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焼酎にも原産地呼称があるの?

焼酎の産地には、ボルドーワインやシャンパンのように、国際市場で独占的に産地名を名乗れる4つの地域があることをご存知でしょうか?
今回は、お酒の原産地呼称制度や地理的表示、関連する本格焼酎の4つの産地についてご紹介します。

原産地呼称制度とはの画像

原産地呼称制度とは

原産地呼称という制度は、ヨーロッパが発祥。
特定の地理的環境や風土に由来する、優れた特性をもつ産品だけがその産地名を名乗れるよう整えられた制度です。
「ボルドーワイン」「シャンパン」などがその例です。

このように、特定の産地名を名乗れる条件を公的に定めた原産地呼称制度は、生産者にとっては産品の差別化・高付加価値化になります。
なにより、消費者にとっては安心感につながります。
生産者と消費者の双方にメリットがある制度ですね。

TRIPS協定とはの画像

TRIPS協定とは

日本でも、このような原産地呼称制度と同様に、産地保護を目的とした「地理的表示制度」があります。
その中身に入っていく前に、まずはこの制度の背景となったTRIPS(トリプス)協定について少しだけ触れておきましょう。

TRIPS協定は、世界貿易機関(WTO)が、
「国際的な自由貿易秩序を維持するための知的財産権保護や権利行使手続の制度整備を、加盟各国に義務付けること」
を目的に締結した協定。
この協定の23条は、ぶどう酒と蒸留酒の地理的表示の保護について定めています。

これを機に、日本も加盟国である以上、地理的表示を保護する法整備に迫られました。
そこで国税庁は1994年、ぶどう酒と蒸留酒の地理的表示を制定し、2015年にはすべての酒類に対象を拡大しました。

お酒の地理的表示とは

「地理的表示」は、「GI(Geographical Indication)」とも呼ばれます。
国際協定に基づきWTO加盟国が各国で定める制度なので、国内外のさまざまな地域の産品がGIに指定されています。

とりわけ、国際貿易の主要品目かつ産地による特性が生まれやすい酒類に関しては、多くのGIの例があります。

日本国内の画像
日本国内

日本の地理的表示制度では、地理的表示(GI)は産地の申し立てを受けて、国税庁長官が指定します。
ある産地が地理的表示(GI)に指定されると、その産地の一定の条件をクリアした商品だけが、その産地を名乗れるということに。

国内では現在、焼酎、日本酒、国産ワインなどの産地が、GIで保護されています。

海外の画像
海外

海外では、原産地呼称制度で保護されたワインのボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどはいうまでもなく、ウイスキーのスコッチ、ブランデーのコニャック、それにテキーラなどがあります。

焼酎の地理的表示

焼酎の地理的表示(GI)は、蒸留酒の地理的表示制度が整った翌年1995年に、いち早く「壱岐」、「球磨」、「琉球」の3つが指定され、2005年に「薩摩」が加わりました。
これら4つの焼酎の産地について、それぞれ見ていきましょう。
産地ごとの原料の違いにも注目。

壱岐の画像

壱岐

GI壱岐の産地の範囲は、九州北方の玄界灘に浮かぶ壱岐島を中心とした群島に位置する長崎県壱岐市です。

壱岐焼酎は、単式蒸留の本格麦焼酎。
その特徴は、「麦由来のさわやかな香りと米こうじの甘く厚みのある味わい」です。
麦焼酎発祥の地とされる壱岐では、伝統的に米こうじと大麦を1:2の比率で用いており、この伝統的な製法が、壱岐焼酎の特性に大きく影響しています。

また、玄武岩層からくる地下水を仕込みと割り水に用いており、「原料の水に由来するキレの良い飲み口」も魅力です。

球磨焼酎の画像

球磨

GI球磨の産地の範囲は、熊本県球磨郡と人吉市。
この地域は、九州中央部の九州山地に囲まれた盆地に位置しており、冬季の平均気温が低く、寒暖の差が大きいという気候的特徴があります。
また、濃霧が多く、比較的低温で発酵、貯蔵できるため、「清涼感のある香味を有する焼酎」を造るのに適しています。

