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【麦焼酎】ちんぐ | 重家酒造(長崎県壱岐市)の画像

【麦焼酎】ちんぐ | 重家酒造(長崎県壱岐市)

重家酒造は、壱岐島で一番小さな蔵

重家(おもや)酒造は、麦焼酎発祥の地で知られる長崎県壱岐島の小さな酒蔵。
壱岐島にある酒蔵の中でも一番小さな規模ですが、銘柄の開発に定評があります。
社長自ら杜氏を務め、少人数の社員が手がけるお酒は、製法や蒸留法、原料の違いにこだわり、味わいや香りの個性が豊富。
新しい壱岐焼酎の魅力を発信していると、ファンの注目を集めています。

少人数で焼酎を製造しているため、大量生産に向いていません。
しかしながら蔵元は、伝統と革新をモットーに、五感を最大限に生かした焼酎造りにこだわり、高品質の焼酎造りを続けています。

重家酒造は壱岐島で一番小さな蔵の画像

重家酒造の焼酎を生み出す壱岐の自然

重家酒造がある壱岐島は、九州の玄界灘に浮かぶ長崎県の離島。
博多から高速船で約1時間、長崎空港から飛行機で30分の位置にあります。
四方は海に囲まれ海の幸が豊富なのはもちろん、農作物にも恵まれているのがこの島の特徴。
起伏が少ない広大な土地が広がっているため、昔から米も麦も豊富にとれる穀倉なのです。

年間を通じた穏やかな気候は、籬島とは思えないほどの田園風景を支えています。
春には桜が咲き誇り、秋には稲穂が黄金に色づき始める自然豊かな土地で、重家酒造の焼酎は造られています。

重家酒造の焼酎を生み出す壱岐の自然の画像

麹造りは自動製麴機と手造りを併用

重家酒造の麹造りは、自動製麴機と手造りを併用しています。
麹造りは、焼酎の酒質に大きく影響を与える大切な製造工程。
今の麹造りは、自動製麴機が主流です。安定した品質の麹造りには自動製麴機は欠かせません。
昭和38年に自動製麹機が開発・商品化されると、多くの蔵元ではそれまで主流だった「手造り」から移行しました。

重家酒造では自動製麴機に加えて、伝統的な「手造り」によって麹が造られています。
麹の「手造り」とは、人の手を介して麹が造られること。
麹室(こうじむろ)と呼ばれる専用の部屋で麹菌を米や麦などの原料に散布したのち、麹は人の手によって大切に育てられます。
革新と伝統を融合させた麹造りは、この蔵ならではの濃厚な味わいの理由でもあるのです。

麹造りは自動製麴機と手造りを併用の画像

重家酒造が全国に知られるようになったきっかけとは?

重家酒造の創業は1924年。重屋酒造で造られる焼酎は長い間、壱岐島内向けに出荷されており、壱岐島外に流通することはなかったといいます。
現在の当主である横山雄三氏は4代目。
横山雄三氏は、1997年に蔵に戻り家業を継ぎますが、当時の蔵元の経営は厳しく、酒屋の小売りで生計を立てる日々が3年ほど続いたそうです。

重家酒造が全国に知られるようになったきっかけは、蔵元のタンクに長年放っておかれていた古酒が見つかったこと。
麦の香りが凝縮されたコクのある古酒は、焼酎ブームの最中に、まさかの大ブレイクを果たします。
壱岐島外への流通が叶い、それまで、酒屋の小売りで生計を立てていた小さな蔵が、全国に知られるところとなります。

重屋酒造が全国に知られるようになったきっかけの画像

長所を伸ばし、短所を補った焼酎を開発

重家酒造では、常圧蒸溜・減圧蒸溜のどちらの蒸溜法も使用します。
常圧・減圧蒸留を併用できる蒸留機を使用し、ブレンドという技術を用いて、独自の酒質を研究。
蒸留法は、焼酎の個性を左右しますが、独自の視点で2種類の蒸留法の長所を伸ばし、短所を補った焼酎を開発しています。

減圧蒸留は、蒸留機を低圧にした環境で蒸留するため、クリアな味わいになるのが特徴。
焦げた香りなどの雑味がつきにくいといわれます。
常圧蒸留は常圧の下、蒸留するため原料由来の油分も留出。
雑味や油臭の原因になりますが、濃厚なコクの元ともなります。
麦100%焼酎で焼酎ブームを到来させた大分は、減圧蒸留が有名。
壱岐の焼酎は、原料である麦に麦本来のコクや旨味を求めるため、常圧蒸留が主流です。

