伊良コーラ・コーラ小林さんと、大山甚七商店・大山陽平専務に「コーラ酎」開発について伺いました【前編】
「伊良(いよし)コーラ」は、2018年7月に東京に誕生した、世界で初めてのクラフトコーラ専門店・専門メーカー。
2021年7月、鹿児島県指宿市の老舗焼酎酒蔵である大山甚七商店と「コーラ酎」を開発します。秘伝調合の伊良コーラスパイスと柑橘類が、本格芋焼酎に浸漬・蒸留され、クラフトコーラの芳醇なフレーバーが香るお酒として注目を集めています。
「コーラ酎」をつくるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。また、クラフトコーラと伝統的な芋焼酎のコラボとなる本企画は、どのような可能性を秘めているのでしょうか。
伊良コーラの代表・コーラ小林さんと、大山甚七商店 専務取締役・大山陽平さんにお話をうかがいました。
コーラと焼酎のそれぞれの印象
SHOCHU PRESS編集部(以下、編集部) : 今日はよろしくお願いします。まず最初に、お酒はあまり召し上がらないというコーラ小林さんですが、焼酎のイメージをお聞かせいただけますか。
伊良コーラ代表・コーラ小林さん(以下、コーラ小林さん):実は、焼酎は結構好きなんですよ。大学時代に焼酎居酒屋でバイトしていたんです。
大山甚七商店 専務取締役・大山陽平さん(以下、大山さん):それは知りませんでした。
コーラ小林さん:その店で、いろいろな銘柄があって、有名どころの焼酎も扱っていました。それまでは焼酎について詳しくは知らなかったんですけど、お客さんに提供している間に覚えていきました。
焼酎って洗練された感じがあるので好きです。醸造酒と蒸留酒では、醸造酒はフワッとした軽やかなイメージがあるんですけど、焼酎は”純粋で精製されたもの”っていうイメージがあって結構好きでした。
ラムは”サトウキビで造られている”という、はっきりしたイメージができるので好きでした。ウォッカやジンは頭の中でイメージできないという意味で得意ではなくて。特に麦と芋だと、芋焼酎の方がワクワクするので、芋焼酎は結構好きでした。
編集部:今は飲まれるのですか ?
コーラ小林さん:強くはないのですがお酒は好きだと思います。特に造っているところを見ると好きになることが多くて、奥多摩でクラフトビールを作っているVERTERE(バテレ)さんと仲良くさせていただいていて、造っている場を見て、実際そこでお土産で買って飲むと美味しさに改めて気づくというか。そこで結構、ビールが好きになったりしましたね。
編集部:大山さんは、コーラのイメージはいかがでしたか?
大山さん:砂糖が多いし、どちらかというとコーラは決して体に良いものという概念はなかったです。
コーラ小林さんと2019年秋に展示会で初めてお会いしてお話を伺った時に、「そういう概念を覆したい」と仰っていました。「お酒に垂らしたらすごく美味しくて、よく合うんですよ」とも。実際その場で飲ませてもらった時に、コーラの概念がひっくり返りました。
その時に、絶対に伊良コーラさんのコーラとお酒は、”何かができるな”と思いました。
コーラは世界で飲まれていて、知らない人はいない。一方、焼酎はまだまだ世界的には知られていない。焼酎メーカーとしては、世界中の方に焼酎を飲んでいただきたい。焼酎をコーラで割ることはしていたんですけど、待てよと。お酒側からコーラへのアプローチはないよな、というように考えたのが、開発のきっかけで。
編集部:コーラ酎は、大山さんからのご提案だったんですね。
大山さん:はい。こちらから伊良コーラさんにお願いに行きました。
伊良コーラ代表・コーラ小林さん(左)と大山甚七商店 専務取締役・大山洋平さん(右)
伊良コーラと大山甚七商店の最初の出会い
コーラ小林さん:青山ファーマーズマーケットで創業当初からに出店していたのですが、たまに中庭の小さい屋内スペースでミニイベントをやるんです。ジンのイベントとか。
当時ある時に・・・何でしたっけ?
大山さん:Juniper Tokyoという、ジュニパーベリー(※)を使った、お菓子だったり、お酒だったりスパイスだったり、そういうのを中心に扱っていたイベントです。
※【ジュニバーベリー】針葉樹「セイヨウネズ」の果実。爽やかな香りと、すっきりした風味が特徴で、ジンの香りづけには欠かせないスパイス。
コーラ小林さん:そこで、たまたま伊良コーラもJuniper Tokyoの中に1つブースを借りて、屋台を出していて。お酒関係の方が出店をされていて。
最初、大山さんのブースを見た時に、クリエイティブがとても綺麗だなと思っていました。一方で、大山さんはシュッとしていて、話しかけづらかったです。
大山さん:そうだったんですか?
