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焼酎用語集

焼酎の香り成分フーゼル油って?

焼酎の香り成分フーゼル油をご存知ですか?
今回は、フーゼル油と焼酎の濾過について解説するとともに、オススメの無濾過焼酎銘柄もご紹介します。

蒸留したての焼酎の成分

焼酎は、原料を糖化・発酵させてできた醪(もろみ)を蒸留して造る蒸留酒です。
蒸留とは、液体に含まれる成分の沸点の違いを利用して、沸点の低い物質を選択的に抽出する方法。
アルコールの沸点は水より低いため、その差を利用して、アルコールを優先的に抽出し、度数の高い蒸留酒を造るのです。

蒸留したての焼酎の成分は、99%がアルコールと水です。
では、残りの1%は何かというと、これが焼酎の原料や製法の違いによって異なる個性を生む、香味成分。
その主成分が、「フーゼル油(フーゼルゆ)」といわれる一群の成分です。

フーゼル油とは、蒸留によって水やアルコールと共に抽出される混合物で、蒸留後は水と分離して焼酎を濁らせたり表面に浮いてきたりする性質をもつ成分です。
「蒸留酒を作る際や発酵法により作られたエタノールを分留して精製する際に高沸点の揮発性成分として得られる留分のことである。したがって、フーゼル油は混合物であり、そのどれもがエタノールよりも沸点が高い。なお、フーゼル油は水に溶けにくく比重が水よりも軽いため、蒸留酒を作った際に油滴として分離し酒を濁らせたり表面に浮いてくることもある」
-引用 : 「フーゼル油」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』

フーゼル油は、焼酎の仕込み段階、醪の中で酵母によって生産されます。
代表的な成分は、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、nプロピルアルコール。
これらの成分は、
・イソアミルアルコールは薬品的な香りとわずかな苦み
・イソブチルアルコールは刺激的な香りと苦み
・nプロピルアルコールは刺激的で青臭い香りと辛み
というように、それぞれ単体でも特徴的な香りを呈します。

そして、これらの成分がどのような割り合いで組み合わさるかによって、焼酎の個性が決まります。
つまり、焼酎の香味が異なるのは、原料の種類によってフーゼル油の組成が異なるためなのです。

ちなみに、かつてフーゼル油が二日酔いの原因という説がありましたが、二日酔いや頭痛の原因はエタノールの代謝によってできるアセトアルデヒドであることが科学的に解明されています。

焼酎の香りとは? 「焼酎の華」ともよばれるフーゼル油をご紹介します

なぜ濾過するのか

フーゼル油が二日酔いの原因でないことはすでに述べたとおり。
ただ、通常はこのフーゼル油、焼酎を造る工程で濾過によって一定程度取り除かれているのです。
焼酎の豊かな香味の原因であるフーゼル油を、なぜ取り除く必要があるのでしょうか。

主な理由は、フーゼル油が酸化すると異臭の原因になるから。
焼酎の心地よい香味をかもしていたフーゼル油は、空気に触れると化学変化を起こして不快な油臭に変わってしまいます。

フーゼル油は、アルコール度数が55度以上あれば液体中に溶け込みますが、度数が55度未満の液体では分離して表面に浮かび上がり、空気に触れてしまいます。
蒸留後の焼酎のアルコール度数は、約40~43度。焼酎は通常、蒸留後タンクなどに貯蔵してねかせますが、その間にフーゼル油が表面に浮かんできてしまいます。

焼酎の表面に浮かんだフーゼル油をそのままにしていると、空気に触れて酸化し、油臭が発生。
そのため、濾過することでフーゼル油を取り除き、長期貯蔵や流通の過程で酒質が劣化するのを防ぐというわけです。

「無濾過」焼酎とは?

酸化すると不快な油臭になってしまうフーゼル油ですが、もともとは焼酎に豊かな香りやコクを生む成分。
濾過によって取り除いてしまっては、焼酎ならではの香りや独特のコクが失われてしまいます。

焼酎ファンの中には、昔ながらの味わいやパンチのある焼酎を求める声も根強い。
そのため、あえてフーゼル油を残すことで強い個性を表現した無濾過焼酎も登場しています。

「無濾過」といっても、文字通りまったく濾過していないという意味ではありません。
「無濾過焼酎」に厳密な定義はなく、「無濾過」と銘打った商品でも、実際にはごみや不純物をフィルターで取り除くための「荒濾過(あらろか)」という工程を経ていることが多いです。

オススメの無濾過焼酎

そんな玄人向けの無濾過焼酎のうち、オススメの3銘柄を紹介します。

八幡ろかせず

鹿児島県南九州市にある高良酒造の「八幡(はちまん)ろかせず」は、濃厚な芋の香りと甘味、香ばしさが特徴の無濾過焼酎。
アルコール度数は35度と高めです。ロックやストレートはもちろん、お湯割りで体に染み入るような旨さを堪能するのもおすすめです。

野海棠MUROKA

鹿児島県薩摩川内市にある祁答院蒸溜所の「野海棠(のかいどう)MUROKA」は、麦と芋の2種類があります。
「野海棠MUROKA《麦》」は、木桶仕込みと木樽蒸留で麦の豊かな香りを引き出した、丸みのあるおだやかな味わいの焼酎。
《芋》も同様に、木桶仕込み、木樽蒸留で造られています。優しくなめらかな口当たりのよさと、心地よい芋の旨みが特徴です。
ちなみに「野海棠」は、2021年の鹿児島県本格焼酎鑑評会で、麦・芋の両方で出品酒中最高点の快挙を成し遂げた銘柄です。

マルニシ ぷんぷん ベニハルカ

鹿児島県志布志市にある丸西酒造の「マルニシ ぷんぷん ベニハルカ」は、「完熟紅はるか」を原料とする芋焼酎「マルニシ ベニハルカ」の無濾過バージョン。
濃厚な味わいと、後味に広がる熟成芋の甘さが特徴。
遊び心のあるネーミングやレトロでかわいらしいラベルとはうらはらに、「芋らしさ」を味わえる骨太な一本です。

まとめ

フーゼル油の除去を最小限に抑えた無濾過焼酎は、希少で流通網も限られています。
見つけたらぜひ飲んでみてくださいね。


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