スピリッツとリキュールの違い
夕方になると虫の声が鳴り響くようになりました。
早朝に窓を開ければ、涼しい朝の風が心地よく感じる季節です。
日中はまだまだ暑い日が続きますが、大地は秋に向かって準備を進めています。
先日街路樹の銀杏の木に、銀杏(ぎんなん)が実をつけているのを見つけました。
照時間で秋に向かう準備を進めるのでしょうか。
日照時間が短くなり、過酷な暑さの山を越したところで、夜は熟睡できるようになりましたね。
人間も自然に生かされているのだと実感します。
そしてここから一気に食欲の秋に突入です。
動物たちが冬に向けてせっせと食料を確保して肉をつけるように、私たちも体が要求するのでしょうか・・・
我々の食欲を刺激するように、秋に向かってアルコール達のラインナップも賑やかになってきました。
お酒の陳列棚には、ビール、発泡酒、リキュールやスピリッツ等がずらりと並んでいます。
その商品名の中で、わかっているようでわからないのが「スピリッツ」と「リキュール」です。
目次
リキュールとスピリッツの違い
缶で販売されている割りものを見ていて疑問に思うことがあります。
リキュールとスピリッツはどちらもアルコールの種類としては同等に分類されているのに、商品名になると「リキュール」、原材料には「スピリッツ」と表記されていたりします。
そうかと思えば、商品名にスピリッツの表記もあります。
おまけに「第3のビール」と言われているものがリキュールであったりします。
わかっているようでわからないこの2つのアルコールを検証してみましょう。
スピリッツとは
スピリッツと呼ばれるものは、その製造工程に特徴があります。
蒸留酒はスピリッツ
お酒を大まかに分類すると、「醸造酒・蒸留酒・混成酒」に分かれます。
その中で蒸留酒全般をスピリッツと言います。
広義ではウィスキーやブランデー、焼酎もスピリッツですが、通常スピリッツというと「4大スピリッツ」のことを指すことが多いです。
4大スピリッツとは
「ジン」「ウォツカ」「テキーラ」「ラム」のことです。
そのままストレートやロックでもいただきますが、カクテルのベースにも使われることも多いですね。
リキュールとは
リキュールとは、スピリッツ(蒸溜酒)に果実、花、薬草、香草などの香味を移したお酒。
それに砂糖や蜂蜜などの甘味料を加えたりしている場合もあります。
スピリッツに加える芳香性原料
ハーブ・スパイス
リキュールにとって重要な原料です。
フルーツ系のリキュールにも微量添加されていることが多く、茶の葉、スミレ,桜などの花や葉の風味を移しとったものもこの仲間です。
お酒の名称としては、シャルトリューズ、ベネディクティン、カシスなどがあります。
フルーツ
最近ではさまざまなフルーツがリキュールに使われていて、同じフルーツでも生産国によって酒名が異なることがあるます。
お酒の名称としては、キュラソーやカシス、梅酒など。
ビーンズ・ナッツ・カーネル
果実の種子、核、コーヒー豆、カカオ豆、バニラなど。
その他
アドボカートと言われる、ブランデーやスピリッツに卵黄、蜂蜜を加えたものや、クリームリキュールなど。
リキュールは国によって定義、分類が変わり、その数は膨大になります。
商品名における表記の違い
ここで悩ましいのが、下の写真の商品名にあるような
スピリッツ(発泡性)①
リキュール(発泡性)①
の違いです。
焼酎で作ったハイボールなので、原材料はもちろん焼酎と表記されています。
商品名にスピリッツはわかりますが、以下のウィスキーやジンなどの割りものはスピリッツではなく、リキュールと表記されているのはどうしてでしょうか。
蒸留酒に風味を足したという点では、いいちこは焼酎にレモンスピリッツを加えていますが、こちらはスピリッツです。
こちらの角ハイボールは、ウィスキーにレモンスピリッツを加えているのに商品名はリキュール(発泡性①)です。
いいちこや焼酎ハイボールの流れで行くと、スピリッツになりそうですが・・・・
単純に考えると、焼酎やウィスキー、ジンやウオッカなどのスピリッツの割りものを飲んでいるはずなのに、品名はスピリッツであったり、リキュールであったりするのです。
