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高倉酒造ではサツマイモの仕入れは、その日の仕込み量だけの画像

芋焼酎の作り方 | サツマイモがアルコールに変わるまでをご紹介します

2022-04-29

芋焼酎の原料はサツマイモです。主な成分はデンプンと水分ですが、デンプンから突然アルコールが製造されるのではありません。それには、お酒造りの道のりがあるのです。
サツマイモがアルコールに変わるまでをご紹介します。

サツマイモがアルコールに変わるまで

サツマイモは南九州で栽培が盛んな野菜です。その野菜からどのようにして芋焼酎が製造されるのでしょうか。

麹作り

芋焼酎に限らず、野菜や穀物からお酒を作るには、原料を発酵する必要があります。発酵には糖が必要で、その糖は原料のデンプンから生み出されます。さらに糖を原料のデンプンから生み出すためには酵素が必要で、日本では古くから麹菌の酵素を利用してきました。

麹作りの目的は、サツマイモのデンプンを糖に変えるための糖化酵素を作ること、醪(もろみ)の腐敗を防ぐクエン酸を生成することです。

日本のお酒造りにおいて麹の役割は、原料のデンプンを糖に変えることです。米を噛んでいると甘味が出てきますが、これは唾液にデンプンを糖に分解する糖化酵素が含まれているためです。同様に麹菌にはデンプンを糖に変える糖化酵素があります。

ビールやウイスキーなどは麦芽に含まれている糖化酵素の働きで麦を糖化しています。焼酎や日本酒は、麹菌を利用して穀物や野菜を糖化してきました。
この麹作りの工程は、他の蒸留酒と異なる特徴です。

手作りの酒蔵では麹菌を、蒸した40度くらいのお米に散布します。それを製麹室(せいきくしつ)または、麹室(こうじむろ)と呼ばれる部屋の中で約2日間、麹菌を繁殖させます。ただ、多くの酒蔵では自動製麹機という機械が使われています。

麹菌は黒麹、白麹が主流

麹菌は黒、白、黄の3種類があります。

黒麹・・・古くから沖縄の泡盛造りに使用されてきた麹菌で、明治時代から九州の焼酎造りにも使用されるように。大量にクエン酸を含むのが特徴。

白麹・・・黒麹の変異した麹菌。クセのない味わいが人気となり、1970年代にはほとんどの焼酎が白麹を使用。

黄麹・・・古くから日本酒で使用されてきた麹菌。今でも日本酒造りにおいては主流。

黒麹と白麹は、黄麹に比べて雑菌の繁殖を抑制するクエン酸を大量に作り出します。芋焼酎は8月~12月とまだ暖かい時期に仕込むことが多く、そのため醪に雑菌が繁殖しやすい。黒麹や白麹は焼酎造りに向いているのです。

一次仕込み

一次仕込みは、麹と仕込み水、酵母を加える工程です。目的はデンプンを糖に変える酵素と、発酵に必要な酵母を大量に作り出すこと。麹と仕込み水、酵母が混ざりあったものを醪といいます。

時間の経過とともに、醪の温度は上がってきます。そのため櫂入れしたり、冷却装置を使用しながら温度を調節。約6日間かけて一次醪を造ります。

この一次醪は、酒母造りともいいます。日本酒も同じように酒母造りをします。
焼酎と日本酒の酒母造りの違いは、日本酒の一次醪は蒸米を加えますが、焼酎は蒸米を加えないことです。蒸米を加えてしまうと麹のもつ酸味が薄まり、雑菌に対して弱くなります。

約6日間の仕込み期間を経て完成した一次醪に原料のサツマイモが追加されます。

二次仕込み

一次醪と水、蒸したサツマイモを加えて混ぜ合わせます。この二次仕込みでは、一次醪で大量に作った酵素によってサツマイモのデンプンが糖に変わります。そして、同じように一次醪で大量に作った酵素の力によってその糖からアルコール発酵が始まります。

二次醪の期間は約8日間です。仕込み後3日目で醪の温度が高くなりますが、高くなり過ぎると酵母のアルコール発酵が抑制されてしまいます。焼酎の歩留まりが悪くなるため、醪の温度が32度以上にならないよう管理します。
二次醪のアルコール度数は13〜15度です。

二次醪でサツマイモを加えますが、麦や米と比べると、サツマイモは手間がかかります。麦やお米は機械で精麦、精米できますが、サツマイモの場合はすべて手作業だからです。サツマイモは土を落とし洗浄して、両端を切り落とします。もし傷みがあれば取り除きます。機械化が進んだ酒蔵でも、これらはすべて一本一本手作業で行われます。

蒸留

アルコール発酵の終わった醪は蒸留機に移動して、蒸気を吹き込みながら蒸留します。醪の温度が78・3度になると、アルコールが出てきます。最初に出てくるものは、「初垂れ(はなたれ)」または「初留(しょりゅう)」と呼ばれて、アルコール度数は60度以上あります。アルコール以外の微量成分が多く含まれます。焼酎特有の味わいは、この微量成分が深く関わっています。

蒸留直後の焼酎は原酒と呼ばれます。白濁しているのが特徴。サツマイモに含まれている脂肪分が麹の酵素によって有機酸に分解して、有機酸とアルコールが結合してエステルを作ったものです。このエステル類を総称して、フーゼル油といいます。フーゼル油は焼酎の香気を形成する主成分の一つですが、多量に存在すると表面に浮き、空気中の酸素と触れて焼酎に油臭をつけることがあります。

蒸留してくる焼酎のアルコール分は初留の後、しだいにアルコール度数か低下。末垂部分のアルコール度は8~10度になり、その原酒が調和してアルコール度数40度前後の原酒が造られます。この原酒を一般的には約3ヶ月貯蔵・熟成させた後、水で割って度数を調整します。このことを「割水(わりみず)」または、「加水(かすい)」といいます。焼酎の一般的な度数である25度まで、この割水という工程によって調整されるのです。

まとめ

いかがでしたか。

お酒造りの道のりとは、麹作りから一次仕込み、二次仕込みといった無駄のない製造に至る工程のこと。
また、サツマイモからアルコールが生まれるのは、麹や酵母の力があってこそ。これからは、サツマイモに思いを馳せて芋焼酎を味わいたいものです。

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