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【麦焼酎】麦波(ばっは) | 藤居醸造(大分県豊後大野市)

2022-04-17

大分のお酒

大分県は古くから米や麦を始めとした多くの作物が豊かに実るところから「豊の国」と呼ばれていました。九州山系に端を発する幾多の水系もあり、それらが清流となって稲田を潤すのです。
この豊かな自然と大地の恵みを受けて、清酒、醤油、味噌等の醸造業は昔から盛んだったようです。

大分のお酒といえば麦焼酎のイメージが強いですが、歴史はまだ新しい。1973年に、麦100%焼酎を発売して全国的な人気を獲得する以前は、大分は麦焼酎というより、日本酒造りが盛んな地域でした。この地方のお酒は「麻地酒(あさじざけ)」と呼ばれ、九州を代表する名酒として献上されたという記録が400年以上前の資料にあるほどです。
また、多くの日本酒蔵と同様、日本酒を製造する際に残った粕を原料にして「粕取り焼酎」が造られていました。

ラベルの画像

麦100%焼酎とは? ウイスキーと麦焼酎の違い

焼酎には、2つの原料があります。主原料と麹に使用される原料です。主原料は焼酎の味わいの元となる穀物や野菜などのこと。芋焼酎なら「サツマイモ」、米焼酎なら「米」です。一方、これらの主原料を発酵させるための麹も、元になる原料が必要です。麹に使用される原料は米が一般的で、ラベルには、「米麹」と記載されています。
大分の麦焼酎が100%といわれるのは、主原料と麹の2つの原料に麦が使用されているからなのです。主原料と麹が同じ原料の焼酎は、大分の麦焼酎が突出して多く麦100%または、麦全量と呼ばれています。
麦100%焼酎の特徴は、麹に米を使用した焼酎に比べて麦の味わいが豊かに感じられます。

色規制の画像

麦100%を使用したお酒といえば、ウイスキーやビールがあります。ビールは醸造酒ですが、ウイスキーは焼酎と同じ蒸留酒。麦焼酎とウイスキーはともに麦を使用した蒸留酒なのです。
では、麦焼酎とウイスキーの違いとは何でしょうか。その違いは、麦のでんぷんを糖化させる方法。麦焼酎は「麹」の酵素を使います。一方、ウイスキーは「麦芽」の酵素を使います。
酒税法上もウイスキーの糖化については、「発芽された穀類及び水を原料として糖化させて発酵させた含有物を蒸留したもの」と明記してあります。

麦100%焼酎が発売された1973年は、ウイスキーがたくさん飲まれていた時代です。ロックや水割りといった飲み方が定着して、国産メーカーが大量生産を始めた頃。そのため、麦100%焼酎を受け入れる下地が整っていて、ウイスキー愛好者にとって親しみやすかったのかも入れません。
1992年には焼酎がウイスキーの消費を上回ったのでした。

かつての佐藤酒造の画像

完全手造りの焼酎酒蔵

藤居醸造は大分市から車で1時間。昔ながらの田園風景のなかにあります。
1929年(昭和4年)創業。屋号は井田萬力屋といいます。
伝統を守り大切に育てようと、麹造りからラベル貼りまで完全手造りの焼酎酒蔵。「飲みやすさではなく、飲みごたえのある焼酎」を大切にしています。
また、原料に使用される麦も国内産を使用。

麦焼酎の原料は大麦です。大麦は、西アジア地域原産といわれるもっとも古い農作物のひとつで、六条大麦と二条大麦があります。焼酎原料となるのは主に二条大麦。一般的には、外麦といわれるオーストラリアから輸入される麦が使用されています。
しかし、近年では一部の酒蔵において、国内産の麦も使われているのです。

藤居醸造では、地元農家の指導を受けながら、二条大麦のニシノチカラを無農薬栽培しています。種蒔きや麦踏み、除草の時には、取引先の酒販店や愛飲者が手伝いに来てくれるといいます。

代表銘柄は「特蒸泰明」

藤居醸造の代表銘柄は「特蒸泰明」。麦の香りが強く、重量のある味が特徴。昔の麦茶のような香ばしさと深くスモーキーな香り、重厚感のある飲みごたえがあります。

藤居醸造の製造する麦焼酎が、その特徴を最大限に発揮できるのは理由があります。それは焼酎造りに使用する容器や機器へのこだわり。藤居醸造では、他の大分麦焼酎の酒蔵と同様に麹には麦を使用しますが、麦を蒸す時には木製の桶を使用。手間はかかりますが、麦が焦げることはないしムラも少なくかるといいます。また、麹を盛る麹蓋も櫂も全て木製。木製を使用して、温度変化に敏感な原料や麹を守るためだとか。

ロックの画像

麦焼酎「麦波(ばっは)」の味わい

今回、紹介する銘柄は2019年9月に発売された「麦波」。減圧蒸留で仕上げています。「スッキリとしながらも、麦の香りを味わっていただける焼酎」がコンセプト。
大分の減圧蒸留なので、飲み方はクリアな味わいが楽しめるロックでいただきます。

ローストした麦を思わせる、ほんのりとした香り。口に含むと、ほのかにフルーティーな旨味が感じられ、その後、麦の旨味が静かに感じられます。適度に引き締まった味わいで、後口のキレも上々。透明感を残しながら、するりと喉に落ちていきます。

常圧で仕上げた麦焼酎のように、チョコ麦のような甘味は少なく感じられます。クリアな味わいが特徴なので、麦焼酎初心者や女性にもおすすめできる一本。
白身魚の刺身、野菜の炊き合わせなど、幅広い料理とのペアリングができそうです。

〈銘柄の紹介〉
【麦波(ばっは)】
藤居醸造/大分県豊後大野市千歳町新殿150-1
主原料/麦(二条大麦)
麹菌/白麹(麦)
度数/25度
蒸留/減圧蒸留

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