未来へと続く新しい焼酎とは ?「じゃがいも焼酎 MOTO」をご紹介します!
目次
大石酒造は総勢10名ほどの小さな酒蔵
大石酒造は、鹿児島県の北西部に位置する阿久根市にあります。
当主自らが杜氏を務める、総勢10名ほどの小さな酒蔵。
芋の選定から芋きり、瓶詰め、ラベル貼りなど手作業で大切に造られる芋焼酎は、サツマイモ本来の味わいや香りが堪能できると多くのファンに親しまれています。
明治32年(1899年)の創業以来、「本物の味」と「最高の品質」をキーワードに、徹底した原料の選別と品質管理にこだわっています。
それは、長い焼酎造りの工程において、一つ一つの作業をごまかさず、丁寧に誠実に、心を込めて進めていくということ。
小さな蔵元・少量生産ならではの「こだわり」によって、高品質の焼酎造りを続けています。
五代目・当主の大石啓元氏 ※大石酒造様ご提供
大石酒造のかぶと釜蒸留器
大石酒造には、伝統的な製法である「かぶと釜蒸留器」で造られた焼酎があります。
かぶと釜蒸留器というのは、明治時代まで主流だった蒸留機。
しかし、焼酎を製造するのに大変な時間と手間がかかるため、近代に入ると敬遠されるようになりました。
今ではほとんど見かけることがなくなったこの蒸留機を、五代目・当主の大石啓元氏が復元。
蔵を継ぐ前にエンジニアとして活躍していた大石啓元氏は、古い文献を読み解き自ら設計図を作成したといいます。
「かぶと釜でできた美味しい焼酎を、できるだけ多くの人に味わってもらいたい」という一心で焼酎を開発。
ほのかな木の香りが心地よく、スッキリした優しい甘みを感じる焼酎として、高い評価を獲得することになります。
「本物の味」を追求する蔵元のこだわりが、かぶと釜蒸留器を復元させたのです。
かぶと釜蒸留機 ※大石酒造様ご提供
レギュラー酒はシロユタカを使用
蔵元は、少量生産ながら多彩な焼酎を造っています。
創業から伝わる代表銘柄である「鶴見」が存在感を放つ一方で、かぶと釜蒸留器を使用した「かぶと鶴見」や種麹に黄麹を使った「鶴見黄麹」などの銘柄が多数ラインナップ。
一方、これらの銘柄に共通しているものがあります。それはサツマイモの品種。
鹿児島の芋焼酎の品種といえば黄金千貫(コガネセンガン)が有名ですが、蔵元のレギュラー酒には、地元で収穫される白豊(シロユタカ)が使用されているのです。
これは阿久根ではでんぶん加工が盛んであったため、でんぷんの原料として多く白豊が栽培されていた歴史的な背景があります。
白豊は、「豊かな収穫を呼ぶ白い芋」という意味を持ち、すっきりとした甘さをもつ淡麗な味わいが特徴。
白豊を主原料に使っているのは、土地のものを土地で醸す「最高の品質」への最適格といえそうです。
レギュラー酒はシロユタカを使用 ※大石酒造様ご提供
昔ながらの甕を通じて「最高の品質」を試行錯誤
大石酒造では、昔ながらの甕を使って仕込みをしています。
麹と主原料、水を加えて醪(もろみ)を作る仕込みは、焼酎の酒質を大きく左右するといわれる大切な工程。
今では、ほとんどの焼酎蔵は、仕込みにステンレス製のタンクを使うのが一般的です。
甕の容量は約900リットルのため、ステンレス製大容量タンクと比べて、きめ細かな管理が可能。
甕は土を焼いてつくる陶器製のため、通気がよく、味がまろやかに仕上がるといわれています。
甕を使った仕込みには、長い歴史があります。
木桶のように腐ることもなく、熱伝導率が良いので、焼酎造りの仕込みには欠かせない道具でした。
世代の異なる造り手達は、この甕を通じて「本物の味」と「最高の品質」を試行錯誤したといいます。
当蔵ならではのまろやかな味わいの決め手は、伝統を伝える甕の使用にあるのです。
昔ながらの甕を使用 ※大石酒造様ご提供
代表銘柄である鶴見とは
大石酒造の代表銘柄は、「鶴見」です。
「鶴見」というネーミングは、初代の大石長次郎氏が、シベリアから飛来してきた鶴を見ながら焼酎を飲むのが好きだったことに由来しています。
近接する出水市は日本最大のツルの渡来地。
毎年10月中旬から12月頃にかけて、1万羽を超えるツルが越冬のためシベリアから渡来し、3月頃まで滞留するといいます。
代表銘柄である鶴見 ※大石酒造様ご提供
そんな逸話のある「鶴見」の味わいは、洗練された軽快さというよりも、どっしりとした重厚さが身上。
昔から漁業が盛んな土地のため、淡麗な酒よりも濃い味付けの食事に合う、昔ながらの芋焼酎です。
蔵元には、昭和12年のカラーラベルが現存。
印象的なそのラベルは、当時の鑑評会で金賞を受賞した記念に作られたものといわれており、現在でも大石酒造のシンボルとして使われております。
最近では、酒販店とコラボした復刻版も発売されています。
昭和12年頃の「鶴見」のラベルイメージ ※大石酒造様ご提供
じゃがいも焼酎「MOTO」の開発
今回ご紹介するのは、じゃがいも焼酎「MOTO」です。
伝統的な焼酎蔵である大石酒造が、じゃがいもを原料に選ぶのは意外と思われるかもしれません。
