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黒糖焼酎とは? | 黒糖焼酎の効能と飲み方までご紹介します

黒糖焼酎とは? | 黒糖焼酎の効能と飲み方までご紹介します

焼酎の本場といえば鹿児島県ですが、鹿児島県の南西370~560kmに位置する奄美群島では黒糖焼酎が造られています。
芋焼酎はつくらず、島の人たちが飲んでいる焼酎は黒糖焼酎。
そして、原料に黒糖が使えるのは、この奄美諸島だけなのです。
今回は、黒糖焼酎が奄美諸島だけで作られる理由から飲み方までご紹介します。

黒糖焼酎は奄美の焼酎

奄美群島は、亜熱帯海洋性の温暖な気候のもと豊かな自然を有する島々。
奄美群島においてサトウキビは、400年前の伝来とともに栽培が広がり、産地として全国的に知られています。
黒糖焼酎は、このサトウキビから作られる焼酎です。

奄美でしか作れない理由

黒糖焼酎は奄美群島でしか作れません。
理由は、1953年12月に出された酒税法の特例通達によるものです。

奄美群島では戦争中、深刻なお米不足から、それまで島外への大切な移出品であった黒糖をお酒の原料にするようになります。
また、戦争が終わり進駐軍の統治時代には全国で唯一、お酒の自家製造が許され、お酒は各家庭で造られていました。

1953年12月、奄美群島が日本に復帰するにあたり、それまで黒糖で造られてきたお酒は、酒税法によってラムに分類されることになります。黒糖を原料にしているためです。
しかし、ラムに分類されてしまうと、奄美の人たちは大変困ります。ラムの税率は高いので、奄美のお酒は値上げが予想されるからです。
しかし、値上げは回避されることになります。麹の使用を条件に焼酎として認められ、税率は据え置かれたのが理由です。
奄美で親しまれていたお酒を、値上げするのは忍びないという当時の行政の計らいだったといわれています。

特例通達によって、国内で黒糖焼酎を造って良いのは奄美群島にある蔵元だけに限定されました。現在でも他のエリアでは、黒糖を原料にして焼酎を造ることはできません。

黒糖焼酎とラムの違いは?

黒糖焼酎と蒸留酒として世界的に有名なラムは、同じサトウキビを原料として造られています。
黒糖焼酎とラムの違いはどのようなものでしょうか。

麹の使用の有無

黒糖焼酎もラムもサトウキビが原料。サトウキビは、それ自体が糖分なので、酵母を加えれば発酵しアルコールになります。これは他の焼酎とは違う点です。芋や麦など他の原料が糖化するには、デンプンの力が必要です。デンプンの糖化に麹を使ういます。
よって、本来では黒糖焼酎には麹による糖化は必要がないのですが、麹を使用することを条件にして本格焼酎として認められた経緯があります。そのため、黒糖焼酎は麹を使って発酵を行います。一方、ラムはサトウキビの搾り汁や廃糖蜜を使って発酵を行います。
この麹の使用の有無が黒糖焼酎とラムの大きな違いです。

蒸留回数

黒糖焼酎の蒸溜は、粗留(一度だけの蒸留)ですが、ラムは再留(複数回蒸留)します。粗留と再留の違いは、アルコールとしての練度の高さ。
蒸留をした分だけ、アルコールの練度が高くなり無味無臭に近くなります。
そのため、再留(複数回蒸留)するラムは原料由来の香りが少なく、粗留(一度だけの蒸留)する黒糖焼酎の方が、香りが豊かであるとされています。

アルコール度数

一般的に黒糖焼酎より、ラムの方がアルコール度数は高いものが多いです。
その理由は、酒税法上の規定。黒糖焼酎は単式蒸留焼酎に分類されますので、アルコール度数は45度以下と決められているのです。一方、ラムは高いもので60度のものがありますが、特に規定はありません。
そのため、黒糖を原料に麹を使用してアルコール度数が46度以上になっだお酒は、焼酎ではなくスピリッツに分類されてしまいます。

黒糖焼酎の効能

昔から、適度なお酒は、ストレスを和らげるとして知られています。
近年では、お酒と健康についての本格的な研究が進んでおり、黒糖焼酎の効能も明らかになってきています。

黒糖焼酎で健康を維持。徳之島の泉重千代さん

1979年、ギネスブックから史上最高齢の男性として、奄美群島の徳之島に住む泉重千代さん(享年120歳)が認定されたことがあります。のちに証拠が不足していると認定は取り消されましたが、徳之島が長寿の島であることを有名にした出来事になりました。
泉重千代さんの長寿の秘訣は、黒糖焼酎にあるといわれています。毎晩欠かさず黒糖焼酎を一合、ゆっくりと自分のペースで楽しんでいたそうです。

また、一部の研究機関が、黒糖焼酎に含まれる成分が空腹ホルモン「グレリン」を増強する可能性に注目。以来、黒糖焼酎と健康寿命の関係についての研究が進んでいるようです。

黒糖焼酎に含まれる糖分はゼロ

黒糖焼酎の原料は、サトウキビから作る黒糖。
だからといって、黒糖焼酎には、黒糖由来の甘さが残っているわけではありません。
焼酎は蒸留という工程を経ますので、黒糖由来の甘さは蒸留されることなく醪の中に残ったままなのです。
甘さを感じるとすれば、フーゼル油やその他の成分から香り由来のもの。
甘さ、つまり、糖質は醪の中に残ったままなので、糖分ゼロの黒糖焼酎が出来上がります。
黒糖焼酎は黒糖が原料なのに、糖分ゼロというのは意外です。

黒糖焼酎の種類とおすすめ銘柄

鹿児島県に属する奄美群島は、有人・無人の島々の総称。
黒糖焼酎はそのうちの5島で造られていますが、自然環境もそれぞれ違うので、個性は豊か。
5島それぞれの焼酎酒蔵と、オススメ銘柄をご紹介します。