コーラ小林さん:そうです。そういうイメージがあるじゃないですか(笑)その時大山さんはスーツ的なものを着ていて。
でも、やり取りが始まると意外にフランクな方で。その後、商品造りのために鹿児島県指宿に行った時も、イメージと違って。ストイックな感じと思いきや、親しみやすいところがあったりして。焼酎と似ているな、というか。
焼酎は洗練されているような蒸留酒だけど、それぞれの個性とか親しみやすいところがあるじゃないですか。大山さんは、そんな焼酎を体現している方だなと思いました。
「伊良コーラ下落合総本店」店内
コロナ禍の中でのオファーと開発
大山さん: 2019年にお会いして以来、オファーしたのが翌年2020年の5月、6月くらいの時期でした。ちょうど第1回目の緊急事態宣言の2ヶ月後のことだったので、コロナについてまだよくわかっていない、行動規制もまだビクビクしている状況で。さすがに直接、東京にオファーにいくというのが難しいものがありました。理想であれば、直接お会いしてできればなと思ったんですが。
まずは、メールと電話でオファーをさせていただいた。あの時は、2つ返事で受けていただいた。失礼だなと思いながら、いてもたってもいられなくて。
編集部:ところで伊良コーラさんにとっては、初のコラボだったんですか?
コーラ小林さん:コラボでいうと麺屋武蔵さんと「コーラつけ麺」とか、丸山珈琲さんと「コーヒーコーラ」を作ったりとか。結構やっていて。ただ、ユーザー目線で、自分がお客さんだった時に、飲んだり食べたりしたいなっていう企画をやるようにしていました。
編集部:お酒のコラボは、初めてだったんですね。
コーラ小林さん : お酒という意味では、初めてでしたね
編集部:コーラとお酒のコラボ商品というと、甲類をイメージしがちです。そんな中、あえてサツマイモとコーラの組み合わせにした意図をお聞かせください。
コーラ小林さん:その時は、大山甚七商店さんでクラフトジンを作られているタイミングで。ジンとコーラみたいな話もあったんですよ。ただ、大山さんのベースというのは、やっぱり芋焼酎だと考えていて、「絶対、芋焼酎の方がいいです」と。
味の組み合わせは工夫して修正とか、進化させられるものだけど、大山さんの焼酎蔵というベースの根っこの部分は変えられない、歴史があると思ったので、そこに挑戦してみようと思ったんです。
編集部:開発についてはいかがでしょうか。コーラ酎の蒸留は3回されているのですよね。
大山さん:造りとしては、3回蒸留をしています。1回は芋焼酎として蒸留して、アルコール度数を高めて2回目の蒸留をした後、そこに、コーラのスパイスを入れ、そこからもう一度、蒸留をかけます。
香りづけをして透明のコーラ・フレーバーのお酒を造るために、手間はかかっています。
伊良コーラ酎 002〈300ml/¥3,850 税込〉
ネーミングについての思い
大山さん:コーラ小林さんが言われたように、弊社の根幹は焼酎なので、ネーミングも「伊良コーラ焼酎」にするつもりでした。コーラ小林さんも同じ意見でした。わかりやすいじゃないですか。
念のために、税務署に確認に行ったら、コーラスパイスを焼酎に入れた実績がない、と。焼酎と名乗るためには酒税法上の規制があって、入れていい原料は、芋、麦、米以外は人参やワカメ、など決まりがあるのです。コーラスパイスというのは定款にないから「コーラ焼酎」とは誤認になってしまうのでダメです、と。だったら、「伊良コーラ酎」だったらいいですか? と。税務署の酒税担当には、何度か確認に行きました。
結局それならいいです、っていうので、「伊良コーラ酎」になりました。本当は「伊良コーラ焼酎」がよかったね、っていう思いは今でもあります。
編集部:最初の出会いが2019年7月で、最初のお披露目はいつですか?
大山さん:最初にお披露目したのが、2020年7月の新宿伊勢丹のポップアップイベントでした。その当時、ポットスチルがまだなくて、焼酎の蒸留機で作っていたので、よく覚えています。
編集部:そうすると、商品企画から発表までのリードタイムは1年ということですか?
