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【芋焼酎】松露 うすにごり | 松露酒造(宮崎県串間市)

2022-06-19

松露酒造の創業

松露酒造は、宮崎県串間市にある焼酎酒蔵です。前身は「姥ヶ迫(うばがさこ)焼酎株式会社」。地域の農家10数軒が株主になって1928年(昭和3年)に設立したのが始まりです。戦後になって、この会社を株主のひとりであった矢野家が引き継ぎ、1971(昭和46)年に松露酒造という屋号に変更しました。

串間市には、かつて焼酎蔵が28蔵ありましたが、協業化などもあり現在では3蔵に。1964年(昭和39年)、家族経営の零細な焼酎蔵が多い本格焼酎製造業は、「中小企業近代化促進法」という法律の指定業種となります。その時に多くの串間市の蔵では、「協業化」か「廃業」の選択を迫られたといいます。

松露酒造の創業の画像

宮崎県串間市の自然

宮崎県串間市は、宮崎県の最南端に位置しています。南国・宮崎を象徴するような、風光明媚な海岸沿いのエリアが人気の観光地。火山噴火で出来た奇岩や滝が神秘的な赤池渓谷、あじさいロードなど、とにかく南国の自然が満載。

また、鹿児島県と同様に火山灰で覆われたシラスの土壌が、清冽で豊かな水資源を育んでいます。シラスに濾過された雨水が良質な天然水となって、この土地の動植物の大きな恵みになっています。もちろん、良質な天然水は、焼酎の仕込み用の水としても使われています。蔵元では、蔵の裏手に広がるシラス台地が育んだ天然地下水を、ろ過せず「生」の状態で使用しています。

宮崎県串間市の自然の画像

松露酒造の酒質

宮崎県で売られている焼酎のアルコール度数は、20度が一般的。戦争のカストリ・バクダンの時代の密造酒が影響して以来、宮崎では20度の焼酎が飲まれているのです。そのため宮崎の焼酎酒蔵は、県内用の20度焼酎と県外用の25度焼酎の2種類の焼酎を製造しています。それぞれのボトルデザインやラベルにも反映されており、県内用は伝統的、県外用は現代的といった違いがみられます。

原酒のアルコール度数は40度で仕上げる蔵が多い中、蔵元では、原酒のアルコール度数を36度に設定しています。原酒は割り水をしてアルコール度数を調整しますが、アルコール度数が低いと割り水の量が少ない。宮崎の焼酎にしては「味が濃い」といわれる酒質を生み出すのは、そのためだといわれています。

松露酒造の酒質の画像

「宮崎酵母」発祥の蔵

焼酎の原材料をアルコールに変える上で、欠かせないのが酵母。一次仕込みの時に、麹と水とともに発酵させて醪(もろみ)をつくります。焼酎造りに用いられる「焼酎酵母」は、焼酎用に開発されたもの。現在一般的に使用されている酵母は、「鹿児島2号、4号、5号、6号」「熊本酵母」などがありますが、「宮崎酵母」という酵母が1950年代、蔵元の醪から分離。松露酒造が「宮崎酵母」の発祥の地だといわれています。

宮崎酵母の特徴は、醪の強い酸度においても影響を受けにくく、どんな原料でも特性を崩すことなく発酵すること。新しい酵母を生み出した蔵というのは大変貴重で、蔵元がいかに真摯に焼酎造りと向き合っていたという証左になることでしょう。

「宮崎酵母」発祥の蔵の画像

焼酎酒蔵の新しい価値を創造

蔵元では、焼酎カス処理のプラントを所有しています。かつて焼酎カスは、海洋投棄されていましたが、昨今の環境問題に対する意識の高まりから禁止されます。蔵元では莫大な費用を掛けて、焼酎カスを有効利用するためのプラントを建設。焼酎カスは、様々な処理を経て、有機細菌を含んだ水と繊維状のカスに分解しています。

焼酎を作るだけでなく、焼酎カスが持つパワーを活かし再生することで、焼酎の副産物として位置付けられている廃棄物に新たな価値を生みだしているのです。その高い意識は、今後の焼酎酒蔵の新しい価値を創造しているといってもいいでしょう。

良質な原料が手に入るだけしか造らない

蔵元では「芋焼酎は農産加工品のひとつ」という信念のもと、焼酎が造られています。良い焼酎とは良い原材料であるという思いは、原料であるサツマイモの品質へのこだわりでもあります。価格が高くても、良質なサツマイモを求めているのです。

かつて地元でも焼酎用のサツマイモを栽培していましたが、現在は地元串間産のものと隣町の志布志産の中から、採りたての良い原料のみを厳選して使用しています。
納得した原料のみで焼酎を仕込んでおり、現在も造りの規模を拡張しないのは、「良質な原料が手に入るだけしか造らない」というこだわりの表れなのです。

焼酎酒蔵の新しい価値を創造の画像

今回紹介するのは、「松露 うすにごり」

今回ご紹介する銘柄は、「松露 うすにごり」。蒸留後、フーゼル油をすくい取るだけで濾過をしないため、ややにごりがあるのがこの芋焼酎の最大の特徴。
この銘柄は、地元の宮崎では飲まれないといいます。地元で飲まれる焼酎はほとんどが20度ということもありますが、もうひとつの理由は、澱(おり)を嫌うからです。宮崎県は本格焼酎の本場でありながら、甲類焼酎が盛んに飲まれた時期かありました。甲類焼酎は、その透明感が特徴で、澱はありません。その名残で、焼酎に少しでも澱があると、すぐ返品になるといいます。

「松露 うすにごり」を開栓すると、最初に飛び込んでくるのは、サツマイモの甘い香りと蒸したお米の香ばしい香り。やわらかで澄んだ印象だが、香りの奥にメロンのようなフルーツ香。甘みが強い分、辛みが少なく感じられます。口に含んでも、アルコールによるピリピリした刺激が少ない。口あたりがさっぱりしていてキレがとても良いです。全体的にはやさしい仕上がり。濾過をまったくしないため、それだけうまみ成分が多く残り、味わいに深みを出しています。

飲み方は、ロックがおすすめ。透明なグラスで大きめのグラスの上に注ぐと薄くに濁ります。また、お湯割りにすると特徴的な辛みが出てくるので、使い分けてみるのもいいでしょう。

今回紹介するのは、「松露 うすにごり」

〈銘柄データ〉

【松露 うすにごり(しょうろ うすにごり)】
松露酒造/宮崎県串間市寺里1丁目17-5
主原料/芋(黄金千貫)
麹菌/白麹(米/タイ)
度数/25度
蒸留/常圧蒸留

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