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【麦焼酎】べいすん | 柳田酒造(宮崎県都城市)

2022-04-19

宮崎焼酎の特徴

宮崎焼酎の特徴は、原料の多彩さです。
北部はそばや米、中部は麦、南部は芋をといったように、地区によって原料が多彩です。宮崎県は南北に長く栽培される作物が異なるためです。

一方、鹿児島県は芋、熊本県は米、大分県は麦といったように、ほかの県では、焼酎の原料は同じであることが多いです。

宮崎県都城市「柳田酒造」

柳田酒造は宮崎南部の都城地区にある焼酎酒蔵です。都城地区には、4蔵の焼酎酒蔵があります。
柳田酒造の創業は都城地区の中では最も古く、1902年(明治35年)。
「伝統とは創造を重ねること、創造とは伝統を重んじること」をモットーに、焼酎造りを続けています。ただ伝統を守るだけでなく、新たな創造を積み重ねてチャレンジしていく精神が、柳田酒造に関わる人達に根づいています。
都城盆地の中央に位置し、霊峰霧島山系の豊富で良質なアルカリ水の恩恵を受けています。仕込み水は、敷地内の井戸からくみ出される天然地下水。この天然水は「水甕」に例えられる都城盆地特有の地下構造が育む、地中のミネラル分や炭酸ガスを程よく吸収した良質な水です。

代表銘柄は麦焼酎の「駒」の画像

代表銘柄は麦焼酎の「駒」

「駒」は、4代目当主の柳田勲氏が60年代後半から70年代前半に開発した柳田酒造の代表銘柄。70年代によく飲まれていた甲類焼酎に対抗できる「飲みやすさ」を意識して減圧蒸留で仕上げています。開発には、柳田勲氏の実兄である柳田藤治氏が技術指導として参加されました。柳田藤治氏は多くの杜氏を育て、柳田酵母を開発したことでも知られた東京農業大学醸造学科の名誉教授。

「駒」は麦焼酎です。都城は鹿児島に近いので芋焼酎を造る酒蔵が圧倒的に多い中、あえて麦焼酎を開発した理由があります。それは、柳田酒造の近隣には日本一の芋焼酎酒蔵があったから。規模が大きい酒蔵に対して同じ原料での勝負を避け、芋焼酎ではなく原料が違う麦焼酎に懸けたといいます。

「ミヤザキハダカ駒」

麦焼酎の原料は大麦です。大麦は、西アジア地域原産といわれるもっとも古い農作物のひとつで、六条大麦と二条大麦があります。焼酎原料となるのは主に二条大麦。一般的には、外麦といわれるオーストラリアから輸入される麦が使用されています。
ただ、近年では国産の麦が一部の酒蔵において使われ始めています。国産の麦は「ヒノヒカリ」や「ニシノチカラ」有名ですが、柳田酒造は宮崎の在来種の「ミヤザキハダカ麦」に注目します。

かつて、宮崎では「ミヤザキハダカ麦」という在来種の麦が、広いエリアで自生していました。しかし、家で味噌を造る習慣がなくなり、また、安価な麦も輸入されるようになり、昭和後期には絶滅してしまいます。

柳田酒造は、2007年(平成19年)にこの「ミヤザキハダカ麦」の種を「地元に根ざした焼酎を」という強い思いで入手。翌年の2008年に復活させます。

「ミヤザキハダカ駒」は、麹にもミヤザキハダカを使用した麦100%焼酎。
「駒」よりさらに濃厚な麦の風味を感じるぜいたくな味わいです。

芋焼酎では「コガネセンガン」や「ジョイホワイト」「アヤムラサキ」などのサツマイモの品種ごとの味わいが注目されていますが、麦焼酎も品種ごとの味わいが注目され始めています。

こだわりの蒸留機

現当主の5代目・柳田正氏は酒蔵の当主になる以前、大手企業のエンジニアとして働いていました。その経験を活かして、「常圧蒸留」と「減圧蒸留」の「中間蒸留」が可能な機器の開発に成功します。常圧蒸留と減圧蒸留機のそれぞれの限界を感じていたのが理由。切り替えレバーの位置を徴妙に調節できるネジを取り付けたといいます。

常圧蒸留はコクがある芳醇な味わいが特徴。一方、減圧蒸留はすっきりと軽快な味わい。この2種類の蒸留の良さを活かしたオリジナル蒸留機で造った焼酎は「赤鹿毛(あかかげ)」といいます。香ばしいコクと、独特なカカオのような香りが特徴。
2007年(平成19年)に熊本国税局の本格焼酎鑑評会で優等賞を受賞します。

その他にも、4代目当主の柳田勲氏が「駒」に注力するために製造を中止した芋焼酎を35年ぶりに復活させた「千本桜」や、麦焼酎と相性の良い木樽で長期熟成させた「栃栗毛(とちくりげ)MIZUNARAスピリッツ」など、柳田酒造は個性的で魅力的な焼酎造りをしています。

ハイボールの画像

麦焼酎「べいすん」

今回、ご紹介する銘柄は「べいすん」。「駒」と同じ麦焼酎です。大麦がもつ自然の個性をいかすため、丁寧に低温蒸留し、濾過や熟成も十分な麦焼酎。特殊な原酒処理を行った弱アルカリ性焼酎としても有名です。
「駒」と異なるのは、長期熟成古酒がブレンドされていること。

「べいすん」はハイボールでいただきます。

麦焼酎とウイスキーの違い

「べいすん」は麹にも麦を使用した、麦100%焼酎です。
麦100%を使用したお酒といえば、ウイスキーやビールがあります。ビールは醸造酒ですが、ウイスキーは焼酎と同じ蒸留酒。麦焼酎とウイスキーはともに麦を使用した蒸留酒なのです。
では、麦焼酎とウイスキーの違いとは、何でしょうか。違いは、麦のでんぷんを糖化させる方法。麦焼酎は「麹」の酵素を使います。一方、ウイスキーは「麦芽」の酵素を使います。
酒税法上もウイスキーの糖化については、「発芽された穀類及び水を原料として糖化させて発酵させた含有物を蒸留したもの」と明記してあります。

べいすんラベルの画像

「べいすん」の味わい

ローストした麦のパワフルな香り。口に含むとパインのような南国系のフルーティーな香りが感じられ、その後、パンの耳をかじったような麦の旨味が濃厚に感じられます。ずっしりと喉の奥まで到達するコク。ただ、酒質は穏やかで、後口のキレも上々。シングルモルトウイスキーのようにアルコールを感じさせない飲み心地の良さが感じられます。

「べいすん」はパンをローストしたような香りがあるので、フレンチがおすすめ。「鴨のロースト」のペアリングが良さそうです。

〈銘柄の紹介〉
【べいすん】
柳田酒造/宮崎県都城市早鈴町14街区4号
主原料/麦
麹菌/麹(麦)
度数/25度

 

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