甲類焼酎とは?
焼酎は、「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の2つに分類されます。1949年に制定された酒税法がその根拠。「甲」「乙」といっても品質の優劣ではありませんが、500年以上続く伝統的な焼酎を「乙類焼酎」に分類するのは異論があり、今では「本格焼酎」と呼ばれるようになりました。今回は、そのような歴史も踏まえ、「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の違いについて検証します。
目次
「甲類」「乙類」の分類は税収上の期待の表れ?
連続式蒸留を「甲類」、単式蒸留を「乙類」と呼ぶきっかけは何だったのでしょうか。
「甲」「乙」というのは日本で伝統的に使用される分類上の記号です。甲は乙より優れているという意味合いもあります。実際、昔の学校の成績は、甲・乙・丙・・・で優劣を表していました。
連続式蒸留が「甲類」で、単式蒸留が「乙類」と分類されたのは、かつての税収の差がきっかけになったといいます。品質の優劣ではありません。
1949年当時、連続式蒸留の焼酎は、工場で大量生産ができ、税率が高く設定されていました。一方、単式蒸留の焼酎は税率が低く生産量も少なく、伝統的に南九州で盛んに飲まれるローカルなお酒だと思われていました。
そのため酒税法上、単式蒸留は、連続式蒸留の焼酎の下に位置づけられたのです。酒税が多く見込める連続式蒸留の焼酎は、国の期待のお酒だったのでしょう。
乙類焼酎の蔵元からの要望もあり、1971年(昭和46年)に乙類焼酎は「本格焼酎」と呼称することが認められます。2000年には甲類焼酎と乙類焼酎の酒税の差も解消されました。その後、本格焼酎は毎年数%伸び続け、特に2003年は、芋を中心とした本格焼酎が急増。今では、乙類焼酎の出荷数量は甲類焼酎と肩を並べるようになります。
「甲類焼酎」とは?
「甲類焼酎」の定義と特徴を紹介します。
「甲類焼酎」の定義
「甲類焼酎」は、「連続式蒸溜焼酎」に区分されます。酒税法では「アルコール含有物を蒸溜した酒類のうち、連続式蒸溜機で蒸溜したもので、アルコール度数36度未満のもの」と定義されています。
< h4>「甲類焼酎」の特徴
「甲類焼酎」は、アルコール度数が95度以上の液体に水を加えたお酒。味わいは、無味無臭に近いので、果汁や甘味料が入った特徴あるドリンクとの相性が良いです。東京の下町が発祥といわれる「チューハイ」のベースのお酒としてもあまりにも有名。
割って飲むことを前提にしているお酒なので、アルコール度数が調節できるのも特徴の一つ。量を少なくして、ドリンクの酸味や甘みを楽しんだり、濃いめにして杯数を少なくすることが可能。さまざまなシーンで活躍するお酒なのです。
「乙類焼酎」とは?
「乙類焼酎」の定義や特徴、魅力を紹介します。
「乙類焼酎」の定義
「乙類焼酎」は、「単式蒸溜焼酎」に区分されます。酒税法では、「アルコール含有物を蒸溜した酒類のうち、単式蒸溜機で蒸溜したもの、かつアルコール度数45度以下のもので、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ラム、ジンなどに該当しないもの」と定義されています。
「乙類焼酎」の特徴
「乙類焼酎」は、単式蒸溜で造られる伝統的な焼酎。焼酎の蒸留は、仕込んだ醪を加熱して、水よりも沸点の低いアルコールを先に気化させ、それを冷やすことでアルコールを効率的に取り出します。単式蒸留の蒸留は1回だけなので、取り出したアルコールの割合が低くなります。液体に占めるアルコールの割合が低いと、その分アルコール以外に原料由来の成分が含まれることに。この成分が、焼酎の味わいや香りとして、酒質に影響を与えることになるのです。
「乙類焼酎」は、原料の種類の多様さが特徴。芋や麦、米は有名ですが、栗、蕎麦、牛乳などさまざまな種類があります。蒸留法以外に、麹の原料や種麹、製造法などによっても種類が分かれます。一口に乙類焼酎といっても、種類は多岐に渡るのです。
「本格焼酎」と「乙類焼酎」には違いがある
「本格焼酎」は、「乙類焼酎」の一種になりますが、違いがあります。本格焼酎には水以外の添加物は一切認められませんが、乙類焼酎には2%未満の添加物の使用が認められています。
「甲類焼酎」と「乙類焼酎」の原料の違いは?
