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食中酒とはつまり?

2021-11-24

以前、焼酎は食中酒という話をしました。

食中という言葉があれば、食前、食後もあります。
食べている最中が食中で、食べる前が食前、食べた後が食後、という意味です。

でもこれ、他にも聞いたことのある、聞き覚えがある言葉だと思いませんか?

そうです。
薬の服用の際に、使用される言葉でもあります。
酒という字はなくなりますが。

薬の服用のタイミングを説明する言葉。
この薬は、食前の空腹時に飮んでください、または、食中は料理を食べながら飲んでください、という意味。
また、食後と食前の間の、食間という言葉も追加されます。

これは、昨今のように、食中”酒”という言葉が頻繁に使用される前からあります。
ただ、以前から今に至っても、食中、食間という言葉の意味を理解できない人が多いそうです。

実際、製薬会社のWEBサイトに、今でもその違いを図示して説明しているほど。

日本では食中(またはそれに関わる食前や食後)という言葉は馴染みがなかった、食中という概念がなかった、という説があります。

なので、今回は、食中について少し深掘りしてみようと思います。

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食事は行儀よく、黙って早く済ます

ところで、ヨーロッパに旅行に行って驚くのは、「食事」にかける時間。
フランス、イタリアのレストランでは、2〜3時間くらいかかりますよね。
料理もなかなかでてこない。
丁寧に作っているのだから仕方ないかな?と思いつつも、隣のテーブルをキョロキョロすると、地元のお客さんは、全く意に介していない。
おしゃべりしながら、ワイワイと楽しんでいます。

こっちは「食事」に来たのだから、さっと済ませてしまいたいと思っているわけです。

日本では、小さい頃から「食事は行儀よく、黙って早く済ます」と躾されることが多いです。
おしゃべりしながら、食事するのは品の良いことではない、と言われていたほど。

体力が大切な業種では、今でも「早メシ、早〇〇」という標語(?)もあるくらい。
「焼酎レシピ」で執筆中のロサリオから聞いたのですが、レストランなどのフード業界でも、「賄い(食事)は早く済ます」、というのは慣例だったようです。

だから、フランス、イタリアのレストランの食事時間は、長いなーと感じてしまいます。

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日本はもともとファスト・フード文化?

ファスト・フードというのは、海外から輸入した言葉です。
注文から提供がファスト(早く)で、食事もファスト(早く)で済ませる。
チェーン理論を根拠とした、飲食業態です、

ただ、日本の飲食業態は、輸入される前からファストフードでした。
蕎麦、寿司が、その代表格です。

要は、日本においては、「食事」の時間は、短いのが当たり前。
食中といわれても、そんな悠長な時間など感じられない、のかもしれないです。

なので、ここまでは「日本では食中(またはそれに関わる食前や食後)という言葉は、馴染みがなかった」という説は、納得な感じがあります。

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「食事」と「飲み」の意識の違い

「食事」の時間が短いといっても、蕎麦や寿司以外の飲食業態もあったハズ。

会席料理など。

ハッ、と思い当たる方もいたはず。
会席料理では、フランス、イタリアのレストラン同様、先付や向こうづけ、八寸、煮物、蒸し物などに仕立てられて時間をかけて、順繰りに運ばれてくるではないですか!

では、どうして、ヨーロッパに旅行に行って、食事にかける時間は長いと思ってしまうのでしょうか。

それらの違いはなんなのでしょうか。

それは日本においては、「食事」と「飲み」に意識の違いがあるから、だと思います。

献立という言葉の意味するところ

会席料理店では、先付や向こうづけ、八寸、煮物、蒸し物などに仕立てられて順繰りに運ばれてきます。
少しずつ盛り付けられて。

それを、”献立”といいます。
献立という言葉の意味するところは、料理は酒を”一献”傾けるためのものなんです。

その献立は、日本酒の味を殺さないよう、あっさりして量の少ない料理がメイン。
具体的には、日本酒は糖分を多く含んでいるので、甘みのあるものより、塩辛や刺身など、塩味や辛みが利いたものです。

つまり、会席料理店においては、お酒、つまり「飲み」ありきなんです。

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日本と欧米の「飲み」意識の違い

一方、欧米では、お酒を飲んで酔うことは、良しとされていない場合が多い。
ワインはワインと言って、アルコールとは言わない。
アルコールという意味は、強酔というイメージが強いのです。

だからしっかりと「食事」をして、ワインをペアリングするのです。
「飲み」ありきの飲食業態など、バーがせいせい。

つまりは、日本と欧米では、「飲み」に意識の違いがあるようです。
それは、「飲み」に伴って、「酔う」ことは禁物とされている、キリスト教文化によるところかもしれません。
反対に日本は、酒をいつまでも飲み続け、またお互いに酒を酌み交わし「酔う」コミュニケーションを取ることを目的とする飲み方が多いです。
時には、人前で「酔う」ことは失礼ではない、とされることも。
「酒の席だから」「無礼講」という言葉が代表するように。

少し脱線します。

アメリカ合衆国にATFという取締機関があります。
「Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives」の略。
その訳は、「アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局」です。

つまり、アメリカ合衆国においてアルコールは、銃・爆発物と同じ取締機関で扱われているんです!

お酒強いですか?

よく、お酒強いですか?と、聞くこと、聞かれることが多いと思います。
これは、日本人以外はあまり使わないようです。
つまり、この意味は「あなたは、飲みニケーションする派ですか?」と相手に問いている質問だと思うのです。

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家庭においても

少し、飲食業態=外食の話に偏ってしまいましたが、家庭においても同様かと思います。
それが、晩酌。今でいう、家飲みです。
晩酌というのは、「肴」を食べながら、お酒を飲むコト。
決して、「食事」をしながら、お酒を飲むとは言わない。

余談ですが。
明太子は、お酒を飲んでいる間は「肴」ですが、ご飯にのせて食べると「食事」の一員になります!

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食中酒とは、酔っ払って飲んでいる間のお酒

日本には食中酒という言葉が生まれにくい、食習慣があったのでした。

日本では、「飲み」ながら食べるお酒はあっても、「食事」しながら飲むお酒はなかった、のではないでしょうか。

正確にいうと、お酒はいつでも、いつの時代にも豊富ですから、つまりは、概念がなかった。

しいて、食中酒というのを概念化すれば、”酔っ払って飲んでいる間の酒”という意味なのかもしれません。

つまり、日本ではどのようなお酒も、食中酒にしてしまう許容があったのです!と言ったらカッコ良過ぎでしょうか。

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