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【芋焼酎】新原酒 白麹 あらあらざけ/佐藤酒造(鹿児島県霧島市牧園町)の画像

【原酒】新原酒 白麹 あらあらざけ | 佐藤酒造(鹿児島県霧島市牧園町)

2022-04-08

かつての佐藤酒造

佐藤酒造は鹿児島空港から車で約15分の霧島市牧園町にあります。この一帯は霧島連山のすそ野に広がる風光明媚な高原リゾートといわれています。温泉郷として有名で、天孫降臨伝説がある霧島川の懐から湧き出る霧島温泉郷は、多種多様な温泉からなり、あらゆる症状に効果があるといます。

創業は、1906年(明治39年)。創業の地は近隣の加治木町でした。現在の霧島市牧園町に移転したのは、霧島連山が育む名水を求めたからだそうです。

かつての佐藤酒造は、創業地の加治木町の加治木酒造協業組合の一員として主に共同銘柄の芋焼酎を製造していました。そのほか未納税で他県のメーカーに納める麦焼酎を製造。
加治木酒造協業組合とは、行政が進めていた協業化によって10社の酒蔵が統合されて設立された組合のことです。焼酎が全国的なブームになる以前、南九州の焼酎専業蔵は、経営健全化を目的とした行政から指導があり、そのために小規模で不安のある酒蔵の協業化を進めていたのです。

かつての佐藤酒造の画像

プレミアム焼酎「佐藤」を発売

佐藤酒造がプレミアム焼酎「佐藤」を発売して、全国的に有名な焼酎酒蔵になったのは5代目の佐藤誠氏が焼酎蔵に戻ってから。佐藤誠氏は東京の大学の醸造科を修学後、サラリーマンを経て1990年(平成2年)に入社します。
当時の佐藤酒造は、加治木酒造協業組合を離脱していましたが問屋との取引はなく、「さつま」という代々からの芋焼酎を製造していました。

佐藤誠氏は入社後、自身が営業担当として売り歩いたそうです。その一方で焼酎造りにも関わり、タンクを洗浄するなど基本的なことから改善し、徐々に酒質も変えてくようになります。
1991年(平成3年)に「佐藤」、1993年(平成5年)には「黒麹仕込 佐藤」を開発。
小さな改善をコツコツと進めた結果、酒質も向上して素晴らしい焼酎が誕生したのです。
平成13年には杜氏の退職に伴って、佐藤誠氏は杜氏も兼任するようになります。

プレミアム焼酎「佐藤」の特徴は、「白麹」と「黒麹」がセットで人気があること。1980年代後半に「黒〇〇」ブームとなった黒麹焼酎のプレミアム焼酎版として人気が広がったのでした。クラシックな字体とともに、「黒麹仕込 佐藤」は黒、「佐藤」は白いのわかりやすいラベルも一因。

佐藤酒造のこだわりとは

焼酎酒蔵のこだわりは、各酒蔵によって違います。麹に使う米や主原料である芋にこだわるのはもちろんのこと、仕込みに使用する容器や、蒸留機など多岐に渡ります。
佐藤酒造のこだわりは、主原料である芋の鮮度。
朝に収穫された芋をていねいに洗浄します。芋のくぼみの間までブラシを使って土埃を洗い流し、繊維が多い端は切り取ります。その下処理のあと、芋を蒸しあげます。その作業を午前中に済ませ、その日のうちに仕込みを始めるのです。

一般的な酒蔵では、人手と時間がかかるため、朝に収穫した芋の下処理は午後にまわし、仕込みは翌日に持ち越されことが多い中、佐藤酒造の原料である芋の鮮度にこだわりは注目です。
蒸留酒の中でも鮮度にこだわりがあるのは、芋焼酎の特徴。ウイスキーやその他スピリッツの原料は穀類ですから、保存が可能。そのため鮮度にこだわることができないのです。

「新原酒 白麹 あらあらざけ」の画像

「新原酒 白麹 あらあらざけ」

今回ご紹介するのは、「新原酒 白麹 あらあらざけ」です。原酒とは、割水をしない焼酎のこと。ただ、この「新原酒 白麹 あらあらざけ」は、佐藤酒造らしい原酒。というのも、この「新原酒 白麹 あらあらざけ」は無濾過で、しかも蒸留したてを瓶詰した原酒。蒸留したての焼酎は、風味や香りが不安定だったり油分が剌激臭を感じさせたりして酒質が荒々しい。そのため、タンクや甕で貯蔵熟成させます。しかし、それはあくまでも「一般的」な焼酎の話。佐藤酒造では、その蒸留したてを瓶詰した焼酎を製品化するのです。それは、製造工程で生じる、過剰な油分や不純物がないということの自信の表れであるといえます。

佐藤酒造のこだわる芋の鮮度に加え、蒸留したての原酒をそのまま瓶詰めした「新原酒 白麹 あらあらざけ」は、原料である芋の味わいが正しく伝わる焼酎といえます。芋は野菜なので、年ごとに出来・不出来があります。芋を蒸留という工程を経るので、原料の出来・不出来は焼酎に影響はないといわれますが、鮮度にこだわる「新原酒 白麹 あらあらざけ」はその違いを感じることができます。
その年々の味わいの違いが感じられるのも「白麹 あらあらざけ」であるからこそ。毎年この焼酎を心待ちにしている人も多いそうです。
佐藤酒造が年に一度だけ仕込む特別な酒が、「新原酒 白麹 あらあらざけ」なのです。

原酒の飲み方はストレートの画像

原酒の飲み方はストレート

「新原酒 白麹 あらあらざけ」のおすすめの飲み方はストレートです。ストレートは焼酎そのままの味わいを楽しめる飲み方。脚付のグラスで、ゆっくり味わってください。原酒は35度以上と高い度数のものが多いので、ショットグラスだと酔いに勢いがついてしまいます。避けるようにしてください。

グラスに「新原酒 白麹 あらあらざけ」を注ぐとむせるような強烈な蒸留ガスに圧倒されます。「あらあらざけ」とは新しい「あら」と荒々しい「あら」の掛け合わせた言葉なのかと合点がいきます。度数は38度ですが、ツンとするアルコール臭は皆無。
頬を膨らませるような豊かな酒質は霧島の名水が由来。
口に含むと、新酒のフレッシュな清涼感の後に続く、濃厚な廿みと旨みはいつまでも口の中に広がります。甘い黄金千貫の味わい。りんごのような果実の香りがします。
口の中を通り過ぎたあとはシャープで余韻は比較的穏やかです。

「新原酒 白麹 あらあらざけ」と「ハマグリの酒蒸し」のペアリングの画像

「新原酒 白麹 あらあらざけ」と「ハマグリの酒蒸し」のペアリング

「新原酒 白麹 あらあらざけ」の濃厚な廿みと旨みはミネラル香を感じますので、貝料理とのペアリングがよさそうです。その中でも旨味の元であるアミノ酸の一種グルタミン酸が豊富な「ハマグリの酒蒸し」がオススメです。
ハマグリと豊かなミネラル香を「新原酒 白麹 あらあらざけ」の濃厚な廿みと旨みの相性はグットです。
皆さんも是非、試してみてください。

〈銘柄データ〉
【新原酒 白麹 あらあらざけ】
佐藤酒造/鹿児島県霧島市牧園町宿窪田2063
主原料/芋(黄金千貫)
麹/黒麹(米)
度数/38度
蒸留/常圧蒸留

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