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甲類焼酎を支える連続式蒸留機とは何か

甲類焼酎を支える連続式蒸留機とは何か

酎ハイやレモンサワーとの相性が良い甲類焼酎は、連続式蒸留機という蒸留機で製造されます。
極限まで、不純物を取り除く製法なので、クリアでクセのない味わいが実現します。

連続式蒸留機で作られたお酒は、「安い」「酔うため」といったイメージがあります。
ただ、その誕生には時代の要請があったのをご存知ですか?
この記事では、そんな連続式蒸留機の歴史について、ご紹介したいと思います。

醸造酒から蒸留酒へ

甲類焼酎を理解するうえで欠かせない存在が、「連続式蒸留機」です。
この蒸留技術は、日本独自に生まれたものではなく、近代ヨーロッパの蒸留酒の歴史と深く結びついています。

古くからお酒は、人々の生活と切り離せない存在でした。
古代から中世のヨーロッパにおいて、飲まれていたのは、果実や木の実を原料とした醸造酒が中心でした。
特に、醸造酒であるワインが古代から飲まれていたのは、知られていますよね。

しかし15世紀末頃になると、醸造酒を蒸留する技術が広まり、蒸留酒が脚光を浴びます。
「生命の水」とよばれ、ペストが猛威をふるった時には医薬用としても活躍しました。
また、大航海時代になると、長い船旅において腐敗しやすい醸造酒よりも。蒸留酒が重宝されました。

単式蒸留から連続式蒸留へ

従来の蒸留は、発酵液を釜に入れ加熱した後、蒸気を急速冷却して液体を集める方法。
これは現在「単式蒸留」と呼ばれて、蒸留の基本的な製法です。

19世紀に入ると、この蒸留方法に大きな転換点が訪れます。
発酵液を連続的に供給しながら蒸留を行い、アルコール度数を高めつつ不純物を除去する、そんな画期的な製法が考案されたのです。
これが「連続式蒸留機」です。

連続式蒸留機の登場により、蒸留は一気に効率化・工業化されました。
蒸留器はもはや職人の手仕事の道具ではなく、安定した品質を大量に生み出す“機械”へと進化したのです。

なぜ連続式蒸留機が求められたのか

この技術革新の背景には、原料不足と酒税の問題がありました。
大麦やとうもろこしといった食物を酒造りに使いすぎることは、食糧事情を圧迫します。
農業技術が未発達だった時代は収穫量が安定せず、凶作の年には酒造りに原料を回すことで、食糧不足を招くおそれがあったためです。

そのため、酒の製造はしばしば国家の管理対象となり、厳しい課税が課せられてきました。

そこで、注目されたのが連続式蒸留機だったのです。
砂糖を精製した際の副産物である廃糖蜜など、さまざまなデンプン原料を使用できる点で、酒造業者にとって大きな利点がありました。
不純物は極限まで除去されるので、デンプンを含む食物なら原材料にこだわる必要がなかったからです。

効率よく、高純度のアルコールを得られる連続式蒸留機は、近代社会の要請に極めて合致していたのです。

日本における「新式焼酎」と甲類焼酎の誕生

日本でも、同様の流れが見られます。
米不足の時代、政府は米を使わない酒類の製造を奨励し、従来の単式蒸留による焼酎とは異なる連続式蒸留機で作られたお酒が登場しました。
開発した大正期には、「新式焼酎」とよばれ大変な人気を博しました。
これが、現在の甲類焼酎の原型です。

単式蒸留で造られる焼酎は、のちに乙類(本格焼酎)と呼ばれるようになります。
一方、連続式蒸留機を用いて造られる焼酎は、甲類焼酎として位置づけられました。

連続式蒸留機がもたらした甲類焼酎の特徴

連続式蒸留機によって造られる甲類焼酎は、不純物が極めて少なく、クセのないクリアな味わいが特徴。
そのため、酎ハイやカクテルなど、割って飲むスタイルに適しており、現代の飲酒文化の中で広く親しまれています。

大量生産と品質の安定性を可能にした連続式蒸留機は、日本のアルコール産業の発展を支え、甲類焼酎というジャンルを確立させました。

甲類焼酎を知ることは、蒸留酒の進化を知ること

甲類焼酎の歴史をたどると、それは単なる酒の話ではなく、技術革新と社会の要請が交差する近代史そのものだと分かります。
連続式蒸留機は、お酒を「日常に寄り添う酒」へと変えた存在なのです。
決して「安い」「酔うため」だけのお酒ではないとお分かりいただけたでしょうか。

この視点で甲類焼酎を味わうと、その透明な一杯の奥に、長い蒸留技術の旅路が見えてくるはずです。

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