【イベントレポート】「酒屋が選ぶ焼酎大賞2022」に伺いました!
2022年7月4日、「酒屋が選ぶ焼酎大賞2022」がスクエア荏原(東京都品川区荏原4-5-28)にて開催されました。
このイベントは、厳しい状況が続く飲食業界・焼酎業界を少しでも支え、盛り上げていくために、酒屋が率先して連携のもとで取り組める機会を作りたい、という思いがきっかけです。
今回は、実行委員代表である「酒舗まさるや」の園部将代表のインタビューを通じて「酒屋が選ぶ焼酎大賞2022」をご紹介します。
目次
酒屋が選ぶ焼酎大賞について
SHOCHU PRESS編集部(以下、編集部) : まずは、このイベントの説明をお願い致します。
酒屋が選ぶ焼酎大賞 実行委員代表「酒舗まさるや」園部将代表(以下、園部代表):ちょっと前に、「本屋さんが選ぶ本屋大賞」っていうイベントがあったじゃないですか?そのイベントに着想を得ました。僕たち酒屋が、自分たちがオススメする焼酎を集めて、テイスティングして味の評価をするっていう。そこで選ばれた焼酎を今後、オススメにしていきたいな、っていうイベントです。
実行委員代表「酒舗まさるや」の園部将代表
編集部 : 酒屋さんご自身が、焼酎を評価するわけですね。
園部代表 : はい。「僕がオススメする焼酎を持ってくるので、他の人もオススメの焼酎を持ってきてください。その上で、皆さんと一緒に味の評価をしましょう」と。だから、僕たちも飲んだ事がない焼酎が出てくると思うんです。自分たちがオススメする焼酎って、それぞれ判断基準は独特なものなので、そういう他の人がオススメする焼酎を勉強する機会にしたいと思いました。
280銘柄の焼酎を集めて利き酒
園部代表 : 今日みたいに280銘柄の焼酎を集めて利き酒・テイスティングすることって、今まで全くありませんでした。日本酒だと、全国でやっていますが。焼酎の場合はありませんでした。
編集部 : イベントの構想はいつからあったのですか?
園部代表 : コロナの前からイベントを実現させたいな、っていう話しがありました。東北から九州までの酒屋さん6人で集まって。4年くらい前からです。ただ、新型コロナウイルスの感染が始まって。緊急事態宣言や、まん防があり、できなかったのですが、やっと今年開けてできるようになりました。僕たちも最初やるまでは、どうなるのかが、わかりませんでした。
園部代表 : 参加者は、20代から50代の方までいます。中でも、20代の若い方は、昔の焼酎ブームっていうのを全く知らない。全く知らない方が、「こういう銘柄もあるんだ、こういうこだわりもあるんだ」という、勉強も含めた発見できる場にして欲しい、と思っています。僕たち売り手も、勉強が必要だと思います。今回のイベントで、自分がお店に戻った時に、「こういう焼酎もありますよ」という、お客様への新しい提案のきっかけにしてもらいたいと思っています。若い方は、あの時のブームを知らないから、焼酎が売れた経験がありません。
編集部 : 焼酎を売るのに苦戦されている。
園部代表 : はい。「まだまだ知らない焼酎はあるんだよ」と。そのような気づきの機会にしてもらいたいとも思っています。
ずらりと並ぶ一升瓶。その数なんと280銘柄
編集部 : 華やかな時代を知らないというか。
園部代表 :そうですね。若い方は、焼酎が売れなくなった時代しか知らないですから。
編集部 : 苦労されてるわけですね。
園部代表 : そうですね。ですので、少しでも良いきっかけになれば、と思っています。取引のある蔵元の焼酎は飲んだことがあるけれども、それ以外は飲んだことが無いわけですね。僕たちでもそうですよ。僕たちも280銘柄あっても、全部取引しているわけではないのです。変な話、知らない銘柄もありましたし、知っているけど、飲んだことのない銘柄もありました。
編集部 : 園部代表でもそういうことがあるのですか。
園部代表 : 僕でも飲んだことのない銘柄はあります。その上、ブラインド・テイスティングでもあります。
テイスティングカップに注いで、味わいを確認
ブラインド・テイスティングにした理由
編集部 : ブラインド・テイスティングなのですか。
