほどなめらか。
ほのかな甘みとスモーキーな香りが美しく調和し、樽熟成ならではの奥行きのある味わいに仕上がっています。
飲み方はロック、または水割りがおすすめ。
モンドセレクション最高金賞を連続受賞していることからも、その完成度の高さがうかがえます。

まとめ
樫樽焼酎は、もはや“変わり種”ではありません。
焼酎の原料の個性を大切にしながら、樽という時間を重ねることで生まれた、もうひとつの本格焼酎のかたちです。
「百年の孤独」が切り拓いた流れは、多くの蔵の挑戦へとつながり、いまではそれぞれに異なる表情を持つ樫樽焼酎が揃いました。
ウイスキーのようでいて、ウイスキーではない。
焼酎のようでいて、これまでの焼酎とも少し違う。
今夜はぜひ、グラスに琥珀色の焼酎を注いでみてください。
その一杯には、日本の焼酎が歩んできた、もうひとつの物語が静かに溶け込んでいます。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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