私の中での缶の割り物のリキュールは、このような果実で割ったお酒でした。
酒税法が影響する表示
これらの矛盾や疑問を調べているうちに、日本での酒税法が大きな影響力を持っていることに気がつきました。
日本の酒税法上でのスピリッツ
蒸留酒=スピリッツで言えば、ウイスキー、ブランデー、そして焼酎も「スピリッツ」。
ただし、日本の酒税法では、「ウイスキー」「ブランデー」「連続式蒸留焼酎」「単式蒸留焼酎」はそれぞれ独立した品目として分類されています。」
酒税法の第一章第三条第二十号によると、税法上のスピリッツの定義は
「第七号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が二度未満のものをいう。」
と記載されています。
この第七号から第十九号は、
七 清酒
八 合成清酒
九 連続式蒸溜焼酎
十 単式蒸溜焼酎
十一 みりん
十二 ビール
十三 果実酒
十四 甘味果実酒
十五 ウイスキー
十六 ブランデー
十七 原料用アルコール
十八 発泡酒
十九 その他の醸造酒
よって、酒税法上の分類では、蒸留酒であっても焼酎とウィスキー、ブランデーは「スピリッツ」に含まれません。
実際に販売されている缶の割りものを見ると、スピリッツと焼酎、ウィスキーの表記は明確に分かれています。
日本の酒税法上でのリキュール
酒税法上では、「リキュールとは、酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類で、エキス分が2%以上のもの。ただし、清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、および発泡酒に該当するものは除かれる」となっています。
蒸留酒でありながらエキス分で別れる
「エキス分が2%未満のものがスピリッツで、2%以上のものがリキュール。」
焼酎、ウィスキーブランデー等を除いた、日本の税法上での蒸留酒が原料であることが前提となっています。
エキス分とは
液体中の固形物の含有量を示す値。
基本的には甘味料(主に砂糖)の割合を表します。
ざっくりと素人考えで言うと
スピリッツ (発泡性) ①は辛口。
リキュール (発泡性) ①は甘口。
みたいなイメージですか・・・
ここで再び疑問が湧いてきました。
「第3のビール」と言われる発泡酒のようで発泡酒でないもの。
第3のビールもリキュール (発泡性) ②です。
甘いような気がしませんが、原材料名を見ると
発泡酒(麦芽、ホップ、糖類)
スピリッツ(小麦)
と表記されています。
発泡酒が原材料になっていますので、疑問点がやや残ります。
甘いか?の疑問も若干ありますが、糖類が入っていますね。
でも、よく見てみると・・・表記が違います。
リキュール(発砲性)②になっています。
この①と②の違いは「酒類の品目等の表示義務」の改正によって、新ジャンルの品目(税率適用区分)を示す表示方法が変更され、①が②になっただけのようです。
2020年10月以降、順次①から②の表記に変更になり、現在継続して発売されている缶チューハイなどは現行のままのようです。
税法を隅から隅まで調べたわけではないので、若干の疑問は残りますが、適宜基準も改正されているのでしょう。
まとめ
ぼんやりと知ったつもりでいながら、疑問に思っていた内容が酒税法という括りの中で右往左往していたのだということがわかり、いくらかスッキリしました。
それも物販する上で、どこか線を引かざるを得ない事であろうと納得できますし、また製造販売するメーカー側の果てしない努力も感じます。
いずれにしても私たち消費者は、良いものを美味しく、できれば安くいただけるに越したことはありません。
食欲の秋を先取りして、いや探究心のあまりに、今回は少しお酒をいただき過ぎました・・・
この記事を書いた人
森 由佳
食事とお酒を美味しく食べて飲めることを、人生の後半戦の目標に掲げています。家には常に焼酎のボトルが鎮座しているという環境で育ち、焼酎愛飲歴たっぷりのライターです。ざっくりとした視点で焼酎を語ります。
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