【原酒】さつま小鶴 原酒 | 小正醸造(鹿児島県日置市日吉町)
目次
長期熟成の小正醸造
小正醸造は、薩摩半島の中央に位置する鹿児島県日置市にあります。かつては、神社のお神酒造りをしていました。創業は1883年(明治16年)。
小正醸造は焼酎業界において「長期熟成の小正」として有名です。1959年(昭和34年)に日本で初めての長期熟成米焼酎「メローコヅル」を発売。この「メローコヅル」発売以降、「長期熟成の小正」で知られるようになったのです。
かつての2代目・当主である小正嘉之介氏は、焼酎の長期熟成に対する強いこだわりがありました。
しかし、焼酎の原料であるサツマイモは新鮮な状態で製造されるので、新鮮な出来立てを飲むのが伝統的な飲み方。そのため、一般的な貯蔵熟成期間は約3ヶ月。他の蒸留酒と比較してとても短いものでした。貯蔵熟成期間は蒸留後の荒々しい酒質を安定させるための工程で、それ以外の効果は期待されておらず、長い熟成期間は必要ないと思われてきました。
ところが、小正嘉之介氏は、焼酎にはウイスキーやブランデーと同じような長期熟成が向いていると強いこだわりを持っていたのです。
そして、長い開発期間を経て「メローコヅル」を発売したのでした。
さつま小鶴 原酒
今回ご紹介する銘柄は「さつま小鶴 原酒」。小正醸造は「長期熟成の小正」として有名ですが、創業以来の代表銘柄は芋焼酎の「小鶴」。「小さな鶴が大きな鶴となって大きく羽ばたくように」という思いを込めて創業者・小正市助が名付けました。
「さつま小鶴 原酒」は、この小鶴の原酒です。
原酒とは
焼酎は、発酵させた醪(もろみ)を蒸留機にかけて蒸留します。焼酎のアルコール度数が高いのは、この蒸留という工程のため。日本酒やワインなどの醸造酒との大きな違いです。
蒸留した直後のお酒が「原酒」と呼ばれます。
原酒の特徴はアルコール度数が高いこと。一般的に、麦焼酎や米焼酎は43〜44度、芋焼酎は37〜38度になります。レギュラー焼酎は、この原酒を水で割って調整します。このことを「割水(わりみず)」または、「加水(かすい)」といいます。焼酎の一般的な度数である25度になるまで、この割水という工程によって調整されるのです。
原酒のアルコール度数の違い
蒸留は、蒸留機の中に発酵の終了した醪を入れます。蒸留機が発生させる蒸気で醪を加熱。醪は、常圧蒸留の下では約90度で沸騰しアルコール蒸気が発生します。蒸留の経過とともに醪の温度はグングン上がり、約98度で蒸留が終了。このアルコール蒸気を冷やして集めたのが原酒というわけです。
原酒は、ある一定の時間をかけて出てきます。蒸留し始めと蒸留終了前の原酒では、アルコール度数が違います。蒸留し始めのアルコール度数は60%以上。蒸留終了前は約10%です。これらの蒸留の初めから終わりまでの原酒が調和して、アルコール分約40%の焼酎の原酒ができあがります。原酒は、蒸留機に入れる前の醪のアルコール度数や、蒸留を止める時(末垂れカット)の原酒のアルコール度数によって違いがでます。
原酒の初垂れ(はなたれ)
蒸留し始めの原酒は、「初垂れ(はなたれ)」または「初留(しょりゅう)」と呼ばれて焼酎として発売している酒蔵もあります。濃縮された豊かな香りと、口に含んだ時に広がる刺激が魅力です。
ただ、初垂れは60度以上あるので、焼酎としては発売できません。そのため、レギュラー焼酎と同じように割水されます。酒税法に規定があり、本格焼酎のアルコール度数は45度以下にする必要があるからです。
原酒とスピリッツ
焼酎以外の蒸留酒に「スピリッツ」があります。スピリッツとは一般的に、アルコール度数の高い蒸溜酒のことです。4大スピリッツとしてウオッカ、ジン、テキーラ、ラムが世界的に有名。
スピリッツのアルコール度数は40度前後が多く、その点は原酒と似ています。
ただ、スピリッツは何度も蒸留されるため味わいは無味無臭に近いです。一方、原酒は一回のみの蒸留のため原料の味わいが感じられます。
スピリッツの飲み方は、カクテルのベースとしてジュースやソーダと割るのが主流。一方、原酒はその味わいを楽しむためにストレートやロックがおすすめの飲み方です。
原酒の味わい
原酒の味わいは、荒々しい酒質といわれます。レギュラー酒のアルコール度数は25度が一般的ですが、原酒は40度前後と高いため、アルコールの迫力が感じられるためです。
ただ、蒸留したての本来の焼酎の香りや味わいが残っているので、焼酎の蔵元へ足を運ばなければ飲めないような格別な焼酎といえます。
原酒の飲み方
原酒の飲み方は、ストレートやロックがおすすめです。
〈ストレート〉
原酒は通常の焼酎と比較して、アルコール度数は35~45度と10度以上も高いです。そのため、スピリッツ同様、チェイサーを用意してストレートで飲むのがおすすめ。焼酎は食中酒というイメージが強いですが、原酒はむしろ食後酒として楽しみたいです。
〈ロック〉
香り高い原酒だからこそ、シンプルにおいしい氷だけで割って飲むのもおすすめです。冷たい口あたりと薄まりすぎない味わいが、上質な原酒をよりおいしく感じさせてくれます。ゆっくり味わう間に、適度に氷が溶けて、アルコール度数が下がってきます。さらに飲み口がマイルドになります。
「さつま小鶴 原酒」の味わい
「さつま小鶴 原酒」はストレートがオススメの飲み方です。
グラスに「さつま小鶴 原酒」を注ぐと、サツマイモのねっとりとした甘い香り。
米の蒸した香りも立ち上がります。
アルコール度数が38度と適度なので、ふわりとしたマイルド感があります。
口に含むと芋焼酎の甘みが広がります。肥沃な大地の湿ったような土の香り。
小正醸造は焼酎業界の中でも、原料をこだわることで有名です。契約した農家からサツマイモを直接入手しています。そのため、契約農家ですくすくと育ったサツマイモを口の中で感じます。
スーッと口の中を通り過ぎたあと、余韻の奥深さは喉の奥で感じます。
「さつま小鶴 原酒」は、焼酎本来の味わいと香りがたくさん詰まった逸品です。
〈銘柄データ〉
【さつま小鶴 原酒】
小正醸造/鹿児島県日置市日吉町日置3309
主原料/芋
麹菌/白麹(米)
度数/38%
蒸留/常圧蒸留
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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