
【産地呼称焼酎⓸】芋焼酎を世界に押し上げる薩摩焼酎
日本各地で造られてきた焼酎は、土地の風土や歴史、文化と深く結びつきながら独自の進化を遂げてきました。
その中でも、原料や製法、産地を厳格に定め、国際的な「地理的表示(GI)」として認められているのが「産地呼称焼酎」です。
産地呼称焼酎は、単なる焼酎の種類ではなく、その土地で育まれてきた伝統と品質を国が保証する存在ともいえます。
本シリーズでは、壱岐・球磨・琉球泡盛・薩摩といった産地呼称焼酎を取り上げ、それぞれの成り立ちや定義、味わいの特徴を通して、日本の焼酎文化の奥深さをひも解いていきます。
薩摩焼酎とは|芋焼酎文化を世界へと押し上げる産地呼称焼酎
鹿児島県と聞いて、真っ先に思い浮かぶ焼酎は芋焼酎ではないでしょうか。
焼酎ブームが落ち着いた現在においても、芋焼酎は根強い人気を誇り、鹿児島はまさに“芋焼酎の本場”として知られています。
一方で、「薩摩焼酎」という名称は、意外と耳慣れないという方も多いかもしれません。
薩摩焼酎は、壱岐焼酎・球磨焼酎・琉球泡盛に続く、4つ目の産地呼称焼酎として、2005年に地理的表示(GI)の指定を受けました。
他の3つが1995年指定であることを考えると、比較的新しい存在です。
すでに確立された芋焼酎ブランドがあるにもかかわらず、なぜあえて「薩摩焼酎」として産地呼称焼酎を名のったのでしょうか。
その背景には、薩摩という名称の国際的なブランド価値をさらに高める狙いと、厳格な基準を自らに課すことで、焼酎全体の品質向上を目指す強い意志がありました。
薩摩焼酎の定義と特徴
薩摩焼酎の定義は、明確かつ厳格です。
米麹、または鹿児島県産さつま芋を使用した芋麹を用い、鹿児島県産のさつま芋と水を原料としたもろみを、鹿児島県内(奄美市および大島郡を除く)で、単式蒸留器によって蒸留・瓶詰めした焼酎のみが薩摩焼酎と名乗ることを許されています。
つまり、薩摩焼酎とは、原料・水・製造地のすべてを鹿児島に限定した芋焼酎なのです。
この厳しい条件は、国内向けの品質保証にとどまらず、WTOに認められた地理的表示として、海外市場においても強力な武器となります。
世界的に見れば、シャンパーニュやボルドーと同じ土俵に立つ存在。それが薩摩焼酎です。
指定が遅れたからこそ、世界展開を強く意識した産地呼称焼酎になったともいえるでしょう。
薩摩の歴史と芋焼酎の歩み
鹿児島の土地は、火山灰土壌が広がり、決して農業に適した環境ではありませんでした。
しかし、17世紀にさつま芋が伝来したことで状況は一変します。
やせた土地でも育つさつま芋は、薩摩の人々の命を支え、やがて焼酎の原料としても欠かせない存在となりました。
焼酎の蒸留技術自体は16世紀にはすでに伝わっており、鹿児島県伊佐市の八幡神社からは「焼酎」の文字が記された日本最古級の木札も発見されています。
その後、明治・昭和と時代を重ねるなかで、薩摩の焼酎造りは進化を続け、現在では多彩な酒質と表現力をもつ焼酎が数多く生み出されています。
力強く、香り高いものから、軽快で飲みやすいタイプまで、その味わいの幅広さこそが薩摩焼酎の大きな魅力。
この多様性は、海外の消費者にも理解されやすく、国際市場においても高いポテンシャルを秘めています。
世界へ向かう薩摩焼酎
逆境をはね返し、新たな道を切り開いてきた薩摩隼人の気質は、薩摩焼酎にも色濃く反映されています。
人口減少や酒類消費の変化という課題に直面する今だからこそ、薩摩焼酎は国内にとどまらず、世界を見据えた歩みを進めています。
産地呼称焼酎という確かな裏付けとともに、薩摩焼酎が世界のバーやレストランで語られる日も、そう遠くはないのかもしれません。
まとめ文
薩摩焼酎は、厳選された鹿児島県産の原料と伝統的な製法を守りながら、産地呼称焼酎として新たな価値を獲得した芋焼酎です。
その背景には、鹿児島の厳しい自然環境を乗り越えてきた歴史と、品質向上を追求し続ける造り手たちの強い意志があります。
地理的表示という国際的な評価を得たことで、薩摩焼酎は日本国内にとどまらず、世界市場においても他の蒸留酒と肩を並べる存在となりました。
多様で明るい味わいを持つ薩摩焼酎は、鹿児島の焼酎文化そのものを体現する存在。
産地呼称焼酎「薩摩焼酎」が、これからどのように世界へ広がっていくのか。その歩みは、今後ますます注目されていくことでしょう。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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