園部代表 : はい。だから、みんな一生懸命にコメントとっています。この後、ホームページ上にコメントを入れると、その答え合わせが出てきます。ただ、「美味しいな」、「不味いな」といった基準で飲むのではなく、「どういう香りがあるのか」、「どういう味わいがあるのか」、という評価が必要になります。「あ、これ自分で売っていた焼酎だけど、自分ではこう感じたんだ」と。なおかつ、「あの焼酎が美味しかったから、今度、鹿児島行ってみようかな」「今度、宮崎行ってみたいな、蔵元の人と話してみたいな」という、きっかけ作りにもなります。
一升瓶はシートに覆われて、銘柄名はわからない
編集部 : ブラインド・テイスティングだと、ご自身で売っていた焼酎はわからないわけですね。
園部代表 : そうなります。自分が、お店で実際にオススメしていた焼酎を飲んでみて、どう評価しているのか。そういった意味でも、皆さん一生懸命にコメントを書いています。
編集部 : 勉強の機会でもあるんですね。今日は大変な数の参加者が来場されていますが。
北海道から鹿児島まで138名が参加
園部代表 : 今回は、138の酒屋さんにご参加いただきました。ただ、正直、それが多いかどうかわかりません。これを1回と言わず、2回、3回と続けていって、できれば参加者の人数は200、300と増えれば。今回も、全国の北海道から鹿児島までご参加いただいています。わざわざ飛行機や新幹線で来ていただいて。なので、やっぱり少しでも1県からでも、たくさんの酒屋さんがご参加していただけたらと思います。参加している方にもプラスに感じていただけていると思っています。
芋、麦、米、黒糖、泡盛の5つの部門を設置
園部代表 : 一般的な利き酒・テイスティングは銘柄がわかるので、先入観が出ます。だから、原料だけの分類にしています。アルコール度数もブラインドにしています。今後の展開は2回、3回目と続きますので、どんどんテーマを変えていこうと思っています。次回は、度数を同じにしたり、古酒部門を作ったりとかを考えています。僕たちも、勉強して行かなければなりません。ただ、勉強のやり方はいっぱいあります。あとは、参加者からのフィードバックも聞きながら進めたいと思います。
焼酎に携わる人達にとってプラスになるイベント
編集部 : 今回は酒屋さんから酒屋さんのイベントですが、今後の展開はいかがですか?
参加者は、銘柄ごとにマークシートとコメントを記入
園部代表 : まずは、参加者が書いたマークシートやコメント用紙は、蔵元さんに提出します。参加者が書いたコメントを読んで、「うちの焼酎は、こう感じているんだ、先入観のないブラインドだったら、こう感じるんだ」ということが明らかになっていく。一方、質問の回答ですが、飲食店様や一般の方にもコメントを伝える。もともとそういう視点があったので、ブラインド・テイスティングにしたのです。銘柄を出した利き酒・テイスティングだと、「あっ、これウチで取り扱いがあるから、甘めにつけようかな」という忖度が出てきます。そうではなく、蔵元さんに対して、「こういうコメントがありました」、「売り手のプロである僕たちがこう感じました」というのを、正直に伝えることも大切なことだと思っています。厳しくも優しくもあるやり方ですが。
テイスティングが終了したら、各自マークシートとコメント用紙を提出
編集部 : 理想的な酒屋さんの立ち位置かと思います。
園部代表 : 蔵元さんにしては、耳の痛い話になってしまうかもしれませんが、でもそれは、僕たちも同じです。僕たちも、ちゃんと売り手として、「自分がオススメしていた焼酎の評価はこうだったんだ」と知る機会になるのです。少しでも僕たち焼酎に携わる人達にとって、プラスになるイベントにしたい。来年、再来年もまたこういった形で、バージョンアップしながらイベントを続けていきたいと思っています。
真剣にテイスティングを繰り返す
蔵元と一般のお客様をつなぐ架け橋
園部代表 : このコロナ禍の間は、アルコールに携わる人達は苦しい思いをしました。アルコールは悪だ、飲食店はダメだ、みたいな。それはそれで仕方のない部分はあると思いますが、僕たちはそれを生業としています。僕たちが弱音を吐いたら終わってしまいます。僕たちは、蔵元さんと一般のお客様をつなぐ架け橋だと思っています。そういう所は、大切にしていきたいと思っています。