きっかけは、阿久根市を拠点にするデザインユニットからの相談。
特産品の企画をする彼らから、地元のじゃがいもを使った焼酎を作りたいという思いを打ち明けられたのです。
北薩といわれる鹿児島県の北部エリアは、じゃがいもの一大生産地。
特に、阿久根市に隣接する長島町は、赤土を活かした「福崎ポテトファーム」というブランドが有名。
その商品企画によって、じゃがいも焼酎「MOTO」が生まれたのでした。
『福崎ポテトファーム』のじゃがいもを、長期熟成を行うことで、素材や土地といったテロワールを表現。
「MOTO」は ”まろやか” で クセのない”すっきり” とした味わいに仕上がっています。
じゃがいも焼酎「MOTO」
大石恭介専務取締役の「MOTO」への想いとは
2022年11月に開催された「鹿児島本格焼酎PRIDEフェア」の試飲会において、大石酒造の大石恭介専務取締役兼博士にインタビューさせていただきました。
大石恭介専務取締役の「MOTO」への想いをご紹介します。
SHOCHU PRESS編集部(以下、編集部) : 「MOTO」を開発された経緯をお聞かせください。
「大石酒造」専務取締役 大石恭介さん(以下、大石さん) : 一つは今回の企画(鹿児島本格焼酎PRIDEフェア)でお声がけいただいたというのがあります。「何か新しいものがありますか」と言われまして。ウチとしては、ちょうどこの「MOTO」を売りに出したいタイミングだったのです。2022年で熟成から3年目になって、古酒として出せるということもありました。じゃあ、3年が経過して古酒にとしてそろそろデビューさせようかな、と思っていた矢先だったんです。そういう良いタイミングでもありました。
大石酒造 大石恭介専務取締役兼博士
大石さん : 一方、「MOTO」というのは、もともと我々が直接販売していたものではなく、地元の阿久根市のデザイン会社のPBとして製造しておりました。オンラインのみで販売されていたんですけど、その会社が2022年に卸免許を取得したんです。それで、他のところにも卸して出せるようになり、製造した我々からも販売させていただくということでスタートしました。ちょうど2022年10月からです。まあ、新しい試みではあります。
編集部 : 「鶴見」が代表銘柄の焼酎蔵である大石酒造さんとしては、意外な商品開発かと思います。
大石さん : そうですね。焼酎って、いろんな造り方や原料があります。飲み方も、お湯割りからソーダ割りからいろんなものがあると思うんですね。食度のペアリングまで考えると、組み合わせは、”ほぼ無限”と言っていいと思います。その中で、例えば、「芋焼酎といえば、昔からの鶴見の味だよね」というのは考え方としてあると思います。しかし、焼酎の無限の可能性を狭めように、「芋焼酎はこういうものだ」と限定してしまうことはもったいないと思います。
今は、フレーバー焼酎と呼ばれるれるフルーティーな香りの焼酎も出てきています。昔ながらの芋焼酎のイメージとは異なりますが、それはもちろんあっていいと思います。それは全く否定するつもりはありませんし、むしろどんどん挑戦していくべきだと思っています。
どこの蔵元さんも目標としてはもっと焼酎を飲んでいただきたい、焼酎というお酒を知っていただきたいというのが根底にあると思います。
「鹿児島本格焼酎PRIDEフェア」でスピーチする大石さん
大石さん : そのためのやり方として、昔からの芋焼酎を知らない方にフレーバー焼酎を飲んで、「あっ、こんな焼酎もあるんだ」ということを知っていただいくというのが第一かと。その上で、「じゃあ他にどんな芋焼酎があるのかな」という機会になれば良いと思います。そういうことを考えて蔵元の皆さんは、商品開発をされているのだと思います。
編集部 : 貴重なお時間をありがとうございました。
大石さん : ありがとうございました。
「MOTO」への期待
「MOTO」の味わいや香りは、伝統に裏付けされた技術によるもの。
どのような原料であっても大石酒造の「本物の味」と「最高の品質」がブレることはありません。
今後のじゃがいもを原料にした焼酎の指標になることでしょう。
「MOTO」は、大石酒造の伝統に則りながら未来へと続く新しい焼酎として、多くのファンとの出会いに期待できそうです。
「MOTO」は「Makuake」で購入可能です。
ぜひお試しください。
【銘柄データ】
〈じゃがいも焼酎 MOTO 2019 レギュラー〉
品目:本格焼酎
内容量:720ml
原材料名:じゃがいも(鹿児島県長島町産)・米麹(国産米)
アルコール度数:32度
〈じゃがいも焼酎 MOTO 2023 古酒〉
品目:本格焼酎
内容量:720ml
原材料名:じゃがいも(鹿児島県長島町産)・米麹(国産米)
アルコール度数:34度
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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