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大正・昭和の焼酎史|戦争と不況の時代を生き抜いた庶民の酒

世界の蒸留酒の歴史と焼酎のルーツ|焼酎は“生命の水”の系譜にあった

焼酎は日本独自の酒と思われがちですが、その技術的ルーツをたどると、中東・ヨーロッパ・アジアへと広がる世界の蒸留酒の歴史に行き着きます。
ワインやビールなどの醸造酒が先に生まれ、そこから「蒸留」という技術が誕生したことで、ブランデー、ウイスキー、ウォッカ、テキーラ、ラム、そして焼酎が生まれました。

本記事では、
・蒸留酒はどこで生まれたのか
・世界の蒸留酒はどう発展したのか
・その流れの中で焼酎はどう位置づけられるのか

を軸に、「世界の酒の歴史の中の焼酎」をわかりやすく解説します。

世界の酒は「醸造酒」と「蒸留酒」に大別される

世界の酒類は大きく
・醸造酒(発酵のみ)
・蒸留酒(発酵+蒸留)
に分けられます。

醸造酒の誕生は人類史とともにある

ワイン、ビール、日本酒、中国の黄酒などの醸造酒は、人類が農耕を始めた時代から存在していました。
メソポタミアでは紀元前4000年頃の粘土板にビール醸造の記録が残り、シリア周辺では約8000年前のワイン圧搾器具も発見されています。

酒は宗教儀礼や医療とも深く結びつき、古代ギリシアでは酒神ディオニュソス信仰、日本では『古事記』『日本書紀』に酒造の記述が登場します。

蒸留技術は錬金術から生まれた

蒸留技術は、酒造ではなく錬金術・香油製造の分野で発達しました。
メソポタミアでは紀元前3000年頃、香油を蒸留したと考えられる土器が見つかっています。

アリストテレスは著書の中で蒸留による液体精製に言及し、アレクサンドリアでは錬金術用蒸留器「アンビック」が登場。これが後にアラビア世界へ伝わり、「アランビック」と呼ばれる蒸留器となりました。

この装置こそが、のちに酒を蒸留する技術の原型となります。

「生命の水」と呼ばれた蒸留酒の誕生

13世紀、フランスの錬金術師アルノー・ド・ヴィルヌーヴは、ワインの蒸留酒を
「eau de vie(生命の水)」
と呼びました。

ブランデーやウイスキーは当初、飲料というより「薬」「秘薬」として扱われ、
・神の水
・第五のエッセンス
・火の水
と呼ばれ、極めて貴重な存在でした。

ここから蒸留酒は「高貴で力をもつ酒」というイメージを獲得していきます。

ヨーロッパで確立された蒸留酒文化

ルネサンス期以降、蒸留酒は各地で独自進化を遂げます。

ウイスキー

スコットランドで誕生し、「ウィスゲ・ベーハー(生命の水)」が語源。
密造・樽熟成・ピート乾燥といった歴史が、スコッチの個性を形づくりました。

ブランデー

フランス・コニャック地方を中心に発展し、「高級酒」の代名詞に。
原産地呼称の概念もここで確立されます。

ウォッカ・ジン・ラム・テキーラ

各国の原料と文化を背景に誕生し、世界酒類へと成長していきました。

中東からアジアへ広がった「アラック」の系譜

一方、ヨーロッパとは別系統で発展した蒸留酒がアラックです。

中東で生まれたアラックは、
・レバノン
・イラク
・インド
・東南アジア
へと伝播し、米・ナツメヤシ・糖蜜など多様な原料で造られました。

水で割ると白濁する特徴から「ライオンの乳」とも呼ばれます。
このアラックの系譜こそが、泡盛・焼酎へと連なる東洋蒸留酒の源流になります。

アラックは中国・琉球を経て日本へzc
元の時代のに「阿剌吉酒」と呼ばれる蒸留酒が伝来し、焼酒(白酒)の原型が成立。
琉球ではタイ系蒸留酒が泡盛の祖となりました。

16世紀、ポルトガル人の記録に登場する薩摩の酒「オラーカ」は、日本で造られていた蒸留酒=焼酎を指した可能性が高いと考えられています。
つまり焼酎は、中東 → インド → 東南アジア → 中国 → 琉球 → 日本という蒸留文化の大動脈の末端に位置する酒なのです。

かつて焼酎は「高級酒」だった

16世紀の日本では、焼酎は一般酒よりも貴重な蒸留酒でした。
ところが江戸時代以降、酒粕や腐造酒を蒸留する文化が広がり、
・粕取り焼酎
・廃物利用の酒
というイメージが定着します。

さらに明治期の連続式蒸留機導入と戦後の粗悪酒の氾濫により、焼酎は長く「安酒」「下級酒」と見なされる時代が続きました。

世界の蒸留酒史から見た焼酎の本質

本来、焼酎は
・ブランデー
・ウイスキー
と同じ「生命の水」の系譜に連なる蒸留酒です。

世界では蒸留酒が高級文化として磨かれた一方、日本では制度と歴史の偶然が焼酎の価値を長く覆い隠してきました。

しかし現代、本格焼酎は再び
・原料
・麹
・蒸留
・熟成
という酒本来の魅力で評価される時代に入りつつあります。

まとめ

焼酎はローカル酒ではありません。
人類が蒸留技術を手にしたその瞬間から続く、世界蒸留酒史の一系統です。

「生命の水」と呼ばれた蒸留酒の思想は、形を変えながら日本に届き、焼酎となりました。
世界の酒の文脈で焼酎を見直すと、その文化的価値とポテンシャルは、まだ伸びしろしかない酒だといえるでしょう。

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