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焼酎の香りとは? 「焼酎の華」ともよばれるフーゼル油をご紹介します

焼酎の成分の中には、「焼酎の華」ともよばれるフーゼル油があります。
フーゼル油とは、高級アルコールを主成分とする油状液体。
焼酎の香りに影響を与えるとともに、時には臭いが気になることも。
そんなフーゼル油についてご紹介します。

焼酎の差別化ポイントの画像

焼酎の差別化ポイント

清酒やワインのような醸造酒は、醪(もろみ)を搾ります。
一方、焼酎は、醪を蒸留します。
そのため、味に関与する主な成分は、醪中に残ったままといわれます。
実際に、蒸留後の焼酎の成分は、99%以上がエチルアルコールと水。
つまり、成分だけ見ると、芋焼酎も麦焼酎も、そして甲類焼酎も乙類焼酎も大きな違いがないことになります。

しかし、私たちは焼酎をテイスティングした際、こっちは甘口とか、こっちは辛口といった具合に区別することができます。
つまり、エチルアルコールと水以外の残り1%未満の成分が、ごく微量でありながら個性を発揮します。
原料による風味の違い、焼酎らしいコクやクセの差別化ポイントを生み出すのです。
特に芋焼酎は、他の焼酎にない独特の香りと甘味があります。

微量成分の正体の画像

微量成分の正体

この微量成分の正体は何かというと、ほとんどが香りといわれます。
つまり、焼酎の個性を決めているのは香りであり、舌にある味蕾という器官で感知されます。
「味」の成分は、ほとんどないといっていいほど。
しかし、人問の味覚というのは味蕾で感知されるものだけでなく、嗅覚や食感など、五感のあらゆる機能を使って決定されています。
焼酎の場合、豊かな香りをかぐことで、味や風味、コクなどを感じることができます。

世界の蒸留酒の中でも珍しい、焼酎の画像

世界の蒸留酒の中でも珍しい、焼酎

現在では、「バナナ」や「ライチ」の香りを謳った焼酎も発売されています。
そして、この香りの特徴を持つ蒸留酒は、世界の中でも珍しいとされます。

ではなぜ、香りを感じることができるか。
その原因は、フーゼル油によるところが大きいといわれます。

フーゼル油というのは、ぶどう糖のアルコール発酵のさい、副産物として生成する高級アルコールの総称。
その代表的なものは、
・イソアミルアルコール
・イソブチルアルコール
・n-プロピルアルコール
です。

生成したフーゼル油は、醪(もろみ)の過程で大部分は固形分に付着します。
これは他の蒸留酒、例えばウイスキーでも同様。
ただ、ウイスキーでは蒸留前に醪を粗ろ過して、フーゼル油が付着した固形分の一部を除去。
対して、焼酎では固形分と共に蒸留します。

また、ウイスキーでは再留をしますが、焼酎では粗留(1回蒸留) でやめます。
そのため、アルコール度数は45%以下と低くなります。
アルーコール度数が低いと、フーゼル油の成分が溶けにくいので、その結果、原酒に残ることになります。
一方、再留したウイスキーのアルコール度数は65%前後になり、原酒に残りにくくなるワケです 。

焼酎の個性の画像

焼酎の個性

フーゼル油は、刺激的で青くさい香りと辛味、刺激的かつ、薬品的な香りでわずかに苦味を呈します。
反面、これらの成分は微量に存在するため、むしろ焼酎に芳香と快い刺激を付与する役割を担います。

つまり、フーゼル油が、焼酎を世界の中でも珍しい香りの蒸留酒にさせた、原因のひとつなのです。

前述の通り、フーゼル油を代表するものは
・イソアミルアルコール
・イソブチルアルコール
・n-プロピルアルコール
ですが、これらの組成の比率に応じて、さまざまな香りを感じます。