大山さん:いやいや。すごく早かったですよね。
コーラ小林さん:そうですよね。
大山さん:2ヶ月くらいだったんじゃないですか。
編集部:商品の製造についてもお聞かせいただけますか?
大山さん:2019年秋のコーラ小林さんと初めてお会いした時が、実はジンの発売日だったんです。おかげさまで、まだ今ほどクラフトジンの蒸留所がなかったこともあって、初回販売はすぐに売り切れちゃったんですよ。
大山甚七商店 専務取締役・大山陽平さん
焼酎もボタニカルのひとつ
大山さん:ジンを造るのにフレッシュ・ハーブを使うんですけど、そのハーブが6,7月の間の年1回しか取れない。2020年6月を迎えて、やっと増産ができる、というので下準備をしていたんです。そして、2回蒸留したものにハーブを漬け込もうとしたタイミングで、「いや、待てよ」と。「このタイミングでコーラ酎を作らないと1年後になっちゃう」と考えて。なので、ジンも早く作りたかったんですけども、それを一つ止めて、コーラ小林さんにオファーしました。
製造に関してはスムースにできたというか。2回蒸留したベースとなる原酒の下準備も整っていたので、そこに漬け込むだけだと。
急遽、ジンのスケジュールを変えて、コーラ酎を製造したんです。”この一年は大きいな”と。
コーラ小林さん:そのジンは焼酎の設備で作られたんですか?
大山さん:はい。その時は。
コーラ小林さん:でかいやつですね。
大山さん:そのハーブちょっと待って、と。でも、もともと完成された伊良コーラさんのスパイスがあるので、それを漬け込むだけでよかったんです。漬け込んだあと、蒸留をかけたという形ですね。
ジンもそうですし、伊良コーラ酎もそうですけど、焼酎の芋のフレーバーを喧嘩させちゃいけない、と思っています。ただ一方で、焼酎感というのも大切にしたい。相乗効果で良い掛け算はないものかと。
結果、焼酎もボタニカルの一つだと考えるようになりました。そのあたりを調節する蒸留を心がけています。
編集部:出来に関しての意見の交換はありましたか。
コーラ小林さん:最初のロットについては、ある種トライアル的な考えで。コーラもそうなんですけど、MacOSと一緒でMacも10.1とか11.とかあるじゃないですか。それと同じ感じで、どんどんアップデートするものだと思っています。クオリティは一定の高いものを出しますが、最初から最高を目指さなくていいと思っています。2回目はもっとこうしたらいいよね、っていうように、修正をかけていく方が良いと思っています。そういう意味では001と002では結構違うんですよ、味が。
大山甚七商店の芋焼酎「甚七」(720ml/1,430円(税込))
進化が継続するコーラ酎
コーラ小林さん:002の方が、コーラ感は出ていています。浸漬させるスパイスも違っています。003では、コーラの絞りかすを浸漬させて作ることを考えています。今日、試作品を大山さんが持ってきていただいています。どんどん造り方も変わっていくし、味わいもどんどん変わってくものだと思っています。
編集部:これからも003、004が続くのですね。
大山さん:ただ、大量生産はしていないです。002に関しても、残り300本ないくらいなんですけど、基本、半年はかからずに在庫は売り切るようにしています。我々も作業になってしまったら、面白くない部分もありますし。
コーラ小林さんからお伺いしたことがあるんですけど、コーラも一番最初に作られたコーラと今のコーラと違っている、カスタムされているわけです。伊良コーラ酎も同じような形で進化していこうと思っているので、あまりバッと大量に造ってしまうと、やっぱりビジネスとして、在庫があるのに造るわけにはいきませんから。そういう意味では、少量生産で考えながら作っている状況です。
編集部:初回は何本作られたんですか ?
大山さん:初回は3000本くらいだったと思います。002は900本くらいです。かなり生産量を落としました。売れ行きが悪いとかではないです。改良を加えていきたいためです。
【後編に続く】
<伊良コーラ>
HP : https://iyoshicola.com
店舗情報
▶︎伊良コーラ総本店下落合 東京都新宿区高田馬場3-44-2
OPEN 11:00~17:00(営業日:土日祝のみ)
▶︎伊良コーラ渋谷店 東京都渋谷区神宮前5-29-12
OPEN 11:00~19:00(営業日:年中無休 ※年末年始を除く)
<大山甚七商店>
鹿児島県指宿市西方4657
HP : http://www.jin7.co.jp
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SHOCHU PRESS編集部
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