「甲類焼酎」と「乙類焼酎」には、原料の違いがあるのでしょうか。それぞれの原料を紹介します。
●甲類焼酎の原料
「甲類焼酎」の原料は穀類と廃糖蜜です。廃糖蜜とは、サトウキビの搾りかすのことで、多くはリーズナブルな海外のものが使われています。
「甲類焼酎」の連続式蒸留の特徴は、大量生産が可能なことなので、原料のこだわりは、質より量といっていいでしょう。
●乙類焼酎の原料
「乙類焼酎」の原料は、芋や麦、米、黒糖などが有名ですが、そのほかにも栗、そばなどが使われます。変わったところでは、熊本の蔵が牛乳を使用して人気を集めています。ただ、何を使用しても良いわけではなく、酒税法には原料の規定があります。
単式蒸留で蒸留された液体には、アルコール以外にも原料の成分が含まれています。原料の選定こそが、焼酎の酒質の決め手になる大切な作業なのです。
甲類焼酎と乙類焼酎の違いは?
焼酎は、醪を加熱・沸騰させ、アルコールが熊気となって気化したものを冷却・液化させた液体がもとになります。この製造工程が蒸留ですが、甲類焼酎と乙類焼酎では蒸留法が違います。以下では、それぞれの蒸留法の違いについて確認してみましょう。
連続式蒸留
「甲類焼酎」は連続式蒸留と呼ばれる蒸留方法で造られます。
連統式蒸留は、1826年スコットランドで開発されました。後に、アイルランドの技術者が改良して特許を得たため「パテント(特許)・スチル」と呼ばれるようになります。当地では、モルト・ウィスキーにブレンドするグレン・ウィスキーの蒸留に使用されるのが一般的。個性の強いモルトウイスキーを飲みやすくするために使われています。
この連続式蒸留が日本に登場したのは、1894年(明治27年)の日清戦争の最中。酒造会社や焼酎工場ではなく、火薬製造に必要なアルコールを生産するために、火薬製造所がドイツから輸入したのが始まりといわれています。連続式蒸留機がいかに純度の高いアルコールを生み出すのか良くわかります。
連続式蒸留は、何度も蒸留するため、純度の高いアルコールに仕上がるのが特徴。アルコール度数は95度以上にもなり、ほとんどアルコールそのものです。そのアルコールを酒税法で規定のある35度未満まで水を加えて調整して、甲類焼酎になります。
香りや味わいは無味無臭に近いため、原料は質というより量が求められます。大量生産が可能なので、甲類焼酎以外にも使用されます。原料用アルコールとして日本酒やウイスキーに。または、醸造用アルコールとして味醂やリキュールに使用されています。
単式蒸留
「乙類焼酎」は、古くから伝わる単式蒸溜機で蒸溜された焼酎です。醪を1回しか蒸留しないので純度は低く、アルコール度数は40度です。
単式蒸留は、蒸留法のオリジナルです。蒸留器は、紀元前のメソポタミア文明時代のアラブ地方で発明されたといわれています。アラビア語語源の「アランビック」という蒸留器が、アジアやヨーロッパに伝わったといわれています。
日本に伝わったのは江戸時代。卓上型蒸留器は、「ランビキ」と呼ばれていましたが、アランビックが転じた言葉だったのです。鹿児島では、一般家庭にランビキがあり、自家製の焼酎が作られていました。
焼酎の単式蒸留では、仕込んだ醪は1回だけしか蒸留しません。連続式蒸留のように何度も蒸留することはありません。そのため、純度が高くならないので、アルコール度数は40度前後に仕上がります。40度前後だとアルコールがツンとして飲みにくいので、一般的には25度まで水を加えて調整します。
アルコール以外の液体には、仕込み水が蒸留水となって含まれるほか、原料の微量な油分も含まれます。単式蒸留で仕上げた焼酎が、香りや味わいが豊かなのは、その油分のおかげといわれています。芋や麦、米といった原料の違いが楽しめるのは、単式蒸留ならではの特徴です。
まとめ
いかがでしたか。「甲」「乙」の分類の違いは、国の税収上の期待の差だったのでした。
甲類焼酎は、割って飲むのが前提のお酒のため、飲むシーンが多様。乙類焼酎は、原料によって味わいや香りが豊かなお酒。
自分に合った焼酎を見つけて、楽しんでみてください。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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