焼酎がそれぞれ個性ある香りを放つのは、フーゼル油の組成の比率が異なるためなのです。

フーゼル油の功罪の画像

フーゼル油の功罪

フーゼル油は、焼酎の香りを形成する主成分の一つ。
焼酎が、世界の中でも珍しい香りをもつ蒸留酒であるのはそのため。

一方、長い間、造り手を悩ましてきたのは、時に放つことがある不快な悪臭。
焼酎が南九州でしか飲まれなかったのは、そのためだといわれたほどです。

1975年頃には、その原因が明らかになります。
悪臭とされてきた原因は、原料や製造過程に由来するものではなく、貯蔵あるいは流通時の管理の問題である事が明らかになったのでした。

具体的には、貯蔵あるいは流通時の管理中での、フーゼル油の酸化です。
長期保存中、冬季になると原酒の温度が下ってくるにつれ、残留していたフーゼル油が分離、溶出。
原酒の表面に浮びあがってきます。
浮かび上がったフーゼル油が大気に触れ、酸化して不快な異臭が発生。
焼酎の旨みでもある成分が空気に触れて酸化されると、酸化分解物が特有の油臭となっていたのでした。

濾過技術が発達の画像

濾過技術が発達

鹿児島では、秋に仕込んだ焼酎を、年末には早ばやと最高の飲みごろの新酒として飲みはじめます。
それは、新酒として飲めば、原酒のフーゼル油が酸化されることなく、不快な悪臭を発することがない、という知恵。
長期貯蔵すると、酸化のリスクにさらされることを経験的に知られていたのでした。

この酸化は、高温、日光(紫外線)、空気(酸素)によって促進されます。
そのため、原因が明らかになって以降は、さまざまな対策が取られるようになります。

容器が、透明瓶から茶色など色付き瓶が主流になったのも一例。
貯蔵あるいは流通時の、日光による酸化を防ぐためです。

その後は、濾過技術が発達。
多からず、少なからず、いい塩梅にフーゼル油を取り除くようになります。

減圧蒸留の登場の画像

減圧蒸留の登場

このフーゼル油の香りを極力除去したいという、焼酎メーカーの念願を叶えてくれたのが、減圧蒸留器でした。
減圧蒸留器は、低い沸点での蒸留が可能。
そのため、フーゼル油はあまり気化されず、醪に残ります。
この減圧蒸留とイオン交換樹脂による精製などにより、さわやかで華やかな香りを主体とした香味成分を、より多く含んだものをつくることができるようになりました。
つまり、軽くてさわやかで飲みやすい焼酎を造ることが可能になったのです。

1973年(昭和48年)9月に株式会社喜多屋(旧名:白花洒造株式会社)が減圧蒸留を導入。
1973年(昭和48年)に二階堂酒造が、麦焼酎「吉四六」を発売し、1979年(昭和54年)には、三和酒類が麦焼酎「いいちこ」を発売。
フーゼル油の香りを極力除去した結果、大分麦焼酎のブームにつながったのです。

長期熟成への道の画像

長期熟成への道

近年、木樽熟成といった本格焼酎の貯蔵熟成酒が、注目されるようになってきました。
ブランデーやウイスキーといった世界の蒸留酒では、熟成酒が主流でしたが、焼酎においては最近のこと。
長期貯蔵すると、フーゼル油が酸化のリスクにさらされることを、経験的に知られていたためでした。
しかし、濾過技術が発達すると、貯蔵熟成酒へのハードルが下がって、多くの酒蔵が造り始めます。

貯蔵熟成酒は本格焼酎本来の性格を生かし、ウイスキーと違った蒸留酒の世界を築きつつあるといえます。
これらの技術は、焼酎の新しい世界を築くものとして注目されています。

まとめの画像

まとめ

いかがでしたか。
フーゼル油の適切な管理が、焼酎を全国に普及したきっかけの一つになったのでした。
また、今後の貯蔵熟成酒ステージでの活躍にも期待できそうです。
世界の蒸留酒の中でも珍しい、香りを持つ焼酎。
みなさんも、しみじみと香りを楽しんでみてください。

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