運営事務局「KURAKARA」の橋本一正さん
園部代表 : 準備も大変でしたが、参加者の方が帰る前に「ありがとうございました」とお礼を言ってくれます。大変、ありがたく思っています。皆さんの中には開場時間の11時からきて、3時間も利き酒してくれているんですよ。顔を真っ赤にしてくれて。
編集部 : そうだったのですね。今日は、お忙しい中、ありがとうございました。
参加者のインタビュー
参加者の中から2名の方にインタビューをさせていただきました。
「させ酒店」 佐瀬伸之様
編集部 : 感想はいかがでしょうか。
「させ酒店」 佐瀬伸之さん(以下、佐瀬さん) : 実際、自分のテイスティングのタイミングと、店頭で並べているタイミングが違います。時間ロスがあるので、イメージ通りの味であればいいんですけど、違ってれば。ここで飲む焼酎と、お店で飲む焼酎が違うかなって。そこの理由として、やっぱり濾過を軽減している(自店で取り扱っている)焼酎が多いので。味をやっぱりダイナミックに見せるために、フーゼル油っていう油をあんまり取り除かない焼酎が多いと思うんで。そうするとやっぱり、酸化すると。味がちょっと、オフの方に進んでしまう可能性があります。普段どうしても味のあるタイプの焼酎を勧めがちなので、やっぱり無濾過タイプが多い。そうすると、コンディションがどうなのかなっと。やっぱり今回のテイスティングで強く感じます。
編集部 : なるほど。焼酎は、他の蒸留酒と違って、保管にも気を使うわけですね。フーゼル油の管理は蔵元を出ると、酒屋さんに委ねられるわけですね。
「させ酒店」 佐瀬伸之さん
佐瀬さん : はい。ただ、かえって今日テイスティングして、もともとのスタンダードの濾過したスッキリタイプの麦なり芋が、やっぱり美味しいなとは思いましたよね。インパクトよりも、そういうところも大事かなと。
編集部 : 勉強になりました。
編集部 : お店で取り扱っている焼酎はお分かりになりましたか?
佐瀬さん : 無理でしょうね(笑)。280銘柄を純粋に飲む機会はなかなかない。まだ、麦から芋をやっている途中なんですけど。蔵元さんや、全国の有名な酒屋さんが推薦なさっているから、最後まで頑張ります。
編集部 : ありがとうございました。
〈ショップデータ〉
【させ酒店】
住所/千葉県千葉市稲毛区穴川3-3-3
電話/043-251-3444
https://www.sasesaketen.com
「KAKINUMA」 代表取締役 柿沼良様
編集部 : ご自身で取り扱っている銘柄はわかるものですか?
「KAKINUMA」 代表取締役 柿沼良様(以下、柿沼さん) : 特徴はなかなか。焼酎は特に難しい。ただ、日本酒より焼酎は味の幅小さい。小さい中に集まっているので、そこらへんが難しい。樽に浸かっているやつとか特徴があってわかりやすいんたけど。
「KAKINUMA」 代表取締役 柿沼良さん
編集部 : お店で取り扱っている焼酎はお分かりになる自信は?
柿沼さん : 自信というか銘柄を当てるというよりは、美味しいかどうか。バランスがいいかとか。自分の好みとかっていう、ところかなとは思っています。
編集部 : ありがとうございました。
〈ショップデータ〉
【KAKINUMA】
住所/東京都足立区江北5-12-12
電話/03-3899-3520
http://www.kakinuma-tokyo.co.jp
ふりかえって
これまでになかった、日本全国の酒販店が集っての焼酎イベント。
大きな会場で、多数の参加者にもかかわらず、厳かな雰囲気が印象的でした。
皆様の真剣な眼差しからは、焼酎への深い思いが。
売り手のプロとして、お客様への新しい提案のきっかけを掴んだことでしょう。
園部代表からも「僕たちは蔵元さんと一般のお客様をつなぐ架け橋だと思っています」と、力強く語ってくださいました。
第一回目の開催ですが、これからの発展に期待が膨らみます。
審査結果は10月ごろ、表彰式の開催とあわせて発表予定。
今から待ち遠しいですね。
この記事を書いた人
SHOCHU PRESS編集部
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