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焼酎に「級」がなかった理由とは?かつての酒類「等級制度」と税率の格差

焼酎に「級」がなかった理由とは?かつての酒類「等級制度」と税率の格差

現在の日本では、お酒のラベルに「特級」や「一級」といった表記を見かけることはありません。
しかし、1989年から1992年にかけて廃止されるまで、日本には酒税法に基づいた「等級制度」が存在していました。

今回は、かつてのお酒の格付けがどのように決められ、なぜ焼酎には等級がなかったのか、その歴史的背景を紐解きます。

かつての「等級制度」と贅沢税の仕組み

かつて清酒(日本酒)、ウイスキー、ブランデーには、「特級・一級・二級」という等級が定められていました。
この制度の根底にあったのは、お酒を「富裕層が飲むもの」と「庶民が飲むもの」に分けるという階級的な考え方です。

・特級: 税率が最も高く、高級酒として扱われる
・二級: 税率が低く、大衆向けとして扱われる
・従価税(贅沢税): 一定価格を超える高級酒には、さらに高い税率が課される

このように、お酒の種類や価格によって細かく税率を変える方式は、専門用語で「分類差等課税制度」と呼ばれていました。
国の建前として、「贅沢品には高い税金を、日常品には低い税金を」という発想が反映されていたのです。

なぜ焼酎には「級」が存在しなかったのか

清酒やウイスキーに等級があった一方で、大衆酒の代表である焼酎には等級制度も従価税もありませんでした。

焼酎にも「甲類」と「乙類(本格焼酎)」の区分はありますが、これは品質の優劣ではなく、製造方法(蒸留方式)の違いによるものです。

◆アルコール1度あたりの酒税比較(当時の目安)
当時の税率をアルコール1度・1リットルあたりで換算すると、その差は歴然でした。

お酒の種類1度あたりの税金
ビール(4度の場合)32円40銭
清酒(二級)5円72銭
ウイスキー(二級)4円00銭
焼酎乙類(25度)1円49銭

焼酎の税金が圧倒的に安かった理由は、当時の国(役人)が「焼酎は労働者が飲む大衆酒であり、贅沢品にはなり得ない」と判断していたためだと考えられます。
皮肉なことに、この「大衆酒」というレッテルのおかげで、焼酎は極めて安価に楽しめるお酒として守られてきた側面もありました。

不透明だった清酒の格付け審査

清酒の等級制度は、実は非常に複雑でグレーな運用がなされていました。

新しいお酒が造られた時点では、すべて「二級酒」です。
それを「特級」や「一級」として売りたい場合、醸造家は国税局が管轄する「酒類審議会」の品質鑑定を受けなければなりませんでした。
しかし、ここには大きな課題がありました。

1.高い酒税の義務: 一度「特級」に認定されると、売れ残ったからといって安く売ることは許されず、高い税金を納める義務が生じます。
2.大手優位の構造: 販売力や銘柄力の弱い地方の小さな蔵元は、高い税金のリスクを恐れて認定を避けざるを得ませんでした。
3.画一的な酒質: 審査を通過するために、多くの酒蔵が「お上(大蔵省)好みの味」を目指すようになり、個性が失われる結果を招きました。

中には、豪華なボトルに入れただけで中身の価格の1.5倍もの税金がかかる「超特級」のような仕組みもあり、消費者は「高い税金を払って高級な雰囲気を味わっている」という幻想を買わされていた面も否定できません。

ウイスキー・ブランデーの「混ぜ物」文化

ウイスキーやブランデーも同様に、特・一・二級に分類されていました。
当時の「二級ウイスキー」は、原酒をわずかしか使わず、原料アルコールを水で薄め、カラメルで着色し、砂糖などで味を整えたものが主流でした。

ブランデーにいたっては、原酒に「廃糖蜜」を原料としたアルコールを混ぜるほどランクが下がるという、日本独自の特異な分類が行われていたのです。

時代は変わり、焼酎は「選ばれる酒」へ

「金持ちが飲もうが、庶民が飲もうが、焼酎は焼酎である」
そんな平等な立ち位置にあった焼酎は、等級制度という縛りがなかったからこそ、独自の進化を遂げることができました。
30年以上前にこの制度は廃止されましたが、当時の「高級=高税率」という固定観念がなくなった今、私たちは純粋に「味」で酒を選べる幸せな時代にいます。

かつて「労働者の酒」と低く見積もられていた焼酎が、今や世界に誇る蒸留酒として評価されているのは、歴史の面白い逆転劇と言えるかもしれません。

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