重家酒造の革新と伝統の融合は蒸留法にも及び、味わいや香りの個性が豊富なラインナップのベースとなっています。

長所を伸ばし、短所を補った焼酎を開発の画像

重家酒造は、全量地元産を実現した壱岐島唯一の蔵

重家酒造では、原料である米も麦もすべて壱岐産を使っています。
壱岐では伝統的に、麹の原料はタイ米、主原料の麦はオーストラリア産を使用。
蔵元もかつては同じように、外国産の原料を使用していましたが、地元壱岐産に切り替えます。

壱岐は長崎県で2番目に広い深江田原平野があり、6〜10月は米、11〜5月は麦を二毛作で栽培できるほどの穀倉。
切り替えた当初、原価は3割増しに跳ね上がったといいます。
小規模であることも手伝って、麹原料の米、主原料の麦ともに全量地元産を使った、壱岐島唯一の蔵であり続けています。

重家酒造は、全量地元産を実現した壱岐島唯一の蔵の画像

重家酒造の銘柄

重家酒造は、小規模ながら銘柄の開発には定評があります。
その嚆矢は、重家酒造の名を全国的に広めたきっかけになった10年長期貯蔵古酒「確蔵(かくぞう)」です。
初代当主・横井確蔵氏の名前からとった銘柄は、先駆けて人気を博した「百年の孤独」に次ぐ麦焼酎の長期貯蔵酒として、耳目を集めたのでした。

「村主(すぐり)」は、白麹の原酒と黒麹の原酒を3年以上熟成させブレンドした麦焼酎。
「確蔵」で培った長期貯蔵の付加価値に加えて、2種類の麹をブレンド。
黒麹はコクのあるキレのよさ、白麹はマイルドな爽やかさが特徴ですが、それらを融合した革新的な銘柄といえるでしょう。

重家酒造では、2018年から日本酒造りを再開しました。
もともと壱岐島は、麦に加えて稲作も盛んだったので、日本酒も造られてきました。
蔵元でも創業から日本酒も造ってきましたが、1990年(平成2年)で日本酒造りを中止。
島内で28年ぶりに日本酒が造られ流ようになりました。
焼酎だけではない蔵元の開発力は今後も目が離せません。

重家酒造の銘柄の画像

今回、ご紹介する銘柄は「ちんぐ」

今回、ご紹介する銘柄は、「ちんぐ」です。
ネーミングの「ちんぐ」は、壱岐地方の言葉で長年連れ添った「親友」という意味。
朝鮮語の「チンク」(友だち)と同じ意味でもあるようです。
平成13年発売以来、今では、重家酒造を代表する銘柄となりました。

重家酒造は壱岐島内においても、人気の酒蔵です。
島内では飲みやすいタイプの麦焼酎が好まれて、アルコール度数は20度。
「ちんぐ」の開発に際し、4代目当主・横山雄三氏は、島内のような飲みやすいタイプではなくて、味わいがしっかりとした麦焼酎が受けると判断します。
アルコール度数は20度ではなく、25度に設定。
「ちんぐ」を島内だけではなくて、都会でも好評を得るような焼酎として発売したのです。

常圧蒸留と、減圧蒸留で蒸留したお酒をブレンドしているのも「ちんぐ」の大きな特徴。
伝統と革新の融合がモットーの重家酒造らしい銘柄といえるでしょう。
ブレンドの難しい点は、原酒を同じ比率でブレンドしても、微妙に味わいが違ってくることといいます。

今回、ご紹介する銘柄は「ちんぐ」の画像

●ちんぐをテイスティング

お米の蒸した香りが、おだやかに立ち上がってきます。
白い花のような甘い香り。甘みが強く感じられます。味わいも麦のコクと旨味をしっかり感じます。
麦の焦がしたような、またはローストしたトーストのようなイメージ。
白麹のやさしい甘みも感じらます。スッキリした仕上がりです。

飲み方は、ソーダ割りがオススメです。
蔵元では、【炭酸2 : ちんぐ1】の割合で炭酸割りにして「シュワっちんぐ」という呼称で紹介しています。ソーダのシュワシュワ感が、麦のコクと旨味を弾き出して爽快感がアップ。
また、レモンなどの果汁と合わせることで、クリアな酒質が際立つことでしょう。

チングをテイスティングの画像

〈銘柄データ〉
【ちんぐ】
重家酒造/長崎県壱岐市石田町池田西触545-1
主原料/麦(壱岐産ニシノホシ、はるか二条)
麹/米麹(白)
度数/25度
蒸留/常圧蒸留・減圧蒸留

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