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本格焼酎の原点|昔の焼酎はどう造られていたのか

本格焼酎の原点|昔の焼酎はどう造られていたのか

伝統と革新のあいだで発展してきた酒造り

酒の世界では、長い年月を経たものほど価値があると考えられる傾向があります。
伝統的な製法や昔ながらの味わいに高い評価が与えられるのもそのためです。
一方で、社会の発展とともに酒造りの技術も大きく進歩してきました。
製造設備の改良や醸造技術の発展により、現在では高品質の酒を安定して大量生産することが可能になっています。

しかし、酒の世界では技術の進歩がそのまま酒の価値の向上につながるとは限りません。
効率化や合理化が進みすぎると、酒質の画一化が起こり、多様な酒文化が失われる可能性もあるからです。

このように、酒造りは常に伝統と革新のバランスの中で発展してきました。

本格焼酎の発展を支えた技術革新

本格焼酎もまた、さまざまな技術革新によって発展してきました。
とくに大きな転換点となったのが、大正時代以降に定着した「二次仕込み法」です。
また、沖縄から導入された黒麹菌の存在は、焼酎造りに大きな影響を与えました。

これらの技術によって発酵の安定性が高まり、サツマイモだけでなく、麦・米・そばなど多様な原料を使った焼酎造りが可能になりました。

また近年では、減圧蒸留や精製技術の進歩によって、軽やかな味わいの焼酎も生まれ、市場の広がりに大きく貢献しています。

本格焼酎の基本製法は今も変わらない

技術の進歩によって焼酎造りは大きく変わったように見えますが、実は本格焼酎ほど基本製法が変わっていない酒も珍しいといわれています。

本格焼酎の製法は様々ですが、基本的には、
1.クエン酸を生成する麹菌を使用する
2.一次もろみと二次もろみをつくる「二次仕込み法」
3.単式蒸留機による蒸留

これらの基本的な製法は、大正時代以降ほとんど変わることなく現在まで受け継がれてきました。

酒蔵によっては百年前の製法を忠実に守り続けるところもあれば、基本を守りながら設備や工程を改良する蔵もあります。
しかし、どの焼酎にも共通しているのは、この伝統的な基本製法へのこだわりです。

明治以前の焼酎造り「ドンブリ仕込み」とは

では、この現在の基本製法が確立する以前、焼酎はどのように造られていたのでしょうか。

明治以前の焼酎造りでは、現在のような二次仕込み法はまだ存在していませんでした。
当時は清酒と同じ黄麹菌を使用し、主原料と麹を同時に仕込む「ドンブリ仕込み」と呼ばれる方法が行われていました。

この方法では、現在の酒母にあたる一次もろみが存在せず、麹に含まれるわずかな酵母によって発酵が進みます。
しかし黄麹菌はクエン酸を生成しないため、防腐作用が弱く、温暖な南九州の気候では腐造の危険性が高いという問題がありました。

焼酎造りを支えた乳酸菌の働き

この問題を支えていたのが、乳酸菌の働きでした。
発酵の初期段階で乳酸菌が増殖し、乳酸を生成。
この乳酸がもろみを酸性環境に保つことで雑菌の繁殖を抑え、発酵を守る役割を果たしていたのです。

その後、酵母が増殖してアルコール発酵が進むと、アルコールの作用によって乳酸菌の増殖は自然に抑えられます。
こうして適度な酸に守られながら発酵が進む仕組みでした。

なお、乳酸もクエン酸と同様に蒸発しない酸のため、蒸留によって焼酎の中に残ることはありません。

明治時代の酒造改革と焼酎製法の転換

明治時代になると、日本の酒造りは大きな転換期を迎えます。
政府は酒を重要な税収源として位置づけ、酒造業には品質の安定と効率的な生産が求められるようになりました。
腐造による損失は許されず、酒造技術の科学的研究が進められていくのです。

この流れの中で、二次仕込み法と黒麹菌を中心とした現在の焼酎製法が確立されていくことになります。
一方、西洋の科学技術も導入され、醸造方法の見直しが進みます。

先人の知恵が生んだ焼酎の伝統

明治以前に行われていた古い焼酎製法は、現在ではほとんど姿を消しています。
しかし、乳酸菌の働きを自然に利用しながら発酵を進めるなど、当時の酒造りには科学的知識が体系化される以前の経験と知恵に基づく高度な技術が存在していました。

限られた環境の中で、知恵と工夫を重ねながら焼酎造りを続けてきた先人たちの努力こそが、現在の本格焼酎文化を支えているのです。

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