焼酎で消毒が出来るって本当?
焼酎の成分はエチルアルコールと水。無色透明なのでもあり、雑味成分が少ないです。
そのため、消毒用として使えると考えている方も多いはず。
今回は、焼酎が消毒用として使えるかどうか検証してみました。
目次
焼酎の一般的なアルコール度数は?
市販されている焼酎のアルコール度数は、ほとんどが20度か25度です。
アサヒの焼酎甲類「大五郎」や、三和酒類の本格麦焼酎「いいちこ」など、20度と25度を両方揃えている銘柄も多いですね。
では、「20度」「25度」という数字が焼酎のアルコール度数のルールとして規定されているかというと、そうではありません。
酒税法を見ると、連続式蒸留機で蒸留した連続式蒸留焼酎(焼酎甲類)はアルコール分36度未満、単式蒸留機で蒸留した単式蒸留焼酎(本格焼酎/焼酎乙類)はアルコール分45度以下と規定されています。
確かに20度と25度が圧倒的に多いのですが、例えば「いいちこ」発売40周年を記念して作られた「iichiko 40」はアルコール分40度ですし、宮崎本店の人気焼酎(甲類)の「キンミヤパック」には35度もラインアップされています。
60度の花酒
花酒は、日本最西端の島・与那国島だけで製造が許可されている蒸留酒です。
アルコール分45度以下の泡盛と同じ原料・製法で作られますが、アルコール度数が60度と高いので、酒税法ではスピリッツに分類されます。
与那国島には、花酒を使った「洗骨葬」という風習があるそうです。遺体を埋葬する際に、花酒2本を墓に入れ、7年後に取り出して1本の花酒で洗骨したり火をつけて燃やしたりします。お骨を墓に戻した後、もう1本の花酒は、集まった人たちに振る舞われます。お酒が飲めない人は、花酒を薬として身体の不調のある部分に塗り込んで、故人に治癒を祈るのだそうです。
他の蒸留酒
蒸留酒は、醸造酒を更に蒸留することでアルコールを抽出したものです。
このため、日本酒やワイン、ビールなどの醸造酒と比べてアルコール度数は高くなります。
世界の高アルコールの蒸留酒として知られる銘柄TOP3は、
1.ポーランドのウォッカ「スピリタス」(96度)
2.アメリカのウォッカ「エバークリア」(95度)
3.イタリアの薬草が主体のリキュール「ゴッチェ・インペリアル」(92度)。
ウイスキーやブランデーも、蒸留酒の代表例ですね。
焼酎は、江戸時代には消毒用だった
江戸時代は飲用ではなかった?
現存する最古の焼酎の記述、1559年に記された神社の落書きによると、この頃にはすでに南九州で焼酎が飲まれていました。
江戸時代には、本州でも日本酒の酒粕を使った粕取焼酎が作られ、九州全域で米や麦などの穀類を使ったモロミ取焼酎が作られていたようです。専ら自家製で、焼酎は“庶民の酒”として親しまれていました。
江戸時代中期以降は、医薬用としても使われており、武士の常備薬として重宝されていたそうです。
刀傷用として使用されていた
戦国時代、刀傷や槍傷などに治療を施す金創治療が発達しました。
金創医たちは、負傷した兵士を止血し、気付薬を飲ませて体力を保持し、呪文を唱えて矢じりを摘出したり傷口を縫い合わせたりしたそうです。
金創治療における傷口を消毒する手段の一つとして、焼酎による洗浄がありました。
当時は酒税法によるアルコール度数の制限もありませんから、使われていた焼酎は、今と比べて高濃度の殺菌効果の高い焼酎だったのでしょう。
時代は下って明治10年、西郷隆盛が西南戦争に臨む際、戦場での“栄養ドリンク剤”兼、負傷した兵士の消毒液として、今の鹿児島県姶良市にある白金酒造の石蔵にあった焼酎を買い占めたとの言い伝えも残っています。
消毒には消毒よりも、消毒液を
実際の消毒液
このように、医療用消毒液が発達する以前、焼酎が消毒液の代用として使われてきた歴史がありました。このため誤解されがちですが、今日の焼酎を消毒液として使用することはできません。
厚生労働省のホームページには、「新型コロナウイルス消毒・除菌方法」のひとつとして「アルコール消毒液」が挙げられています。
ここでは、手や指などのウイルス対策として有効なアルコールは、「濃度70%以上95%以下のエタノール(※60%台のエタノールによる消毒でも一定の有効性があると考えられる報告があり、70%以上のエタノールが入手困難な場合には、60%台のエタノールを使用した消毒も差し支えありません)」とされています。
今日の焼酎のアルコール度数は、先述のとおり、単式蒸留焼酎でも45度以下です。ウイルス対策として有効な60度には、遠く及びません。消毒の効果は期待できない上、焼酎に含まれる油分が消毒の効果を阻害する可能性もあります。
消毒には、専用の手指消毒剤やアルコール除菌剤といった消毒液を使いましょう。
焼酎メーカーが消毒液を発売
新型コロナウイルスの感染拡大で消毒用アルコールが不足した20年春以降、手指消毒用消毒液の代用となる高濃度アルコールを製造する酒造メーカーが相次ぎました。
厚生労働省が特例で、アルコール度数の高い酒を消毒用アルコールの代替品として使うことを認め、製造に必要な免許も簡素化されたためです。
・天盃
福岡県朝倉郡の麦焼酎蔵である天盃は、20年5月に66%の高濃度エタノール「TENPAI66」の出荷を開始しました。価格は500mlで税別1000円です。
・明利酒類
茨城県水戸市の明利酒類は、20年3月に「メイリの65%」を発売しています。価格は360mlで税別1,000円です。
これを機に同社は、大容量のアルコール製剤「MEIRIの除菌」シリーズを発売。「一般・公共に向けた取り組み・活動」として評価され、2021年度グッドデザイン賞を受賞しています。
焼酎のほかの利用法
焼酎は、消毒用としては使えませんが、他の利用法が知られています。
柿渋抜き
柿渋抜きの方法としては、干して渋みを抜く「干し柿」がよく知られていますが、焼酎を使った方法もあるのです。
焼酎を使った柿渋抜きでは、柿のヘタの部分に35度以上の焼酎を付けて、ビニール袋などで密閉し、数日間熟成させることで渋みを抜きます。
昔ながらの生活の知恵で、地方によって熟成させる期間や手順が異なるようです。呼び名も「柿の焼酎漬け」だけでなく、西日本では「あおし柿」、中国地方や関西地方では「さわし柿」など、地方ごとにさまざまな呼称があります。
焼酎ローション
焼酎を使った手作りローションや手作り化粧水のアイデアもあります。
ひとつは、保湿成分をもつ食品添加物「グリセリン」と焼酎を混ぜて作るシンプルな焼酎化粧水です。焼酎に植物を漬け込んで作る「柚子化粧水」「アロエ化粧水」「ドクダミ化粧水」なども試してみてはいかがでしょうか。
(※ただし、アルコールアレルギーのある方は注意が必要です。)
ドクダミを焼酎に浸してできた液体は、虫刺されやかゆみに効く「ドクダミチンキ」としても利用できます。
まとめ
いかがだったでしょうか。現代においては、もはや消毒の効果は望めない焼酎ですが、消毒に活用された歴史があったのですね。消毒には消毒液を使いつつ、先人の知恵から生まれた他の焼酎の利用法を是非とも試してみてください。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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