焼酎にはお米が欠かせない?! その理由を解説します
日本人にとってお米は、主食や味噌などの調味料の原料となる、最も身近な食品。
もちろん、お酒造りにも使われます。
そんなお米ですが、焼酎造りに欠かせない原料でもあるのです。
その理由を解説します。
目次
焼酎造りにお米が欠かせない理由
多くの焼酎には、お米が使われています。
お米(麹)をベースにして、多くの芋焼酎や麦焼酎、黒糖焼酎などが造られているのです。
焼酎の製造工程において、まず、一次仕込みとして麹と水だけで発酵させます。
目的は、酵母の増殖を図るため。
その後、別の容器に移して芋などの主原料を、二次掛けします。
麹と主原料を切り離すこの製法は、明治後期に開発され、二次仕込法と呼ばれています。
後に、多様な原料の応用を可能にした、画期的なもの。
この一次仕込みの麹(造り)に、多くの焼酎において、お米が使われているのです。
そのため、焼酎造りには、お米が欠かせないのです。
ただ、一部には麦全量や芋全量焼酎もあります。
お米の種類
ひとくちにお米といっても、その種類は非常に多いです。
世界で栽培され、食べられているお米は、大きく分けて「ジャポニカ米」「インディカ米」「ジャバニカ米」の3種類があります。
そのうち焼酎の原料に使われるのは、「ジャポニカ米」と「インディカ米」。
麹用のお米として
多くの焼酎造りにお米が欠かせないのは、麹用に使うから、です。
麹用のお米は、国産米である「ジャポニカ米」であることはもちろんですが、「インディカ米」であるタイ米が使われているのもポイントです。
国産米
国産米は、さまざまなタイプのお米が使われています。
有名なのは、ヒノヒカリ。
九州を中心に、中国・四国地方など西日本でよく栽培される食用米です。
食味がよく、稲が強く、収穫量も多い。
また、最近では山田錦など日本酒で使われる品種が、麹用として使われているので注目です。
代表的な銘柄は、尾鈴山蒸溜所「山ねこ」の限定商品。
タイ米に支えられている焼酎業界
タイ米は古くから、麹用のお米として使われてきました。
実は、タイはお米の世界最大輸出国。
日本は、お米の輸入制限をしていますが、タイ米だけは酒用特別枠として輸入しているのです。
タイ米は、熱に弱く、水を吸いにくいのが特徴。
そのため、精米すると割れやすくなるので、破砕されたタイ米を使用するのが一般的。
破砕米が使われる積極的な理由は、
・吸水率をよくする
・表面積が広くなり、麹菌の繁殖を促して麹の力を高める
から。
また、一説には食用にされないよう、破砕米にされていたとか。
今でも、泡盛の麹用や主原料としてはもちろん、芋焼酎の麹用のお米としてタイ米は使われています。
プレミアム焼酎「村尾」で有名な村尾酒造では、地元で親しまれている銘柄「薩摩茶屋」において、麹用にタイ米を使っています。
米焼酎について
前述の通りお米は、芋焼酎や麦焼酎などでは麹を造るのに使いますが、米焼酎では麹はもちろん、主原料に使われています。
米焼酎は焼酎の元祖?
米焼酎は焼酎の中で、もっとも古くから造られていたという説があります。
その説によると、タイ米を原料とした米焼酎がまず、沖縄から鹿児島に伝わり、それから熊本の人吉地方、球磨盆地へと伝播。
球磨盆地では稲作が盛んに行われており、そこで日本米を原料にした現在の米焼酎が誕生したといいます。
実際に、焼酎最古の資料といわれる大口市八幡神社の落書きは1559年に書かれたものですが、さつまいもが伝来したのは1698年。
この落書きの時代の焼酎は、米焼酎だったことになります。
ただ、これは一説に過ぎないので、真偽は不明です。
球磨焼酎
日本の焼酎の元祖といわれる米焼酎は、稲作が盛んだった熊本県球磨地方で生まれました。
熊本県球磨地方は、九州では例外的に肥沃な土地。
重みのある上質な穀物香と、厚みのある米だからこその味わいが特徴。
さらりとした甘味は、日本酒に勝るとも劣らない上品さといえます。
熊本県球磨地方には、焼酎蔵が27蔵あります。
それぞれが、独自の蒸留方法を採用。
そのため、同じ地城で収穫された米と汲み上げられた水を使っているとは思えないほど。
その味わいには個性があります。
1995年にWTO(世界貿易機構)から薩摩焼酎、壱岐焼酎、琉球泡盛と並んで地理的表示を認められました。
粕取り焼酎
粕取焼酎は、厳寒の冬におこなわれた日本酒造りが区切りのつく季節に、日本酒の絞り粕、つまり酒粕を主原料に造られます。
その酒粕を、蒸篭(せいろ)に入れて蒸留したものが粕取焼酎。
なので、粕取り焼酎もお米を主原料にした焼酎だといえます。
今でも、多くの日本酒蔵が粕取り焼酎を造っています。
また一方で、粕取り焼酎は、農村文化や農民生活と非常に深い関わりをもっています。
江戸中期から明治中期にかけて、さかんに造られましたが、農家にとって飲用が目的ではありませんでした。
稲作の肥料をつくるためといわれています。
造り酒屋から酒粕を買ってきて、それを煎じて粕焼酎を造り、そのときできた滓を肥料にしていたのです。
米焼酎と日本酒の違いとは
米焼酎と日本酒は、ともにお米を原料としたお酒。
それぞれの違いをご紹介します。
製造方法
焼酎と日本酒の大きな違いは、焼酎は「蒸留酒」であるのに対し、日本酒は「醸造酒」であること。
醸造酒は、果物や穀物をアルコール発酵させて、お酒を造ります。
日本酒は、原料であるお米を発酵させて造った醪(もろみ)を搾った、醸造酒です。
一方、蒸留酒は、醸造酒を蒸留して造るお酒。
原料を発酵させて醪を造るところまでは日本酒と同様ですが、蒸留によってアルコールと香り成分を抽出する点が大きな違いです。
原料米の違い
原料であるお米について、それぞれ規定はありません。
球磨焼酎においても、WTO(世界貿易機構)において土地の水を使うことが定められていますが、お米についての規定はないのです。
ただ、焼酎と日本酒では、それぞれ使うお米の傾向はあるようです。
米焼酎の場合
よく使われる品種は、「ヒノヒカリ」。
寿司米に向くといわれる、「日本晴」も好まれます。
このほか「コシヒカリ」、「あきたこまち」など、家庭でもおなじみの食用米が使われます。
日本酒の場合
日本酒の原料となるお米は、食用米を品種改良した「酒米」と呼ばれています。
代表的な品種には「山田錦」、「美山錦」、「五百万石」など。
これらは農水省から「酒造好適米」という指定を受けています。
精米歩合
精米とは「米の外側の部分を磨き落とす」こと。
米の外側の部分は、脂質やタンパク質を含みます。
日本酒では、これらが「雑昧」の原因になるとして、磨き落とします。
一般的な日本酒(本醸造酒)の精米歩合は60~70%。
対して米焼酎の精米歩合は、85~90%。
脂質やタンパク質を含む部分は、「甘さと旨みのもとになる」ので残します。
ちなみにこの精米歩合は、家庭で使う炊飯用の米と同程度です。
まとめ
いかがでしたか。
日本人に欠かせないお米。
米焼酎の主原料以外でも、麹造りの原料として大活躍なのでした。
焼酎を味わうときに感じる蒸したお米の香り。
今日は、しみじみと楽しんでください。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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