奄美大島(あまみおおしま)

奄美大島の黒糖焼酎の特徴は、他の島と比べて黒糖を使う量が少ないこと。そのため、米麹の風味を酒質に反映して、コクのあるやわらかな仕上がりとなる傾向があります。
焼酎蔵は10蔵あります。音響熟成で有名な「れんと」を造る奄美大島開運酒造や首都圏でも人気の「里の曙」を造る町田酒造はじめ代表的な黒糖焼酎が集まっています。
・奄美大島酒造/「浜千烏乃詩」
・町田酒造/「里の曙」
・山田酒造/「あまみ長雲」
・天海の蔵/「瀬戸の灘」
・奄美大島開運酒造/「れんと」
・大島食糧酒造所/「あまみ六調」
・弥生焼酎醸造所/「彌生」
・西平酒造/「珊瑚」
・西平本家/「八千代」
・富田酒造場/「龍宮」

喜界島(きかいじま)

奄美大島の東に浮かぶ喜界島は、全島が隆起サンゴ礁からなる平らな小さな島。島の水質は、カルシウム、マグネシウムの多い発酵には適しているとされる硬水です。
焼酎蔵は2蔵あります。奄美の多くの焼酎酒蔵は、原料のサトウキビは沖縄産を使いますが、朝日酒造は島内産にこだわっています。
・朝日酒造/「「朝日」
・喜界島酒造/「喜界島」

徳之島(とくのしま)

徳之島は、奄美群島の中で奄美大島に次ぐ大きな島です。中央に山地もありますが、耕地面積が広くもあり農作物も豊富。サトウキビ栽培がさかんな島で、この島のサトウキビからつくられた黒糖は質が良いとされています。
焼酎蔵は7蔵あります。
そのうち5蔵(天川酒造、中村酒造、亀澤酒造場、髙岡醸造、松永酒造場)は、共同ビン詰め会社の奄美酒類に参加しています。5社の各蔵で造った原酒を奄美酒類に集めてブレンドし、共同銘柄として商品化しています。
また、髙岡醸造はラム酒を造っています。
・奄美酒類/「奄美」
・奄美大島にしかわ酒造/「島のナポレオン」

沖永良部島(おきえらぶとう)

奄美群島では、最南端の与論島とともに、沖縄の影響が色濃い島です。ハブのいない島としても有名。隆起サンゴ礁の島で、全体になだらかな丘陵になっています。
焼酎蔵は7蔵あります。
そのうち4蔵(徳田酒造、竿田酒造場、沖酒造、神崎産業)は、共同ビン詰め会社の沖永良部酒造に参加しています。4社の各蔵で造った原酒を沖永良部酒造に集めてブレンドし、共同銘柄として商品化しています。
・沖永良部酒造/「稲乃露」
・新納酒造/「天下一」
・原田酒造/「昇龍」

与論島(よろんじま)

奄美諸島の最南端に位置する島。またの名称を「ユンヌ」ともいいます。かわいい熱帯魚の形をした島で、花とサンゴの楽園のよう。沖縄本島に近く、文化は沖縄圏に近いといわれています。
焼酎蔵は1蔵あります。特徴はアルコール度数。他の奄美郡島は30度が多い中で有村酒造が造る「有泉」は25度です。
・有村酒造/「有泉」

黒糖焼酎のおすすめの飲み方

黒糖焼酎は、ほんのりと甘く優しい香りが特徴。
黒糖と米麹の甘い香りとコクが鼻をくすぐります。
飲み方は、TPOに合わせて、それぞれの良さを生かして楽しみたいもの。

ストレート

黒糖焼酎は香味が独特。ストレートは濃厚でパンチのある風味を、ダイレクトに楽しめます。また、多くの黒糖焼酎はアルコール度数が30度と高い場合が多いので、口直しの冷水(チェイサー)を用意して、ゆっくり味わうのがオススメです。

ロック

黒糖焼酎をすっきりと飲みやすく、かつ独特の風味も楽しみたいなら、ロックがおすすめです。氷で冷やすと甘味が締まるとともに、とろりとした質感になり、口のなかに長く留めて味わうには最適な飲み方。ストレートに近い飲み始めから、永が解けて水割り状になるまでの、香味の変化も楽しめます。

お湯割り

お湯で割ることによって黒糖焼酎の甘みが、余すところなく引き立ちます。舌の上で静かにふくらむお湯割りは、焼酎好きがこよなく愛す「王道」の楽しみ方。
黒糖焼酎とお湯の比率は、もちろん「ロクヨン」。容器にお湯を先に注いで、その中にゆっくりと黒糖焼酎を注ぐと、甘さが一気に開花します。

カクテル

黒糖焼酎は、他の原料の焼酎と比較して、アルコール度数が高いのが特徴。黒糖焼酎の多くはアルコール度数30度で作られています。なので、ラムやウォッカなどの代わりにカクテルベースのお酒としてもオススメです。特に黒糖焼酎は、ラムと比較されることが多いので、モヒートやダイキリなどのカクテルとの相性が良いといえます。

まとめ

黒糖焼酎が、奄美でしか作られない理由は、特例通達という当局の計らいによるものでした。特例通達には、黒糖焼酎の原料に麹を使うことが条件とされていますが、それがラムとの大きな違いとも。
また、かつてのギネスブック保持者によって長寿にも効能があるといわれ、今も研究がされています。
黒糖焼酎が造られている5つの島は、小規模ながらそれぞれの特徴があり、オススメ銘柄も豊富で、今ではコンビニでも取り扱いがあります。
もう一つの鹿児島県の焼酎である黒糖焼酎。ぜひトライしてみてください。

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