球磨焼酎は、単式蒸留の本格米焼酎。
球磨盆地を流れる球磨川水系の軟水を使用していることから、「米由来のまろやかな甘さを感じる味わいと清涼感のある香味」を特徴としています。
常圧蒸留したものは「香ばしさを伴った米特有の香り」があり、減圧蒸留したものは「果実様の香り」があります。

薩摩焼酎の画像

薩摩

GI薩摩の産地の範囲は、奄美市と大島郡を除く鹿児島県全域にわたります。
シラス台地が広く分布している同県は、水はけがよく、芋焼酎の原料となるさつまいもの栽培に適しています。

そんな薩摩焼酎の原料はもちろん、同産地で栽培・収穫したさつまいも。
薩摩焼酎は、良質で新鮮なさつまいもを使用した、「華やかで芳醇な香り」と「その香りと調和した甘く濃厚な味わい」をもつ本格芋焼酎です。

琉球の画像

琉球

GI琉球は、泡盛です。産地の範囲は、沖縄県。

琉球泡盛の大きな特徴のひとつが、米こうじに使うこうじ菌を「黒こうじ菌」に限っていることです。
高温多湿の気候で降水量が多い沖縄の気候は、クエン酸を多く生成する黒こうじ菌による発酵に向いており、伝統的に黒こうじが使われてきました。

また、3年以上貯蔵した「古酒(クース)」も、琉球ならではの文化。
常圧蒸留した古酒には、「黒こうじ菌の酵素により米から生じる成分に由来する甘いバニラ様の香りや松茸様の香り等が調和した、濃厚で奥深い香り」が特性として表れます。

焼酎以外の地理的表示

焼酎以外にも、清酒、ぶどう酒、梅酒(リキュール)などの地理的表示(GI)が指定されています。特に、近年輸出を強化している清酒については、GI指定が相次いでいます。

清酒

白山

日本酒で最初のGIに指定されたのが、石川県白山市を産地の範囲とする「白山」です。「米の旨みを活かした豊かなこく」が特徴です。

日本酒

2015年には、国内産米のみを原料とする国内で製造された清酒のみが独占的に「日本酒」を名乗れるよう、日本酒そのものがGI指定されました。

山形

翌年2016年に指定されたGI山形は、「やわらかくて透明感のある酒質」が特徴。特に純米吟醸酒・吟醸酒は、果実のような香りが際立ちます。

灘五郷

大手酒造メーカーが点在する兵庫県神戸市灘区、東灘区、芦屋市及び西宮市を産地の範囲とするGI灘五郷は、2018年に指定されました。特徴は、「後味の切れの良い酒質」です。

はりま

灘五郷の西側に位置する播磨地域では、2020年にGIはりまが指定されました。
酒米の王様として名高い山田錦の主要な産地でもあるはりまは、「兵庫県で収穫した山田錦のみを用いたもの」と、酒米に厳しい条件を設けています。

三重

同じく2020年に指定されたGI三重は、「総じて温かみがあり芳醇な酒質」。
あわびや伊勢エビなどの貝類・甲殻類と好相性の酒質です。

利根沼田

2021年には、群馬県沼田市をはじめとする産地がGI利根沼田に指定されました。
「透明感のある味わいと適度な旨味」を特徴としています。

ぶどう酒

ぶどう酒、つまり国産ワインの産地としては、2013年にGI山梨、2018年にGI北海道、そして2021年にGI山形、GI長野、そしてGI大阪が指定されています。

まとめの画像

まとめ

産地の気候や風土から生まれる特性とブランドを守るための地理的表示。
日本で最初に指定されたのは、壱岐焼酎だったのですね。
本格焼酎を選ぶ際には、「GI」の表記やマークにも注目してみてください。

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